魔法学無双

kryuaga

文字の大きさ
上 下
47 / 50
第一章 駆け出し冒険者は博物学者

#43

しおりを挟む
さて。“自称”博物学者はくぶつがくしゃにとってここは、『ダンジョン』と書いて『たからやま』と読む。

地球ちきゅうぜんせとこの世界せかいおおきなちがいは、魔法まほう魔物まもの、迷宮ダンジョンのみっつである。そのみっつがすべまっている。こんなわくわくする場所ばしょが、ほかにあろうか。

たとえば、魔物まもの地下ちかふかく(つまりダンジョンコアに近付ちかづけば近付ちかづくほど)つよくなるという。それは、「ダンジョンが魔物まものんでいる」という仮説かせつ証明しょうめいになるのではなかろうか?

以前いぜん、イノシシに魔石ませきむことで、イノシシを魔猪ボアさせることに成功せいこうした。つまり、高濃度こうのうど魔力まりょくさらされたイノシシが魔獣まじゅうした、とえることが出来できる。

そしてダンジョンない高濃度こうのうど魔力まりょくちており、それはコアに近付ちかづけば近付ちかづくほどくなってゆく。なら、魔石ませきたない動物どうぶつも、ダンジョンでながごせば魔獣まじゅうになる、ということだろう。では人間にんげんは?

また、神聖金属しんせいきんぞく。これも魔石ませき同等どうとう性質せいしつっている、ということは、おな理屈りくつ誕生たんじょうした可能性かのうせいたかい。実際じっさい宝石ほうせき魔力まりょくめる『精霊石せいれいせき』という|モノがある。

神聖金剛石アダマンタイトはダイアモンドの、神聖金オリハルコンきんの、神聖銀ミスリルぎんの、神聖鉄ヒヒイロカネはてつの、それぞれ魔力同位体まりょくどういたいである。ならそれは、ダンジョンがそれらの鉱床こうしょうつらぬき、その結果けっか鉱床こうしょう表面部分ひょうめんぶぶん神聖金属しんせいきんぞくしたものと推察すいさつされる。

そうかんがえると、アダマンタイトは石炭鉱脈せきたんこうみゃく神聖金属しんせいきんぞくさせるさい分子配列ぶんしはいれつ等軸晶系とうじくしょうけい整理せいりさせたものとおもわれる。

またヒヒイロカネの場合ばあい鉄鉱石てっこうせき、つまり酸化鉄さんかてつからの神聖金属しんせいきんぞくかんがづらい。魔法まほう魔力まりょく性質せいしつかんがえると、『魔法まほうでは精製せいせい出来できない』酸化鉄さんかてつ魔力まりょくさらした程度ていどてつ神聖金属しんせいきんぞく相転移そうてんいするのは安易あんいだろう。ならおそらく、ヒヒイロカネはてつつまり砂鉄さてつ神聖金属しんせいきんぞくさせたものとかんがえられる。

こういった考察こうさつ裏付うらづけは、結構けっこう簡単かんたん出来できる。とく神聖金属しんせいきんぞく関連かんれんは、その鉱床こうしょうがダンジョンないにあれば一発いっぱつだ。

だからこそ、ダンジョンない徘徊はいかいする先達せんだつ冒険者ぼうけんしゃ魔物まものより、ダンジョンの壁面へきめん留意りゅういしながらダンジョンの探索たんさく開始かいしした。

◇◆◇ ◆◇◆

初日しょにちは、ダンジョン第三層さんそうまでサクサクすすみ、第四層よんそうかる下見したみして帰還きかんした。

ダンジョン探索たんさくにかける時間じかんは4時間じかんとし、4時間じかん経過けいかしたら即座そくざ帰還きかんルートにる、というのが当初とうしょからの計画けいかくであった。

とはいえ時計とけいなど存在そんざいしないこの世界せかい時間じかんはか方法ほうほう工夫くふうする必要ひつようがある。冒険者ぼうけんしゃ蝋燭ろうそくなどを使つかい、一本いっぽんきたら何分なんぷん、というかたちはかるのである。

