魔法学無双

kryuaga

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第一章 駆け出し冒険者は博物学者

#45

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無事ぶじですか?」

大丈夫だいじょうぶですか?」とか、「怪我けがはないですか?」とか、ようほかにもあったかもしれない。しかし大丈夫だいじょうぶじゃないことは一目瞭然いちもくりょうぜんだし、怪我けがをしていることもればかる。結局けっきょく色々いろいろ意味いみめて「無事ぶじですか?」といたのである。

なんとか、ね。有難ありがとう。キミははんしてつよいのね」

「『はんして』は余計よけいですよ」

「あはは、そうだね」

えず、ひど状態じょうたいみたいですので、〔治癒ちゆ〕と〔回復かいふく〕の魔法まほうをかけたいとおもいますが、れてもらえますか?」

勿論もちろんよ。むしろ謝礼しゃれい出来できるかどうかのほう心配しんぱいだわ」

「それもこれも、全部ぜんぶ地上ちじょうもどってからにしましょう」

治療ちりょう魔法まほうをかけたあと豚鬼オークどもの魔石ませきいて、そして第九階層だいきゅうかいそう拠点きょてんもどることにした。ただ女性じょせい冒険者ぼうけんしゃたちは丸腰まるごしため気休きやすめでしかないが小鬼ゴブリンっていた小剣ショートソードなどをわたしておいた。

戦闘せんとうになったらまもれる自信じしんがありません。ただはしってげることだけをかんがえてください。それから、もし万一まんいちおれふく自分じぶん以外いがいだれかがあしめなければならない状況じょうきょうおちいったとしても、自分じぶんあしめることなくそのままはしけてください」

見捨みすてろ、ってこと?」

いまみなさんの状態じょうたいかんがえてください。御自身ごじしんのことをかんがえるので精一杯せいいっぱいはずです。仲間なかま見殺みごろしにすることは、のこってから存分ぞんぶんいればいんです。

けどあしめたら後悔こうかいすることさえ出来できなくなりますよ」

むしろ、現在げんざいいる第十二階層だいじゅうにかいそう第十一階層だいじゅういっかいそうならまだまもりながらたたか余地よちがある。

けど、第十階層だいじゅっかいそうかく場所ばしょもない。武装ぶそうもなくこころえている女冒険者おんなぼうけんしゃなど、小鬼ゴブリンにとってはりの獲物えものでしかない。だからただひたすらに、はしることだけを彼女かのじょらに要求ようきゅうしたのである。

◇◆◇ ◆◇◆
何本かのけながら、それでも一人ひとりけずに第九階層だいきゅうかいそう辿たどいたのは、やはり「きたい」という執念しゅうねんせるわざか。

拠点きょてんもどり、いつまくトラップをセットし、そして「」の横棒よこぼう部分ぶぶん彼女かのじょらをまねき、あらためて治療ちりょう魔法まほうほどこした。

あらためて、有難ありがとう。あたしはエミリー」

「うちはスー」

わたしはルイスよ」

あらためて、エミリー、スー、ルイス。おれはアレク。“けん”のアレクというふたいただいています。

で、早速さっそくですがこれからの行動こうどう予定よていですが。

まず今日きょうはここで仮眠かみんります。ある程度ていど体力たいりょく回復かいふくしたら、地上ちじょう目指めざしましょう。

女性じょせいふくはありませんが、布地ぬのじはちょっとおおめにってきていますので、はだかくしにはなるとおもいます」

なにからなにまで有難ありがう。けど、そこまでしてもらわなくても大丈夫だいじょうぶよ。冒険者ぼうけんしゃ自己責任じこせきにん、でしょ?」

「そうかもしれませんが、ここではなしたら寝覚ねざめがわるいです」

正直しょうじきって、謝礼しゃれいはら余地よちもないのよ。オークどもとのたたかいの所為せいで、路銀ろぎんすべとしちゃってるしね」

「なら、すべてがわったあとで、ハティスのまちのセラの孤児院こじいんたずねてください。そこであらためて今回こんかい報酬ほうしゅうについてはないましょう。そのときお金かねがないのなら、はたらいてかえしてもらうということで」

