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マディー・ガリヴァの憂鬱⑪
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マディーたちも高等部になった。
マットは一人表情を変えながら過ごしている。きっと脳内でレイーアと会話しているに違いない。
今日は、どこかへ行ったマットが、ものすごく嬉しそうな顔で教室に戻ってきた。
レイーアが学園に来る予定もなかったはずで、なぜ満面の笑みなのか、マディーは理由がわからず困惑した。
いや、もしかしたら、我にかえって、新しいターゲットを見つけたのかもしれない。
と、マディーは思いたかった。
「機嫌が、いいな」
それとなくマディーは尋ねた。
「そうだね! 今日はいい話を聞いたんだ!」
マディーがマットに今日話しかけたのは、初めてだった。マディーの口からはなにも話していないため、レイーアとは無関係のはずで、マディーはようやくマットが、いやレイーアが呪縛から離れられたのだとホッと心のなかで息をついた。
「へー。どんな話?」
「大好きな人を一生愛し抜く方法だよ!」
マディーはギクリとした。
「一体誰とそんな話を?」
予想が外れたことに、マディーはうろたえていた。
「ハース先輩って知ってる? アリス先輩を一途に思い続けている先輩なんだけど!」
あー!
と、マディーが叫ばなかったのは、奇跡かも知れなかった。
ハース先輩。1年生の間でも有名人だ。婚約者のアリス先輩をひたすら記録し続ける変人。
マディーは今まで、どっちが変なんだろうと思っていた。
でも、マットとハースの組み合わせなど、考えたこともなかった。変人から変人へのアドバイス。まともなわけがないとマディーは瞬時にさとる。
「そ、そっか。よかったな!」
じゃあ、と離れようとしたマディーを、マットがつかむ。
「ものすごく有意義なアドバイスだったんだよ! マディーにも教えてあげるよ!」
「えーっと、そういえば、マットは進路志望どうしたんだ? やっぱり城の事務官か?」
マディーは話をそらした。マットは次男だから城へ勤めるのが一般的だ。成績優秀なため、事務官への道も容易に選べるはずだった。
「いや。僕は騎士団に入ろうと思って」
予想外の返事だった。
「何で?」
レイーアの近くにいるなら、事務官の方がやり易いとマディーは思ったが、違うのだろうか。
「レイーアさんを守れる男になりたいから」
真面目な顔のマットに、マディーはマットの本気を見たような気がした。
「それで、守れる男になったら、レイーアさんと即結婚するんだ!」
結局そこか。
マディーは一気に脱力した。
「で、ハース先輩のアドバイスなんだけど!」
聞きたくない。そんな言葉を、マットが許してくれるわけもなかった。
マットの説明を右から左に流しても、言っていることがおかしいのだけはわかる。
「でね、たった一人の人を大切にするには、身辺もきちんと威嚇しとかなきゃダメだって。やっぱり、僕の行動って間違ってなかったんだね!」
こいつら、やべぇ。
マディーは、机に突っ伏した。
マットは一人表情を変えながら過ごしている。きっと脳内でレイーアと会話しているに違いない。
今日は、どこかへ行ったマットが、ものすごく嬉しそうな顔で教室に戻ってきた。
レイーアが学園に来る予定もなかったはずで、なぜ満面の笑みなのか、マディーは理由がわからず困惑した。
いや、もしかしたら、我にかえって、新しいターゲットを見つけたのかもしれない。
と、マディーは思いたかった。
「機嫌が、いいな」
それとなくマディーは尋ねた。
「そうだね! 今日はいい話を聞いたんだ!」
マディーがマットに今日話しかけたのは、初めてだった。マディーの口からはなにも話していないため、レイーアとは無関係のはずで、マディーはようやくマットが、いやレイーアが呪縛から離れられたのだとホッと心のなかで息をついた。
「へー。どんな話?」
「大好きな人を一生愛し抜く方法だよ!」
マディーはギクリとした。
「一体誰とそんな話を?」
予想が外れたことに、マディーはうろたえていた。
「ハース先輩って知ってる? アリス先輩を一途に思い続けている先輩なんだけど!」
あー!
と、マディーが叫ばなかったのは、奇跡かも知れなかった。
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マディーは今まで、どっちが変なんだろうと思っていた。
でも、マットとハースの組み合わせなど、考えたこともなかった。変人から変人へのアドバイス。まともなわけがないとマディーは瞬時にさとる。
「そ、そっか。よかったな!」
じゃあ、と離れようとしたマディーを、マットがつかむ。
「ものすごく有意義なアドバイスだったんだよ! マディーにも教えてあげるよ!」
「えーっと、そういえば、マットは進路志望どうしたんだ? やっぱり城の事務官か?」
マディーは話をそらした。マットは次男だから城へ勤めるのが一般的だ。成績優秀なため、事務官への道も容易に選べるはずだった。
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「で、ハース先輩のアドバイスなんだけど!」
聞きたくない。そんな言葉を、マットが許してくれるわけもなかった。
マットの説明を右から左に流しても、言っていることがおかしいのだけはわかる。
「でね、たった一人の人を大切にするには、身辺もきちんと威嚇しとかなきゃダメだって。やっぱり、僕の行動って間違ってなかったんだね!」
こいつら、やべぇ。
マディーは、机に突っ伏した。
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