おれは30ぷんきる蝋燭ろうそく用意よういして、8本はっぽんきたら帰還きかんする、という方向ほうこう計画けいかくしている。
ダンジョン内は、先達せんだつ冒険者ぼうけんしゃ設置せっちした松明たいまつがあるが、基本的きほんてきにはくらい。つまり、時間間隔じかんかんかく方向感覚ほうこうかんかくくるうのだ。そして、やすもない緊張きんちょう連続れんぞく片道かたみち四時間よじかん復路ふくろ難易度なんいどちるとはってもけない。

あさの7ころに出発しゅっぱつして、往復おうふく8時間じかん午後ごご3ころ帰還きかんはやめに食事しょくじをして、午後ごご8には入眠にゅうみんする。そして翌朝よくあさ4ころに起床きしょうし、装備そうび確認かくにん準備運動じゅんびうんどうなどをして、またダンジョンにもぐるのである。

◇◆◇ ◆◇◆

上層階じょうそうかいおおてきた魔物まものは、やはり小鬼ゴブリンだった。

第一階層だいいちかいそうでは2~3にんで、第二階層だいにかいそう以下いかになると人数にんずうえる。

……いや。「2~3にん」じゃない。「2~3ひき」、だ。

かずかぞかたには|ルールがある。カラン村むらゴブリンゴブリンたちのように人間にんげん意思いし疎通そつうし、友好ゆうこうきずこうとする相手あいてなら『にん』でかぞえなければ失礼しつれいたるが、知性ちせいがあってもてき効率的こうりつてきほふためにしか使つかわないような相手あいてなら、『ひき』で充分じゅうぶんだ。

そう。した階層かいそうりれば、それだけゴブリンゴブリンたちはかずやし、そしてそのかず有効ゆうこう活用かつようするためさくる。一度いちど小癪こしゃくにも敗走はいそうえんじ、味方みかたゴブリンゴブリンたちが待機たいきしている場所ばしょ誘導ゆうどうされそうになったこともある。だが残念ざんねん、その戦術せんじゅつカラン村むらゴブリンゴブリンたちにしてやられたからね。とくにこんなどこにでもてきがいる場所ばしょ深追ふかおいするなんて、文字通もじどお自殺行為じさつこういだ。

途中とちゅうあしめて見送みおくったら、げていたはずゴブリンゴブリンもどってたので、あっさりと処分しょぶん魔石ませきうばった。

こんなふうに、最初さいしょ数日すうじつぎていった。

◇◆◇ ◆◇◆

ダンジョンへ挑戦ちょうせんはじめて、7日目かめ午後ごご

すで第九階層だいきゅうかいそうまで突破とっぱし、第十階層だいじゅうかいそうあしれている。

あらわれる魔物まものも、ゴブリンゴブリンのみならず犬鬼コボルトや、魔鼠ラットなどの小動物系しょうどうぶつけい魔獣まじゅうもいるが、やはり戦術せんじゅつ駆使くし魔術まじゅつふくめた多彩たさい攻撃こうげきをするゴブリンゴブリン一番手強いちばんてごわい。

しかし、ここまでは鉄串てつぐし苦無くない使用しようせずに通過つうか出来できた。が、第十階層だいじゅうかいそう随分ずいぶんひろくまた天井てんじょうたかい為《ため》、弓矢ゆみや魔法まほうといった長距離攻撃手段ちょうきょりこうげきしゅだん使つかやすい。おれがそうおもうのなら、ゴブリンゴブリンたちもそうだろう。見敵けんてきサーチ・アンド必殺ひっさつ・デストロイの勝負しょうぶになるであろう第十階層だいじゅうかいそうはむしろタイムアタックのつもりでけたほういと、今日きょう一旦いったんがることにした。

