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マディー・ガリヴァの憂鬱⑨

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「……姉上のところにいくが、行くか?」
 レイーアの卒業式の日、マディーはとうとう、マットに仏心を出してしまった。
 だが、この妄想の世界に生きるマットに現実に立ち直ってもらうには、この方法しかないだろうと、マディーは思ったのだ。

 レイーアと関わる機会が更に減ったら、マットは更に奥深い妄想の世界に突き進みそうな気がしたからだ。
 そろそろ、マディーも解放されたかったのもあるし、そんな深い妄想の世界には付き合う気もなかったからだ。

 マットがぽかん、と涙に濡れた顔で口を開いた。
 まさかマディーからそんなことを言われるとは思わなかったのかもしれない。
 照れ臭そうにマットが微笑んだ。
「いや、いいよ」
 だが、その口から出てきた言葉は、マディーの予想外の返事だった。
「えーっと、何でだ?」

「だって、家族水入らずのところに、僕が邪魔しちゃ悪いから!」
 まともな内容に、マディーはおののいた。
「……マットは姉上の……?」
 マディーは恐る恐る尋ねた。
 マットがにこりと笑う。
「唯一無二の夫だよ!」

 いや、やっぱりマットの頭はおかしかった。
「いや、マット。現実を見に行こう!」
「大丈夫! 僕たちはいつでも会えるから! 実家の家族と水入らずで過ごすのも、あんまりないだろうし!」

 いつでも。
 マディーは意味がわからなかった。
「いつでもって……どうやって?」
 マットがにこりと笑う。
「僕が願えば、レイーアさんは僕の頭の中でいつでも会話してくれるから!」
 こいつ、やべぇ。

 もうマットの執着が解けることはないのだと、マディーはようやく理解した。
 早くレイーアにほかの誰かと結婚してほしいと願うマディーは、きっと正常だと思う。
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