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マディー・ガリヴァの憂鬱⑩

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「姉上。付き合っている相手などいないのか?」
 本来マディーはレイーアにこんな話題などふったりはしない。
 レイーアが卒業して半年たつが、まだマットの発言に変化もないため、マディーはレイーアの他の誰かとの結婚を後押しすることにした。

 だが、当のレイーアは困ったように首をかしげる。
「誰もいないわ」
 マディーの贔屓目がなくても、貧乏貴族ということ以外、レイーアを選択肢に入れない理由はない。もちろんそれが最大の難関ではあるが、それでもいいといってくれる人が、マット以外にもいていいとマディーは思うわけだ。

「誘われたりとか……ないのか?」
「んー。あるんだけど、いつの間にかなかったことになってるみたいで。逆に避けられるようになるのよね。学園時代も何度かあったんだけど……」
 マディーはギクリとする。
 誘われた事実がなかったことになり、更に避けられる。
 その理由に一つ思い当たったからだ。

「……その人たち、誰かに脅されてるとか、言ってなかった?」
 マディーの言葉に、レイーアが苦笑する。
「そんなことして、誰の利益になるって言うの?」
 約1名の利益になるんだ!
 とはマディーは口にしたくなかった。できる限り接触はさせない方がいいだろう。
 本人には会っていないのに、周りに影響を与える存在。

 しかも今は学園ではなく王城に勤めている姉の周囲に、どうやって関わっているのか、そしてどんな風に情報を集めているのか。
 マディーにはさっぱり理解できなかった。

 あいつ、やべぇ。
 マディーは遠くにいるマットを思い浮かべて、ため息をついた。
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