王様とメイド

立花すずな

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12-3 マドレーヌ

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  朝。

 「たっだいま!」と朝からうるさいのは、無事グローを調査し終わったコーヨである。

 「朝から騒がしい…」

 コーヨは窓の外を見つめながら、「てか、戦いの方はだいじょーぶだっだの?」とのんきに言う。

 「あぁなんとかな」


 昨日、敵軍が座っていることに突っ込みをオリヴィアが入れた後、「なぁ、明日から戦わないか?」と言ってきたのは、まさかのジャーロだった。


 「はぁ?」とオリヴィアが言うと、

 「眠い」「疲れた」「ご飯食べたい」「とりま家帰りたい」「テレビ見てぇー」などと、敵軍の兵士が口々に言ってきた。

 すると、「わかった…」とアンドレア様が言った。怒りか、呆れか。


 昨日分かったことは、とにかく諦めるのが早い!てか、勝てんじゃないの?と思うオリヴィア。
 
 「グローの情報は」部屋で紅茶を飲みながら、アンドレア様が言う。

 「まず、剣の才能は勿論の事。家庭の事情も」

 「それで」

 「好きな服は、カジュアル系ファッション」

 「そうか」

 「家は二階建て」

 「そうか」

 「好きな色は灰色。ていうかさ、そこは、名前がグローなんだから、黒とかさぁ!でも髪色が灰色だから好きなのかn」

 「どうでもいい。次」

 「はい。好きな食べ物はマドレーヌ。お母さんが幼少期作ってくれたそうだ」

 「いや、好きな食べ物とか、必要あります?」と咄嗟にオリヴィアが言う。

 「いるよ」

 「…そうですか」

 「続けるぞ。好きなタイp」

 「いやもういいでしょ!!」我慢の限界に達したオリヴィア。


 「あと、好きな服とか、しょっぱなからいらないでしょ!」

 「そうかい?いや、プライベートとか知りたいかなって…」

 「アンドレア様、もういいです。さっさと仲間にしちゃいましょう」

 「だな。もう耐えられん」

 「いや、さっきまで真面目に聞いてたじゃん!なんで二人でいじめるの!」


 「おい待てよ?」突然アンドレアが立ち上がる。


 「簡単にグローがこっちに来るとは思えん。食べ物で釣ろう」

 「…いや、そんな幼稚な」

 「引っかかるかもしれん。いいぞアンドレア!」

 「いや、さすがに引っかからないでしょう」

 「お前、マドレーヌ作れ。今すぐだ」

 「は?」

 「行け!!」鋭い眼光で睨みつけられる。

 「え、なんか怖いから行ってきまーす!」




 1時間後。無事マドレーヌ完成。

 「どうにかアンドレア様に殺されずに済んだ…」

 よし、これを持っていこう!


 「アンドレア様、できました!」

 「そうか。よしやるぞ。」オリヴィアはまだ半信半疑だが、アンドレアについていった。



 「おい」軍の後ろで、剣の手入れをしている、グローに声をかけた。

 「なんでしょう」やはり敵軍が話しかけてきたから警戒しているようだ。

 「これ」アンドレアがグローにマドレーヌが入った袋を手渡す。と

 「何これ!やったー!!」と飛び跳ねて喜んでいる。

 
 「それあげるからさ、コッチの仲間にならんかね」とコーヨがいう。

 「よろしく頼む」とアンドレア。

 しょうがなく「よろしくお願いいたします」とオリヴィアも。

 すると「うん。いいよ」と即OK。



 「いや、簡単!本当にいいんですか?」とオリヴィアが言うと、

 「あ待って。味確認してから」と言って、むしゃむしゃとマドレーヌを食べる。


 「どうだ?」

 「うん。いいよ」満足そうにそう言った。

 「美味しいのか?」アンドレアが聞くと、

 「うん。ママの味にそっくり」と。

 「よかったな」グッジョブ。とアンドレアが指でやってくる。

 「いや、嬉しいけど、それただのマザコン!」



 …とまぁこんな感じで成功したのであった。

 「楽しみだな。アイツがどんな顔をするのか」ははっと笑うアンドレア。

 本当に成功するのかな、と敵軍を見つめながらオリヴィアは言う。

 だって敵の城の前でトランプとか、歌うたったりしてんだもん。先が思いやられるわ!
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