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6 弟
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私は弟を見殺しにした。
私がアレッサンドロの城で働いている時は弟が、妹と病気になった母の世話をしていた。12歳の男の子がご飯や色々な世話をしていたのだ。
弟は遊びに行けなかった。貧民区でも友達はいる。何人かのグループだった。
小さいころからの幼馴染みで、みんな仲が良かった。それぞれ、家での仕事はあったが、毎日のように日暮れまで遊んでいた。
が、母が病気で、私が城に行き始めた頃からそうはいかなくなった。遊ぶ時間を減らされ、病弱な母と妹の世話をする。勉強をする時間もなかった。
そして私は、住み込みで働いていたから、例え帰っても、弟の愚痴や苦労話を聞くこともできなかった。
そんな中、やっとの思いで私は家に帰れた。冬だった。
『お帰り』と言ったあの表情は笑顔だった。いつもと変わらない。
だけど今は、辛い体と気持ちを抑えて無理していたのだと思う。
それから、勉強をして、楽しい話をして、寝た。私もそれ以外の事を聞くことを、すっかり忘れていた。
すると弟は、「おねーちゃん。あのさ…」と言ってきた。多分、愚痴を言おうとしていたのだと思う。
だが私は、『明日、朝早くに帰らないといけないの。だから、もう寝るね』と言ってしまった。
あの時の弟はどんな気持ちだったろう。
それから一か月後、弟は死んだ。12歳の過労死。母は、何度も死んだ弟の遺骨に謝った。
『ごめんね。母さんが病気になってしまって』と。
その後妹から聞いた。
『お兄ちゃんね、ここずーっと、毎日泣いてたんだよ。なんで?って聞いたら、友達が無視するからなんだって。勉強もできないし、辛いって言ってたよ』
『一つあるって言ってたけど、それは教えてくれなかった』と。
もう一つは、二人の世話が大変で、その苦労話を私が聞いてくれなかったことでしょ?
私が悪かった。
母のせいじゃない。母がこうなったからには、弟の母替わりは私のはずだった。それを気付きもせずほっといたのは私だ。
『おねーちゃん。あのさ…』言いかけたこの言葉を聞けば良かった。この言葉は、私を一生蝕むことだろう。
〇〇〇
俺の弟は全部他人事だった。俺が次期王になるのも、特になにも思っていなかった。俺よりも優秀な弟が王になるべきなのに、知らない顔をして過ごしていた。
『俺が王になっていいのか?お前の方が何においても優秀なのに』
『いいんじゃない?というか僕は王なんかヤだね。面倒そうだし、パパの仕事を引き継ぐなんて僕にはできないしー』その時俺は、無意識に弟を殴っていた。
痛い!と大袈裟に言って、使用人を沢山呼んで俺はすぐに怒られた。
『お前、アル―に何をした!?』父はいつもより怖い顔で俺を怒った。父は俺じゃなく、弟をかわいがっていた。
『それは…アル―が…』
『何を言ってる!お前が勝手に殴ったのだろう!』父は聞いてくれなかった。何度経緯を話しても。
弟が嫌いだった。自分勝手で、他人はどうでもよくって。
そして俺は弟を殺そうとした。
ある夜。弟の部屋に忍び込んで、明日の朝に飲む薬の水に毒を仕込んだ。
弟は生まれつき病気で、毎朝起きると沢山の薬を飲んでいた。
毒は父の部屋に忍び込んで数滴採った。それを寝ている間に水の中に入れた。
弟は眠りが浅い。足が痛くなるから眠りも当然浅かった。そのため、睡眠導入剤を寝るまえに飲んでいた。だから毒を仕込むのは容易だった。
毒を仕込んで俺は部屋に戻った。
朝。起きると城中は混乱していた。空気から分かった。弟が死んだことを。
部屋から出ると、メイドが、『アンドレア様!アル―様がお亡くなりになりました!』と言った。
弟の病気は死ぬような病気じゃなかった。だから、父は解剖をしてほしいといった。
だが、医者や、使用人たちが賛成せず、結局表向きは病死とされた。
解剖がされなかったからか、毒の正体はバレることは無かった。俺は、してはいけないことをしたのだ。
そしてその後、俺はやはり次期王だと言われ続けた。俺が城から逃げ出そうと思っていた時、上手く父が養子を迎え入れた。
養子……ジャーロという新しい弟は、養子と言われたが、父の子だった。父があるメイドと作った子らしい。
そいつは頭がよかった。こいつがいれば、俺がいなくなってもいい。元々俺が城を逃げ出したら国を作るつもりだった。
王になって浮かれているあいつを殺すのもなかなか面白そうだ。
〇〇〇
今日は弟の命日。私はアンドレア様から特別な許可を得て、一日お休みをもらいました。
弟は私が殺した。だから毎年ここに来て謝らなければならない。毎年一緒に謝っていた母も、おととし死んだ。
妹も今は嫁ぎ先が決まっている。だから、私が守るべきものはもうなくなった。
弟の墓を見ながら、何度も謝る。
帰ってこない返事。それでもいい。謝ることが弟にする最後の姉としての仕事だった。
私は救われない。弟という地獄で一生さまよう。
あぁ弟よ、許しておくれ…?