きみ孤児こじなの?」

いなえ……、いえ、そんなもんです」

かったわ。まずは地上ちじょうもどる。

そして、あたしたちはハティスのまちく。

そこで、今回こんかい報酬ほうしゅう支払しはらう。

それでいのね?」

「はい」

はなまとまったところで、〔無限むげんインベン収納しゅうのうトリー〕からなべみず猪肉ししにく塩漬しおづけ、椎茸しいたけはじめとした乾燥かんそう野菜やさいなべほうんで一緒いっしょくたにた。岩塩がんえんあじ調ととのえる。そして“すいとん”を適当てきとうってなべほうむ。

また、片手鍋かたてなべみず茶葉ちゃば、それに蒸留酒じょうりゅうしゅ心持こころもおおめにれ、にかけて余分よぶん酒精アルコールばした。茶漉ちゃこしはないけど充分じゅうぶんリラックス出来できる。

「……ここ、迷宮ダンジョンよね?」

「なんでこんなにってるの?」

「やっぱしょく基本きほんでしょ?」

「いや、その一言ひとことますのは絶対ぜったいなに間違まちがってる」

とにもかくにも、この煮込にこみすいとんは結構けっこう好評こうひょうだった。

◇◆◇ ◆◇◆
『ト』の横棒よこぼう部分ぶぶん女性陣じょせいじんやすませ、おれ縦棒たてぼうまりの部分ぶぶん仮眠かみんった。

そして四時間よじかん後、いつも通りきて、女性陣じょせいじんこし、みずけてかおあらわせ、かたパンとあたためた|ミルクで軽食けいしょくった。

「あ、食後しょくごにこれを一粒ひとつぶずつめてください」

「なに? これ」

疲労回復ひろうかいふく効果こうかのある魔法薬まほうやくです」

うそ正解せいかいは、ビタミントローチです。

けど、嗜好品しこうひんとしてもあじいので、みんなふたしがった(おれ備蓄びちくだ!)。

そして拠点きょてんはらい、地上ちじょう目指めざす。

「これからの道程みちのりは、みなさんにもたたかってもらいます」

「え?」

勿論もちろん先頭せんとうって、というわけではありません。後方警戒こうほうけいかいを|お願いします。

余計よけい戦闘せんとう極力避きょくりょくさけ、最短さいたんルートで地上ちじょう目指めざします」

「わかったわ。アレクくん背中せなかわたしたちがまもる」

あえて彼女かのじょらをたたかわせることにしたのは、(実際じっさい集団戦闘しゅうだんせんとうかんがえると哨戒役しょうかいやく必要ひつようだったというのもあるが)仕事しごとをさせることで、余計よけいなことをかんがえさせないようにしたというのがおおきい。

おんなだけで『おに迷宮ダンジョン』に挑戦ちょうせんし、挙句あげくおんな天敵てんてきたるオークにけ、これから凌辱りょうじょくされるという間際まぎわにまだ成長期せいちょうきろくはじまっていないような子供こどもたすけられ、食事しょくじ寝床ねどこ提供ていきょうしてもらい、がりりにも武器ぶきしてもらい、さらには地上ちじょうまでおくってもらう。おんなとして、大人おとなとして、冒険者ぼうけんしゃとして、自信じしんうしなっても仕方しかたがない。

だから仕事しごとあたえることで、くだらないことをかんがえさせないようにしたのだ。

帰路きろ何度なんど戦闘せんとう遭遇そうぐうした。後方こうほうからの襲撃しゅうげきもあった。けど、彼女かのじょらが初撃しょげきめてくれたおかげで、苦無くないあぶなげなく片付かたづいた。

上層階じょうそうかいけば、それだけ出現しゅつげんする魔物まものかずる。

それだけ危険きけんり、油断ゆだん出来できないものの気分きぶんらくになる。

危険きけんることがすなわち、日常にちじょうそばまでているということ。

なんだかんだって、女性陣じょせいじん眼差まなざしにちからもどりつつあった。

◇◆◇ ◆◇◆

地上ちじょういたら、すでよるだった。

なにからなにまで有難ありがう」

「それ、何回目なんかいめです?」

何回なんかいでもうよ。きてるからえるよ。

きてるかぎつづけるよ。

有難ありがう。わたしたちは、アレクくんのおかげでびられた」

とはいえ彼女かのじょらは一文いちもんなし。ハティスまでの路銀ろぎんとして幾許いくばくかの金貨きんかと、にくとビタミンあめすこけた。

「これはしただけですから。あとかならかえしてくださいよ」

「ええかならず。いのちすくってくれた謝礼しゃれいみでね」
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