王様とメイド

立花すずな

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1 あるメイドの一日

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   ここは、ヨーロッパにあるアレッサンドロという国の、大きなお城。


 ここでは、毎日忙しく働いている人がいました。
 名前はオリヴィア=ルナール。髪は茶色で、目はブルー。何の変哲もないメイドです。

 彼女は、とてもとても意地悪な王様、アンドレア様のメイドです。今日も、大変な一日が始まるのです。


〇〇〇

 「おい、オリヴィア!」アンドレア様のお部屋から、大きな声が聞こえます。

 彼は、アンドレア=ロウド。金髪の短髪で、いつも目が鋭くて、いつもしかめっ面で、怒っているよう。本当はイケメンなのに。


 「はい、なんでしょう!」

 「それ洗っといてくれ」


 アンドレア様が指す方向は…「ってえぇ!?」
 綺麗な超高級ソファーには大量の服が…。しかも、ぐっちゃぐちゃだし。



 「これなんですか!」

 「服だ。見てわからないのか?」

  いやいや、そうじゃないでしょ。あぁ!最近妙に洗濯物が少ないと思ったら!


 「この量…。一回じゃ洗えないな…。どうしてこんなになる前に言ってくれなかったんですか!」

 「だったら、お前が気にすればよかったんじゃないのか?」と言う。

  確かにそうだけど…。でも溜めたのはアンタでしょ!…なんて口が裂けても言えない。


 「はは、そうですね…」苦笑するしかない。

 「なにを笑っている。そんな暇があるなら早く洗濯をしろ。量が多いんだろ?」


  は?何を仰います、アンドレア様。
 あなたが、あなたが悪いのではありませんか!こんな量見たら、絶望して笑っちゃうでしょ!私の気持ちも知らないで!
 

  「はい、承知致しました。それでは失礼します」と、ササッと、ドでかいカートを持ってきて、服を置く。
 よかった、このカートを買っていて。使い道はこれだったんだ。


 そして奴は、「あぁ。早くしてくれないか。仕事に集中できない」とまで言う。
 コイツはどこまで自己中なんだ…。呆れるよ。
 

 「すみません、あまりにも多いもので、時間がかかってしまいました。今すぐ退室しますので」と、少し嫌みも言ってみる。

 だが、「だから、お前が気付かなかったのが悪いんだろうが」と言う。


 なにぃ!このやろう!意地悪!!!
 あぁ、危なく、右手の中指を、アンドレア様に指すところだった。
 

 「それでは失礼致します。また何かありましたらなんなくお呼び下さい」と営業スマイルで言う。

 「わかっている。さっさと失せろ」
 こんにゃろー。ぶっ潰すぞ。



〇〇〇
 <オリヴィアの部屋にて>


 「はぁ…疲れた…。今日も一日お疲れ様!私!」

 ここは私の部屋。唯一この屋敷でくつろげる部屋。

 ベッドにダイブして、寝ようと思ったその時。


 「オリヴィア!」とドンドンと部屋のドアを何回も叩かれる。


 「どういたしました!」とドアを開ける。

 そして「寒い。暖炉を付けろ」と言われる。

 え?待って?暖炉?薪無いよ?なに?今割れって言うの?


 「すみません、アンドレア様、それは…」

 「はぁ…。分からないのか?薪を今すぐ割れと言っているんだ。物わかりの悪い奴だなぁ…」


 そんなの、私だって分かりましたよ!

 確かに、今日はいつもより寒いですよ?今年は例年より早く寒くなるとテレビで観ましたし…だけど、今日!しかも今!


 「お、お前なぁ。たしかに今は寒い。だけどなぁ、外に出るこっちの身にもなれよ?こっちは外に出るんだぞ?!分かるか?寒くても、部屋の中の方が、外よりまだ暖かいんだぞ?お前は、私を殺す気か!!」


 …と言ってみたいぃぃぃ!!!!

 「か、かしこまりました。今すぐ薪割して参ります」

 「あぁ、早くな。明日は、舞踏会だからな」


 「さようですね」
 って、えぇぇ!舞踏会!服!


 「だから、早くしろ。分かったか?」

 「あ、アンドレア様、大変申し上げにくいのですが…」

 「なんだ」


 「舞踏会に来ていく服を、今日洗ったものでして…。明日は、いつもの舞踏会よりも早い時間から始まりますし、しっかりと乾くかわかりません」

 「なに?なら、あの、赤いコートはないのか?あれを着ればどうにかなるだろ。暖かいしな」


 「…そちらも今日洗いました。特にコートは他の服よりも分厚いので、もっと乾くのが遅いと思います…」


 「なにぃ?じゃあ、明日はどうする!」
 いや、なんで怒んだよ。お前が悪りぃんだろが。


 「薪割が終わりましたら、どうにか乾かします!ご安心ください!」


 「本当か?しっかりやってくれよ?まったく…」
 いや、ありがとうはないのかい!(# ゚Д゚)
 

〇〇〇

 ふう。どうにか終わった。外は勿論寒かったけど、頑張って薪割した。

 そして、屋敷で一番遠い物置小屋まで行って、乾燥機も手に入れた。明日には、必ず乾く!

 よーし、怒られなくて済む!

 今は3時半!はい、充分眠れない!よ~し、こうなったら、意地でも眠ってやるぞ!ははははははははは!!



 こうして、変なメイドの多忙な一日が終わった。

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