「おい」びっくりして後ろを振り向く。だって、ここには誰もいなかったもの。
「ここは誰の墓だ?」アンドレア様だった。どうしてここに?
「お、弟のです。でもなぜここに?」
「お前が心配だったんだ。夜遅くに帰るなどと言っていたからな」
「なぜここが分かったのですか…?」
「色々村人に聞きまわったんだ。そうしたら、ここに行くお前を見たという声を聞いて…」
あぁ。私は罪だ。
弟を見殺しにしておいて、こんなに幸せなのだから。本来なら許されないのに。
私の頬に涙が伝う。
「どうした!?」心配そうに私の顔を覗き込む。
「私が弟を見殺しにしたのに!」アンドレア様は何も知らないのに、こんなことを言ってしまった。
何もしらないはずなのに、「お、お前は悪く、ない」と言う。あぁ、やっぱり幸せだ。
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
「おいおい!大丈夫か?とりあえず帰ろう」私の肩を抱いて、王と私は家へと帰る。
許されない。許されるはずがない。私は罪人。私は悪いヒト。
この地獄は永遠に終わらない。
私がアレッサンドロの城で働いている時は弟が、妹と病気になった母の世話をしていた。12歳の男の子がご飯や色々な世話をしていたのだ。
弟は遊びに行けなかった。貧民区でも友達はいる。何人かのグループだった。
小さいころからの幼馴染みで、みんな仲が良かった。それぞれ、家での仕事はあったが、毎日のように日暮れまで遊んでいた。
が、母が病気で、私が城に行き始めた頃からそうはいかなくなった。遊ぶ時間を減らされ、病弱な母と妹の世話をする。勉強をする時間もなかった。
そして私は、住み込みで働いていたから、例え帰っても、弟の愚痴や苦労話を聞くこともできなかった。
そんな中、やっとの思いで私は家に帰れた。冬だった。
『お帰り』と言ったあの表情は笑顔だった。いつもと変わらない。
だけど今は、辛い体と気持ちを抑えて無理していたのだと思う。
それから、勉強をして、楽しい話をして、寝た。私もそれ以外の事を聞くことを、すっかり忘れていた。
すると弟は、「おねーちゃん。あのさ…」と言ってきた。多分、愚痴を言おうとしていたのだと思う。
だが私は、『明日、朝早くに帰らないといけないの。だから、もう寝るね』と言ってしまった。
あの時の弟はどんな気持ちだったろう。
それから一か月後、弟は死んだ。12歳の過労死。母は、何度も死んだ弟の遺骨に謝った。
『ごめんね。母さんが病気になってしまって』と。
その後妹から聞いた。
『お兄ちゃんね、ここずーっと、毎日泣いてたんだよ。なんで?って聞いたら、友達が無視するからなんだって。勉強もできないし、辛いって言ってたよ』
『一つあるって言ってたけど、それは教えてくれなかった』と。
もう一つは、二人の世話が大変で、その苦労話を私が聞いてくれなかったことでしょ?
