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第12話

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ライナーの厳しい稽古の日々が続く中、アレックスは少しずつその教えに手応えを感じ始めていた。しかし、ライナーはまだ何かを秘めているようで、全ての技を見せることはなかった。

「ここで満足するな、アレックス。お前が成長するためには、恐れずに限界を越える覚悟が必要だ」

ある日、ライナーはアレックスに目隠しを施し、両耳にも綿を詰めて聴覚を遮る。視覚と聴覚が封じられたアレックスは、初めて味わう暗闇と静寂に戸惑った。しかし、ライナーの言葉が頭の中に響いてくる。

「視覚や聴覚に頼らず、感覚だけで周りの動きを感じ取るんだ」

この修行は、アレックスの動きと集中力を鍛えるための特訓だった。手探りで剣を振るうが、的確に標的を捉えることができない。剣の振りが宙を切り、何度も足元がふらつく。だが、それでもアレックスは諦めることなく、再び構え直した。

「お前の内なる力を呼び起こせ。その力が、周囲の気配を教えてくれるはずだ」

何度も試行錯誤を繰り返す中、アレックスの内に眠る感覚が少しずつ開かれていくのを感じた。風のわずかな流れ、足元の地面の微かな振動…。これまで見落としていたものが、少しずつアレックスの意識に浮かび上がってくる。

やがて、彼はライナーの気配を感じ取れるようになり、その動きに対応して剣を振るうことができるまでになった。ライナーが軽く微笑みながら近づいてくると、アレックスは視覚と聴覚を封じられたまま、彼の剣の軌跡を感じ取って受け止めることができた。

「よくやった。感覚を信じ、周囲と調和する力を得たようだな」

アレックスの顔には安堵と誇りが入り混じっていたが、ライナーはすぐに笑みを引き締め、次の試練を告げた。

「だが、これで終わりではない。次はお前一人で森に入り、この技を本物の敵に試してこい」

彼が指示したのは、魔物が出没する危険な森だった。これまで人との稽古を重ねてきたが、実戦はまた別だ。心のどこかで恐れを抱きながらも、アレックスはその命令を受け入れ、ひとり静かに森の中へと足を踏み入れた。

薄暗い森の中、アレックスは辺りを慎重に探る。風の流れや小動物の気配に敏感になりながら進んでいくと、やがて目の前に現れたのは、牙を剥き出しにした狼の魔物だった。

アレックスは息をのみ、心を静めた。視覚や聴覚を超え、全身で相手の動きを感じ取り、剣を握る力を強める。そして、ライナーから教えられた通り、恐れを振り払って自らの限界を突破する意志を固めた。

「ここで引き下がるわけにはいかない…!」

そう心に決め、アレックスは果敢に魔物へと立ち向かう。剣を握る手に自信が宿り、彼の一振りはこれまでとは違った鋭さを放っていた。

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