転生したらぼっちだった

kryuaga

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プロローグ

#3

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「つまり、俺はその世界に送ってもらえるって事ですか?」



 おいしい話には裏がある、なんて格言の様なものの存在も忘れて、思わず敬語になりアマテラスに結論を迫る現金な護。



「うん。君が望むなら可能だよ。でもその前に、色々と説明しなくちゃいけない事もあるから落ち着いて?」



「あっ、と。すみません」



 体ごとアマテラスに迫っていた事に気付き、慌てて体を引くが、勢いが強すぎたのか、尻餅をついてしまう。



「ふふ、落ち着いたかな? ……それじゃあ説明を始めるね」





 曰く、その世界"トイボックス"には、



 大地の生み出す特有のエネルギー(護は魔力と仮称)があり、大地から溢れ出た魔力によって草木を始め、動物や人間すらも活性化、あるいは変異させ、魔物や魔獣、幻獣や聖獣、あるいは特異な人族を生み出しているそうだ。

 魔力というこの世界特有のエネルギーによって世界管理に必要な想いの力にも余裕ができ、トイボックス担当の神が弄る事が出来てしまったらしい。



 魔力の影響を受けて変異し、生み出された人族には様々な種族がおり、



 一部の素体となり、多種族のように尖った能力は無いが、肉体的にも身に宿す魔力量的にも平均的で、体の精強差は比べ物にならないが、地球人ともほぼ完全に肉体構造を同じくする、普人族。



 肉体的にかなり頑強で、魔力量は普人族にやや劣るが、部族毎に更に様々な特徴を備える、獣人族。



 魔力量や、それを操作する才能が高く、比較的手先も器用。

 ほとんど、という程ではなく、比較的美形が多く華奢で、耳が長い、森人族……いわゆるエルフ。



 獣人族には劣るが、やや頑強な肉体を持ち、普人族よりはそこそこ多い魔力量を持つが、戦闘センスはあまり無いらしく、それでいて手先は器用で鍛治などの生産や創造を好む、山人族……要するにドワーフ。



 同一種族ですら似通った特徴があまり現れず、個人個人でやたら尖った外見や能力を持つ、魔人族……ただし特化能力以外はからっきし。





 曰く、トイボックスには、



 トイボックスの担当神が作ったダンジョンがあり、最奥にある魔力の凝縮された核を手に入れれば、巨万の富、強大な魔力、後述する強力であったり特殊であったりするスキル、あるいは付随する名声を手に入れられるという。



 内部には獣を初めとした魔物や魔獣、幻獣に聖獣、様々な人族などの姿を模したモノがモンスターとして存在しており、魔力核を守っているそうだ。

 日夜冒険者が、さらには獣や魔物などの人族ではない者達すら、ダンジョンに挑んでは命を散らし、あるいは魔力核ほどではないが、副次的な利益を得て帰るそうだ。





 曰く、トイボックスには、



 ダンジョン発生前より存在した"探索者"といった、その名の通り、各地の探索や調査、様々な素材の採集などを行うトレジャーハンターの様な者達が、ダンジョン発生よりしばらくして"冒険者"と名を変え、冒険者ギルドと呼ばれる互助組合を立ち上げ、ダンジョンに挑む者達、以前のような探索を行う者をサポートする組織があるそうだ。



 しかしそこでまたギルドの存在を面白がった担当神が介入し、冒険者である事を証明し、身分証明にもなるギルドカードに様々な機能を追加した。

 それは冒険者達にとって青天の霹靂のような機能ばかりであったが、ギルド職員に取ってもまた別の意味で青天の霹靂であった。

 いつの間にかギルドカードが有り得ないほど機能を飛躍させたうえ、何故か作り方の知識が頭の中にあり、それでいて機能を付与する原理が全く理解出来ないのである。

 初めの内は他の技術に転用出来ないか研究がなされていたが、何の成果も出ず、今では作り方は職員であれば大抵知っているが、原理が理解出来ない事に何の違和感も持たなくなっているのだそうだ。





 曰く、トイボックスへ行くならまずギルドに登録するのがお勧めらしい。



 と、言うのも、先程の話に出たギルドカードの存在が大きい。

 トイボックスではダンジョン内のモンスターに限らず、植物を含め、ありとあらゆる生物が魔力を持っている。

 ギルドカードには、倒した相手から素材の質を損なわない程度に魔力を奪い、溜める機能がついていて、溜めた魔力をギルドで清算すると、普通に生活するよりも効率よく魔力を体に取り込むことが出来る。

 ……実の所、その魔力の多くを清算する際担当神にピンハネされているのだが、人族は知る由もないし、それでもギルドカード無しで魔力を取り込むより数倍は効率がいいそうだ。



 そして魔力の高効率吸収と同等以上に価値のある機能が、[想いとスキルの交換]だ。

 これも担当神の遊び心によって生み出されたもので、そもそもトイボックスにスキル等というものは存在しなかった。



 ギルドカードには想いを±別に吸収し、溜める機能もついており、ダンジョン内でマイナスの想いはもちろん、ダンジョン外の生物からもマイナスの想い、少なくはあるがプラスの想いも集める事が出来る。



 ちなみに通常通りに、想いの発生方法である感謝の祈りや憎しみによっても想いは溜める事が出来る。

 マイナスの想いは溜まりやすいが、ある程度までの基本的な技術や知識のスキルまでしか交換が出来ない。

 プラスの想いは非常に溜まりにくいが、上位の技術や知識、あるいは特殊なスキルと交換することが出来るそうだ。



 勿論、交換された想いは担当神の楽しみのために利用される。

 魔力で世界が安定しているのをいいことに、プラスの想いの数割をスキルの創造に、残りは自分のために。

 マイナスの想いの何割かはきちんと処理しているのだが、残りは全部何かに利用しているらしい。







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