王様とメイド

立花すずな

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28 執事

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 「そういえば、ウチって執事いませんよね」

 
 朝。ダイニングで朝食を食べているとき、突然オリヴィアが言った。

 「たしかに。メイドのオリヴィアさんが、執事をやっているような…」ルシアが言う。

 「アンドレア様。執事を雇いませんか?」オリヴィアが。


 「なぜだ。お前ひとりで出来ているだろう。十分だ。…というか、お前はメイド兼執事だが?」アンドレアは、言った。


 「いやいや、オリヴィアさんは毎日沢山のお仕事をされているんですよ?家事から来客まで…。執事がやるべき仕事もやっています。オリヴィアさんを休ませてあげようとは思わないのですか?妻なのでしょう?」


 妻、という言葉でアンドレアはハッとする。と同時にオリヴィアも赤面する。

 その二人を見ながらルシアは「いつまで照れてるんですか」と呆れる。


 「もしもオリヴィアさんが疲労で倒れてしまったらどうするんです」


 「たしかに、それはいけないな。分かった、雇おう」

 妻だと思い出した瞬間に決めるのかよ、と心でルシアは思う。


 「ありがとうございます!アンドレア様!」隣でオリヴィアは喜んでいた。



〇〇〇

 取り敢えず、街を歩いてみる。
 応募要項を国中に貼り付けるのも良かったが、急ぎなのでアンドレア自ら聞きまわることにした。


 「アンドレア様が自分と合うと思われた方を執事にして下さいね」ルシアが言う。

 「分かっている。…俺と合う人間なんて限られてるが」

 そう言うとアンドレアは歩きだした。




 約二時間経った。結局いい人材は見つからず。

 半ば諦めながら一行は歩いていた。すると。


 「刀屋だ!いつから開いていた!」突然の刀屋にアンドレアは大喜び。

 「テレビ局から貰った刀が壊れそうだったのだ。新しいのが欲しかったところだ、見ていこう」

 アンドレアが刀屋の引き戸を開ける、と―。


 「あっ!半年ぶりのお客様!」レジで寝ていた店員が言った。


 「って、アンドレア様では御座いませんか!
 …失礼致しました。ごほん。わたくし此方で刀屋を開いております、遊馬あすまと申します」
 遊馬は深く礼をした。

 「お前は日本から来たのか?」

 「左様です」


 するとルシアが、「あなた、ここで店を開くと申請していませんよね?」と言う。


 「左様でした!実は、わたくしは約一年前に此方に引っ越して来ました、日本からです。唯わたくしは日本語しかその時分からず、此方の言葉は喋れませんでした」


 「だから、申請できなかったと?」


 「はい。身と刀数本だけで参りまして…。此方の国の公用語はドイツ語だというのは承知しておりましたが、何せ話せなかったので。唯この一年で、何とか少しですが喋れるようにはなったのですが」

 「すごいじゃないですか!一年でここまでって!」オリヴィアは遊馬をベタ褒めする。


 「ですから、此方で店を開いて良い、と許可を今更ですがして頂くことは可能でしょうか?」遊馬は言う。

 「よかろう。…刀が欲しい、見せてくれ」アンドレアは刀の方が重要だった。


 二人は店の奥に消えていった。



 「アンドレア様、刀もいいけど今は執事探しの方が重要なのにねぇ」オネエなルシアが言う。

 「えぇ。でも少しくらいいいでしょう?」

 可愛いオリヴィアに言われたルシアは、「まぁ、しょうがないわね」と言った。


 30分して、二人は戻ってきた。

 アンドレアは嬉しそうな顔をして言った。

 「いや、この刀は最高傑作だ!良いのを買った。…そして」


 「遊馬が、執事になることになった」と言った。

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