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マディー・ガリヴァの憂鬱⑬
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「そうか、君が」
マディーは戸惑っていた。
なぜか、2つ上のハースという先輩に握手をされている。しかもガッチリ。
「ええ、そうなんです」
マットが笑ってしっかりと頷く。
ハースの隣にいるアリスとマディーは目が合った。アリスは困惑している様子だ。
勿論、マディーも困惑している。
マディーは、その気持ちはよくわかります、と言いたくなったが、すぐにアリスから目を逸らした。
ハースから目をつけられると、学園生活に支障が出るに違いない。
「俺は応援しているから」
大きく頷かれても、マディーには何のことかさっぱりわからない。
「ありがとうございます」
そしてなぜ、それにマットが返事をするのかもさっぱりわからない。
マディーは首を傾げるのが精いっぱいだった。
「ねえ、ハース。何の話をしているの?」
アリスの疑問は、当然の疑問だった。
マディーは心の中で、アリス先輩ありがとうございます! と告げた。勿論怖くて口にはできない。
「やだな、アリス。これは男同士の秘密の話だよ」
ふふ、とハースは笑ったし、マットは大きく頷いたが、マディーには一向に理解できそうになかった。
「だって、こっちの方、戸惑ってるわ」
アリスの視線に、ハースの手の力が更に込められる。
マディーは痛いと思ったが、ハースの笑顔の笑っていない目に、苦情を言えそうな気はしなかった。
ギリギリと手がへし折られるかと思うくらいに力が入っている。
「いえ、戸惑ってませんよ」
ニコリと笑って見せるのが、マディーの精一杯だった。
「そう? ……それならいいんだけど」
アリスの言葉の後、ハースの手の力が緩んでマディーはホッとする。
どうやら正答を選んだらしい。
まさか会話一つで命がけとは、マディーはハースの注意事項と噂が嘘ではなかったんだと納得した。
「本当に、応援しているから」
しっかりとマディーの目を見てくるハースに、マディーは内心を隠したまま頷いた。
理解はできていない。
「有難うございます!」
そして、満面の笑みなのはマット。やっぱりマディーにはさっぱりわからない。
ハースとアリスが去って行くのを見送って、ようやくマディーはホッと息をついた。
「よかったね!」
なぜかマットが満面の笑みでマディーを見る。
「えーっと、全然意味が分からないんだけど」
マディーは首を横にふった。
マットがショックを受けたように目を見開く。
「どうして、あのハース先輩の言葉が理解できないの!?」
「……悪い、あの場では言えそうにもなかったんだけど、マットが理解してるなら教えてくれ」
はぁ、とマットがため息をついた。
「レイーアさんと僕との交際を応援してるってことだよ!」
「……いや、それなら、俺に握手求めて来るっておかしくないか?」
もう一度マットがため息をついた。
「いつもレイーアさんと僕の関係をよりよいものにするために尽力しているなんてすばらしい、ってことだよ!」
そんな事実など、一切ない。
「いや、してない」
マディーはむしろ、マットの気持ちがどこかで立ち消えないかな、と思っているくらいだった。
だが、マットはニッコリ笑う。
「マットもレイーアさんと一緒で照れ屋だね! ハース先輩もよく理解してるよね!」
こいつら、やべぇ。
マットはハースに握られていた手をさすりながら、遠くを見た。
マディーは戸惑っていた。
なぜか、2つ上のハースという先輩に握手をされている。しかもガッチリ。
「ええ、そうなんです」
マットが笑ってしっかりと頷く。
ハースの隣にいるアリスとマディーは目が合った。アリスは困惑している様子だ。
勿論、マディーも困惑している。
マディーは、その気持ちはよくわかります、と言いたくなったが、すぐにアリスから目を逸らした。
ハースから目をつけられると、学園生活に支障が出るに違いない。
「俺は応援しているから」
大きく頷かれても、マディーには何のことかさっぱりわからない。
「ありがとうございます」
そしてなぜ、それにマットが返事をするのかもさっぱりわからない。
マディーは首を傾げるのが精いっぱいだった。
「ねえ、ハース。何の話をしているの?」
アリスの疑問は、当然の疑問だった。
マディーは心の中で、アリス先輩ありがとうございます! と告げた。勿論怖くて口にはできない。
「やだな、アリス。これは男同士の秘密の話だよ」
ふふ、とハースは笑ったし、マットは大きく頷いたが、マディーには一向に理解できそうになかった。
「だって、こっちの方、戸惑ってるわ」
アリスの視線に、ハースの手の力が更に込められる。
マディーは痛いと思ったが、ハースの笑顔の笑っていない目に、苦情を言えそうな気はしなかった。
ギリギリと手がへし折られるかと思うくらいに力が入っている。
「いえ、戸惑ってませんよ」
ニコリと笑って見せるのが、マディーの精一杯だった。
「そう? ……それならいいんだけど」
アリスの言葉の後、ハースの手の力が緩んでマディーはホッとする。
どうやら正答を選んだらしい。
まさか会話一つで命がけとは、マディーはハースの注意事項と噂が嘘ではなかったんだと納得した。
「本当に、応援しているから」
しっかりとマディーの目を見てくるハースに、マディーは内心を隠したまま頷いた。
理解はできていない。
「有難うございます!」
そして、満面の笑みなのはマット。やっぱりマディーにはさっぱりわからない。
ハースとアリスが去って行くのを見送って、ようやくマディーはホッと息をついた。
「よかったね!」
なぜかマットが満面の笑みでマディーを見る。
「えーっと、全然意味が分からないんだけど」
マディーは首を横にふった。
マットがショックを受けたように目を見開く。
「どうして、あのハース先輩の言葉が理解できないの!?」
「……悪い、あの場では言えそうにもなかったんだけど、マットが理解してるなら教えてくれ」
はぁ、とマットがため息をついた。
「レイーアさんと僕との交際を応援してるってことだよ!」
「……いや、それなら、俺に握手求めて来るっておかしくないか?」
もう一度マットがため息をついた。
「いつもレイーアさんと僕の関係をよりよいものにするために尽力しているなんてすばらしい、ってことだよ!」
そんな事実など、一切ない。
「いや、してない」
マディーはむしろ、マットの気持ちがどこかで立ち消えないかな、と思っているくらいだった。
だが、マットはニッコリ笑う。
「マットもレイーアさんと一緒で照れ屋だね! ハース先輩もよく理解してるよね!」
こいつら、やべぇ。
マットはハースに握られていた手をさすりながら、遠くを見た。
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