12 / 62
マディー・ガリヴァの憂鬱⑨
しおりを挟む
「……姉上のところにいくが、行くか?」
レイーアの卒業式の日、マディーはとうとう、マットに仏心を出してしまった。
だが、この妄想の世界に生きるマットに現実に立ち直ってもらうには、この方法しかないだろうと、マディーは思ったのだ。
レイーアと関わる機会が更に減ったら、マットは更に奥深い妄想の世界に突き進みそうな気がしたからだ。
そろそろ、マディーも解放されたかったのもあるし、そんな深い妄想の世界には付き合う気もなかったからだ。
マットがぽかん、と涙に濡れた顔で口を開いた。
まさかマディーからそんなことを言われるとは思わなかったのかもしれない。
照れ臭そうにマットが微笑んだ。
「いや、いいよ」
だが、その口から出てきた言葉は、マディーの予想外の返事だった。
「えーっと、何でだ?」
「だって、家族水入らずのところに、僕が邪魔しちゃ悪いから!」
まともな内容に、マディーはおののいた。
「……マットは姉上の……?」
マディーは恐る恐る尋ねた。
マットがにこりと笑う。
「唯一無二の夫だよ!」
いや、やっぱりマットの頭はおかしかった。
「いや、マット。現実を見に行こう!」
「大丈夫! 僕たちはいつでも会えるから! 実家の家族と水入らずで過ごすのも、あんまりないだろうし!」
いつでも。
マディーは意味がわからなかった。
「いつでもって……どうやって?」
マットがにこりと笑う。
「僕が願えば、レイーアさんは僕の頭の中でいつでも会話してくれるから!」
こいつ、やべぇ。
もうマットの執着が解けることはないのだと、マディーはようやく理解した。
早くレイーアにほかの誰かと結婚してほしいと願うマディーは、きっと正常だと思う。
レイーアの卒業式の日、マディーはとうとう、マットに仏心を出してしまった。
だが、この妄想の世界に生きるマットに現実に立ち直ってもらうには、この方法しかないだろうと、マディーは思ったのだ。
レイーアと関わる機会が更に減ったら、マットは更に奥深い妄想の世界に突き進みそうな気がしたからだ。
そろそろ、マディーも解放されたかったのもあるし、そんな深い妄想の世界には付き合う気もなかったからだ。
マットがぽかん、と涙に濡れた顔で口を開いた。
まさかマディーからそんなことを言われるとは思わなかったのかもしれない。
照れ臭そうにマットが微笑んだ。
「いや、いいよ」
だが、その口から出てきた言葉は、マディーの予想外の返事だった。
「えーっと、何でだ?」
「だって、家族水入らずのところに、僕が邪魔しちゃ悪いから!」
まともな内容に、マディーはおののいた。
「……マットは姉上の……?」
マディーは恐る恐る尋ねた。
マットがにこりと笑う。
「唯一無二の夫だよ!」
いや、やっぱりマットの頭はおかしかった。
「いや、マット。現実を見に行こう!」
「大丈夫! 僕たちはいつでも会えるから! 実家の家族と水入らずで過ごすのも、あんまりないだろうし!」
いつでも。
マディーは意味がわからなかった。
「いつでもって……どうやって?」
マットがにこりと笑う。
「僕が願えば、レイーアさんは僕の頭の中でいつでも会話してくれるから!」
こいつ、やべぇ。
もうマットの執着が解けることはないのだと、マディーはようやく理解した。
早くレイーアにほかの誰かと結婚してほしいと願うマディーは、きっと正常だと思う。
0
お気に入りに追加
116
あなたにおすすめの小説
実は、悪役令嬢で聖女なんです。【スカッと】
三谷朱花
ファンタジー
栗原南17才。ネット小説ではよく読んだシチュエーションだった。だから、自分がそうだとわかった時、覚悟をした。勇者か聖女か悪役令嬢か。はたまた単なるモブか。
与えられた役割は、サリエット・フィッシャー公爵令嬢。
悪役令嬢、なのに聖女。
この二つの役割は、南にとっては成立する気がしない。しかも、転生してきた世界は、大好きで読み込んでいた物語。悪役令嬢であるサリエットのほかに聖女が別にいるはずだった。けれど、サリエットは間違いなく聖女としての力も持っていて……。だが、悪役令嬢としての物語は進んでいく。
この物語、一体どんな物語になるのか、南にはさっぱりわからない。
※アルファポリスのみの公開です。
美人すぎる姉ばかりの姉妹のモブ末っ子ですが、イケメン公爵令息は、私がお気に入りのようで。
天災
恋愛
美人な姉ばかりの姉妹の末っ子である私、イラノは、モブな性格である。
とある日、公爵令息の誕生日パーティーにて、私はとある事件に遭う!?
美形王子様が私を離してくれません!?虐げられた伯爵令嬢が前世の知識を使ってみんなを幸せにしようとしたら、溺愛の沼に嵌りました
葵 遥菜
恋愛
道端で急に前世を思い出した私はアイリーン・グレン。
前世は両親を亡くして児童養護施設で育った。だから、今世はたとえ伯爵家の本邸から距離のある「離れ」に住んでいても、両親が揃っていて、綺麗なお姉様もいてとっても幸せ!
だけど……そのぬりかべ、もとい厚化粧はなんですか? せっかくの美貌が台無しです。前世美容部員の名にかけて、そのぬりかべ、破壊させていただきます!
「女の子たちが幸せに笑ってくれるのが私の一番の幸せなの!」
ーーすると、家族が円満になっちゃった!? 美形王子様が迫ってきた!?
私はただ、この世界のすべての女性を幸せにしたかっただけなのにーー!
※約六万字で完結するので、長編というより中編です。
※他サイトにも投稿しています。
【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。
早稲 アカ
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。
宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。
彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。
加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。
果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?
姉の身代わりで冷酷な若公爵様に嫁ぐことになりましたが、初夜にも来ない彼なのに「このままでは妻に嫌われる……」と私に語りかけてきます。
夏
恋愛
姉の身代わりとして冷酷な獣と蔑称される公爵に嫁いだラシェル。
初夜には顔を出さず、干渉は必要ないと公爵に言われてしまうが、ある晩の日「姿を変えた」ラシェルはばったり酔った彼に遭遇する。
「このままでは、妻に嫌われる……」
本人、目の前にいますけど!?
迷子の会社員、異世界で契約取ったら騎士さまに溺愛されました!?
ふゆ
恋愛
気づいたら見知らぬ土地にいた。
衣食住を得るため偽の婚約者として契約獲得!
だけど……?
※過去作の改稿・完全版です。
内容が一部大幅に変更されたため、新規投稿しています。保管用。
ついうっかり王子様を誉めたら、溺愛されまして
夕立悠理
恋愛
キャロルは八歳を迎えたばかりのおしゃべりな侯爵令嬢。父親からは何もしゃべるなと言われていたのに、はじめてのガーデンパーティで、ついうっかり男の子相手にしゃべってしまう。すると、その男の子は王子様で、なぜか、キャロルを婚約者にしたいと言い出して──。
おしゃべりな侯爵令嬢×心が読める第4王子
設定ゆるゆるのラブコメディです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる