王様とメイド

立花すずな

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11 奴が来る

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 私は、この国ゾフィエを統べるジャーロ=ロウドだ。もともとは、家庭教師をしている両親から生まれ、都市のはずれに住んでいた。

 本当は、王になる事なんてなかった。

 あの、身勝手な義理の兄のせいで、養子に。つくづく頭が良くて良かったと思っている。

 王になりたいなんて思ったことは無いし、テキトーに、そこらより頭が良い俺が、ここに連れてこられただけだろう。特に仕事に思い入れはないし、むしろ、やらされている。

 俺を養子にした、故ガブリエーレに亡くなる前に言われたことがある。

 それは、『お前が、アンドレアのバカな行動を止めるんだ。アイツはこれから何をするか分かったものじゃない。お前がアイツの行動を終わらせるんだ。最悪、殺してしまってもいい』と。

 確かに自分だって、アイツに将来をとられたんだ。こんな面倒な仕事じゃなくて、幸せに暮らしていたはずだった。

 「父さん、俺がアイツの息の根を止めてみせるよ」ジャーロは怪しく笑った。


〇〇〇

 「ゾフィエの軍が、アレッサンドロに近づいています!」と言われたのは、穏やかな真昼時。

 アレッサンドロに、ゾフィエの軍が迫ってきているという。


 「アンドレア様どういたしますか!」とアレッサンドロ軍の大佐が言う。

 「一度対話してみた方が…」とオリヴィアが言う。

 「いや、そんなのはやらん。戦おう」とアンドレアが言う。

 「何を言っているのですか!」とオリヴィアが咄嗟に言うが、「ずっとここまで勝ってきただろう。問題ない」なんて。


 「そんな無責任なことを~…。戦争に運は付き物です!必ずなんて…」

 「確証ないってか。笑わせる」




 オリヴィアは、焦っていた。

 これまでは、小さな国同士の戦いが多かったため、この国は簡単に勝てた。が、今回は、この地方の中で最も大きいゾフィエと戦うのだから焦るのだ。

 「あぁ、勝てるさ。いつかこの日が来ることは分かっていたからな」と悠長に言う。


 確かに、この国を作ったのは、ゾフィエにアンドレア様が反抗するために作ったといっても過言ではない。

 私自身、ゾフィエは貧民区にだけ、何もしてくれなかった。私たちだけ何もかも置いてけぼりだった。確かにゾフィエを恨んでいるのは私も一緒だ。

 「だけど、早すぎないですか?もっとこの平和な国で過ごしていたかった…」とオリヴィアは言う。

 「何を言う。戦いに早いも遅いもないだろう。というか、早くアイツらに勝って服従させてやりたいものだ」そう言ってニヤリと笑う。

 「きっと直にジャーロが来るだろう。俺もアイツと話してみたかったんだ」

 「…しょうがない。まずは、対話してやるよ。あっちはそれで引っ込まないと思うし、俺も引っ込まない。その後すぐに戦いだ。大佐、戦いの準備を今すぐ初めておけ」

 「はい!!」大佐は部屋を出ていった。

 「どうしても対話で終わらせないのですね…?」

 「もちろんだ。俺はジャーロが気に入らないんだ。潰してやるよ」



〇〇〇

 「あれがアレッサンドロの城か?」

 ジャーロは馬に乗りながら、執事に問いかけた。

 「はい」執事が答えると、「ふっ、あんな小さい城しか作れないのか。会わなくても分かる。器が小さい事をな」と言う。

 ゾフィエ軍は確実にアレッサンドロへ向かっていった。

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