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16歳の章
近くの村でのゴブリン騒動、或いはカーロの大冒険2
しおりを挟む僕と精神を接続したカーロが最初に向かったのは、バナームさんの部屋である。
王都を離れる仕事の際に、僕がカーロを残すのはバナームさんとの連絡を取る為だ。
カーロが翼を広げ、王都の空を舞う。飛び立った場所が何処かと言えば、旧市街の教会だった。
……多分あそこのシスターさん達に餌をねだる為に頻繁に通っているのだろう。今度何か手土産持って謝りに行かねば。
それなりに広い王都だが、空を飛ぶカーロの移動速度はかなり早い。
僕が歩いて移動するよりも遥かに早く王城に辿り着き、コツコツとバナームさんの執務室の部屋の窓を突っつく。
その音に、部屋の中で書類作業をしていたバナームさんが顔を上げ、カーロに気づいて窓を開けにやって来る。
「カーロ君、どうしました? お腹が空いたのでしたらパンでよろしければ……、フレッド様がいらっしゃるのですね? 失礼いたしました。如何なさいましたか?」
窓を開けたバナームさんの、カーロに対して見せた緩んだ空気が仕事の時の其れに切り替わった。
というか、カーロ、バナームさんにもエサねだってたの……。僕、使い魔の管理出来て無さ過ぎる。
文字盤を持って来てくれたバナームさんに、カーロと僕は嘴の先で文字を指し示しながら意思疎通を図る。
「北西の村、ゴブリン出現、数未知、被害無し、魔物災害補助、冒険者ギルド、ですね。畏まりました。冒険者ギルドへの依頼文を作成しますので確認をお願いします」
流石に話がとても早い。
不便なやり取りの方法ではあるが、察しの良いバナームさんは足りない所を埋めながら確認してくれるので手間は最小限で済んでいる。
出来上がった冒険者ギルドへの依頼文を確認した僕は、それをカーロに足で掴ませると次は冒険者ギルドを目指すよう指示を出す。
冒険者ギルドでは手紙を抱えたカラスがやって来た事に少しばかりの戸惑いを見せる。
まあ当然だろう。仕方が無い。
けれど手紙に押された判が王城で使用される物だった為に呼び出されたギルドマスターがカーロを知っていたので解決した。
此れで上手く行く筈だ。ギルド長の爺様も何だかんだで察しは良い。
何故僕が自分で片付けずに依頼を出したのかも理解するだろうし、それに報いる信頼出来る人選で応えてくれる筈である。
僕は最後にカーロを労い、接続を切る。カーロは少し寂しげだったが、村をまわる仕事はもう少し続くので申し訳ないが土産を楽しみにしていて欲しい。
接続を切った僕は襲い来る頭痛にこめかみを押さえる。強い集中と接続による負担が一気に襲い掛かって来たのだ。
王都までの距離は辺境からの其れに比べれば随分マシだが、今回は接続していた時間も長かったので負担が少しきつめである。
だが頭痛に負けてばかりも居られない。僕の様子に不安な表情の村長が目の前にいるからだ。
「ちょっと集中しすぎたので眩暈がしました。補助申請と冒険者の手配終わりましたよ。ギルド長に頼んだので早めに来てくれると思います」
意識して笑顔を浮かべて、安心させるように告げる。
僕の言葉に村長の不安の表情が目に見えて和らいだ。
此処の村長は少しは裏で色々やってそうだが、そこまで後ろ暗い話じゃ無い筈だ。
村と村人に対しての責任感の強さは感じる。
彼等を守り食わせて行く事に懸命ではあるけど、だからこそ危ない橋はわたるタイプじゃないだろう。
さて頭痛も随分マシになってきたが、少し休もう。夜は見張りに立つ事で村人の不安を軽くしたい。
「村長、夜に見張りをする心算なので少しベッドを貸してください。何かあればすぐに起こして下さって良いですから」
正直な所、冒険者が到着するまでの夜の見張りとゴブリンの殲滅を天秤にかければ、圧倒的にゴブリンを退治してしまう方が楽である。
でも此れが僕のやり方なのでもう仕方がないのだ。僕が少し頑張れば、色々うまく回るのだから。
数日後、やって来た冒険者達を見て僕は内心溜息を吐く。
「あ、やっぱり師匠が居たよ。やっほー」
冒険者の中に、何故かカーロを肩に留めた駆け出し冒険者のセラティスが混じって居たからだ。
確かに僕は信頼できる人間の派遣を願っていたが、それは実力的にゴブリン退治に不足ない冒険者と言う意味で、別に知ってる人間に来て欲しいって訳じゃなかったのに。
ゴブリン退治に僕が村を離れる訳には行かないが、カーロはついて行かせようと心に決める。
使い魔であるカーロは単なるカラスよりは遥かに強化されているから、何かの役には立つだろう。
一応僕も接続出来るし……。
セラティスが実力不足だとまでは思わなってないが、やはり知人が相手だと心配してしまう僕の性分をギルド長が笑っている気がした。
偵察と攪乱にカーロは無茶苦茶活躍したよ。
本日のお仕事自己評価70点。かーろががんばってくれました。
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