そして、時間じかんあまったから門前町もんぜんまち酒場さかばした。

「おう小僧こぞう。まだきてたのか!」

「そう簡単かんたんんでたまるかっつ~の」

すで顔馴染かおなじみになった冒険者ぼうけんしゃ挨拶あいさつをしながら、カウンターへ。

「おっちゃん、果汁かじゅう新鮮野菜しんせんやさい。それからあっちのテーブルにされている美味おいしそうな煮込にこみシチューはまだあるかい?」

「おお、まだ沢山たくさんあるぞ。|今日は豚鬼オークにくはいったからな。ホラ大盛おおもりだ」

「ありがと」

「ねえボーヤ。こっちで一緒いっしょにおさけでもまない?」

酒精アルコールまえ色香いろかいそうですので遠慮えんりょします」

「あらつれない」

「どうでもいけどガキを口説くどこうとしないでくださいよ」

「だってボーヤ、将来しょうらい大物おおものになりそうなんだもの。いまのうちにツバ付つばつけときたくなったのよ」

青田買あおたがい、というやつですか?」

青田あおた? なんだそりゃ?」

とおくに言葉ことばで、まだたばかりの農地のうちのことです。作物さくもつ出来できてからけるんじゃなく、出来できまえからければ、もし豊作ほうさくなら商人しょうにん大儲おおもう出来できるでしょ?」

凶作きょうさくになったら大変たいへんだな」

「だからこれは、一種いっしゅ投機とうきギャンブルなんですよ。

 おねえさんとおなじですね。おれ大物おおものになればおねえさんも自慢じまん出来できるでしょうけれど、ならなかったらガキにした変態女へんたいおんなばわりされることになりますよ」

「そうだそうだ。安全あんぜんパイってことでおれほういって」

「アンタは大物おおものになれないことが確定かくていしているでしょうに」

刹那せつなてきで、陽気ようきで、前向まえむき。

あさいだからこそ気安きやすくなれる。こういう関係かんけいわるくない。

◇◆◇ ◆◇◆

そして翌日よくじつ鉄串てつぐし苦無くないによる長距離投擲ちょうきょりとうてき駆使くしし、第十階層だいじゅっかいそう最速突破さいそくとっぱした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

【オンボロ剣】も全て【神剣】に変える最強術者

月風レイ
ファンタジー
 神の手違いにより死んでしまった佐藤聡太は神の計らいで異世界転移を果たすことになった。  そして、その際に神には特別に特典を与えられることになった。  そして聡太が望んだ力は『どんなものでも俺が装備すると最強になってしまう能力』というものであった。  聡太はその能力は服であれば最高の服へと変わり、防具であれば伝説級の防具の能力を持つようになり、剣に至っては神剣のような力を持つ。  そんな能力を持って、聡太は剣と魔法のファンタジー世界を謳歌していく。  ストレスフリーファンタジー。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

全校転移!異能で異世界を巡る!?

小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。 目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。 周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。 取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。 「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」 取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。 そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。

修行マニアの高校生 異世界で最強になったのでスローライフを志す

佐原
ファンタジー
毎日修行を勤しむ高校生西郷努は柔道、ボクシング、レスリング、剣道、など日本の武術以外にも海外の武術を極め、世界王者を陰ながらぶっ倒した。その後、しばらくの間目標がなくなるが、努は「次は神でも倒すか」と志すが、どうやって神に会うか考えた末に死ねば良いと考え、自殺し見事転生するこができた。その世界ではステータスや魔法などが存在するゲームのような世界で、努は次に魔法を極めた末に最高神をぶっ倒し、やることがなくなったので「だらだらしながら定住先を見つけよう」ついでに伴侶も見つかるといいなとか思いながらスローライフを目指す。 誤字脱字や話のおかしな点について何か有れば教えて下さい。また感想待ってます。返信できるかわかりませんが、極力返します。 また今まで感想を却下してしまった皆さんすいません。 僕は豆腐メンタルなのでマイナスのことの感想は控えて頂きたいです。 不定期投稿になります、週に一回は投稿したいと思います。お待たせして申し訳ございません。 他作品はストックもかなり有りますので、そちらで回したいと思います

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...