私が悪かった。
母のせいじゃない。母がこうなったからには、弟の母替わりは私のはずだった。それを気付きもせずほっといたのは私だ。
『おねーちゃん。あのさ…』言いかけたこの言葉を聞けば良かった。この言葉は、私を一生蝕むことだろう。
〇〇〇
俺の弟は全部他人事だった。俺が次期王になるのも、特になにも思っていなかった。俺よりも優秀な弟が王になるべきなのに、知らない顔をして過ごしていた。
『俺が王になっていいのか?お前の方が何においても優秀なのに』
『いいんじゃない?というか僕は王なんかヤだね。面倒そうだし、パパの仕事を引き継ぐなんて僕にはできないしー』その時俺は、無意識に弟を殴っていた。
痛い!と大袈裟に言って、使用人を沢山呼んで俺はすぐに怒られた。
『お前、アル―に何をした!?』父はいつもより怖い顔で俺を怒った。父は俺じゃなく、弟をかわいがっていた。
『それは…アル―が…』
『何を言ってる!お前が勝手に殴ったのだろう!』父は聞いてくれなかった。何度経緯を話しても。
弟が嫌いだった。自分勝手で、他人はどうでもよくって。
そして俺は弟を殺そうとした。
ある夜。弟の部屋に忍び込んで、明日の朝に飲む薬の水に毒を仕込んだ。
弟は生まれつき病気で、毎朝起きると沢山の薬を飲んでいた。
毒は父の部屋に忍び込んで数滴採った。それを寝ている間に水の中に入れた。
弟は眠りが浅い。足が痛くなるから眠りも当然浅かった。そのため、睡眠導入剤を寝るまえに飲んでいた。だから毒を仕込むのは容易だった。
毒を仕込んで俺は部屋に戻った。
朝。起きると城中は混乱していた。空気から分かった。弟が死んだことを。
部屋から出ると、メイドが、『アンドレア様!アル―様がお亡くなりになりました!』と言った。
弟の病気は死ぬような病気じゃなかった。だから、父は解剖をしてほしいといった。
だが、医者や、使用人たちが賛成せず、結局表向きは病死とされた。
解剖がされなかったからか、毒の正体はバレることは無かった。俺は、してはいけないことをしたのだ。
そしてその後、俺はやはり次期王だと言われ続けた。俺が城から逃げ出そうと思っていた時、上手く父が養子を迎え入れた。
養子……ジャーロという新しい弟は、養子と言われたが、父の子だった。父があるメイドと作った子らしい。
そいつは頭がよかった。こいつがいれば、俺がいなくなってもいい。元々俺が城を逃げ出したら国を作るつもりだった。
王になって浮かれているあいつを殺すのもなかなか面白そうだ。
〇〇〇
今日は弟の命日。私はアンドレア様から特別な許可を得て、一日お休みをもらいました。
弟は私が殺した。だから毎年ここに来て謝らなければならない。毎年一緒に謝っていた母も、おととし死んだ。
妹も今は嫁ぎ先が決まっている。だから、私が守るべきものはもうなくなった。
弟の墓を見ながら、何度も謝る。
帰ってこない返事。それでもいい。謝ることが弟にする最後の姉としての仕事だった。
私は救われない。弟という地獄で一生さまよう。
あぁ弟よ、許しておくれ…?
「おい」びっくりして後ろを振り向く。だって、ここには誰もいなかったもの。
「ここは誰の墓だ?」アンドレア様だった。どうしてここに?
「お、弟のです。でもなぜここに?」
「お前が心配だったんだ。夜遅くに帰るなどと言っていたからな」
「なぜここが分かったのですか…?」
「色々村人に聞きまわったんだ。そうしたら、ここに行くお前を見たという声を聞いて…」
あぁ。私は罪だ。
弟を見殺しにしておいて、こんなに幸せなのだから。本来なら許されないのに。
私の頬に涙が伝う。
「どうした!?」心配そうに私の顔を覗き込む。
「私が弟を見殺しにしたのに!」アンドレア様は何も知らないのに、こんなことを言ってしまった。
何もしらないはずなのに、「お、お前は悪く、ない」と言う。あぁ、やっぱり幸せだ。
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
「おいおい!大丈夫か?とりあえず帰ろう」私の肩を抱いて、王と私は家へと帰る。
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