涙女村

立花すずな

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 「これから作戦を行う。俺が池さんと話しておくから、その間、急いで池さんの家の中を調べろ」

 「はい!絶対に成功させます!!」

 「あぁ。慎重にな」

 二人は、二手に分かれた。




 龍弥は池さんを探す。

 「あ」

 しばらく村を歩いていたら、偶然に池さんがいた。



 「草刈ですか?手伝いますよ」

 明るく言いながら、龍弥は草を刈っている、池さんの元へ歩み寄った。


 「おお、龍弥君か。頼むよ。人手が足りなくてね」

 すると、

 「何故人手が足りないのですか?」と何も知らない顔をして笑顔で言った。

 池さんが少し考えている顔はすぐに分かった。



 「はは。実は、朝、皆の家に回って、頼んでみたんだが、みな足腰に負担がかかると言って、全て断られてな。私だって足腰に負担がかかるというのに…」とぶつぶつ文句を言っている。


 (そんなの演技だろ?)

 龍弥はすぐに分かった。


 (もうすぐでお前が村人を殺していることが分かる。村人だって、殺しているから少なくなったんだろう?)


 二人は、草刈りを始めた。


 何も知らないふりをして世間話をしながら草を刈る。


 「そういえば、食べ物はどこから来ているんですか?」

 「そうだね。よく裏山に行ったりして、動物を捕ってきたりしているよ。野菜や果物は栽培しているんだ。でも村は小さいし、ここの土は、水はけがあまり良くなくてね。沢山はとれないんだ」

 「そうですか。大変ですね」

 「僕たちが来て、村人の方々が食べるご飯が少なくなっているのではないでしょうか?それが気がかりで…」

 「それは大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。寧ろこちらは、若者がいるのが嬉しいよ。ここに若者はいないからね」

 「そうなんですか。ならよかった。そうだ、僕らも裏山に行きますよ。手伝わせてください」
 これで少しの手掛かりが…


 「大丈夫だよ。心配いらないさ」

 「そうですか?僕らは三日後の午前中に帰ろうと思うのですが、食料は大丈夫ですか?野菜は順調にとれていないんですよね?やっぱり、裏山に…」

 それを遮り池さんは言った。


 「大丈夫だよ。野菜もお肉もなんでもとれているよ。順調さ」
 その顔には怪しい笑みがうかんでいた。



 その順調は、龍弥にとっては、野菜ではなく、肉の事だと分かっていた。俺たちも殺されるかもしれない。すぐに直感した。



 先輩が池さんとなにか話している。今しかない。

 諒太は音を立てぬよう、走り、池さんの家を目指した。



 今日は朝から村人がいなかった。朝食時も、池さんと三人で食べた。何故だろうか。


 池さんの家に行くまでは、数軒の民家の前を通らなければならない。

 バレぬよう、慎重に。

 そう思っているのだが、民家の前を通っても、人気を一切感じない。


 「本当にいるのかな。まさか、僕があそこに行くのを知っている?だとしたら殺されるのか…?」

 それでもよかった。先輩だけがいれば、この事実を伝えられるのだから。


 でも死にたいとは思わないから、四方八方に振り向きながら家を目指した。

 2分ほど歩くと家が見えた。

 家のドアをそっと開け、室内に入る。


 外出しているから部屋が暗いのは当然なのだが、得体のしれぬ怖さを感じる。

 一歩進む度に、ギシギシと床が鳴る。


 どうやら古い家らしい。
 電気を点けてみると、壁や床はボロボロだった。

 ここはリビングだろうか。小さな部屋で、キッチンが続く扉がある。家具も少ない。

 だからからか、人がもう住まなくなり、廃墟化した民家のように感じる。


 キッチンに行き、水道を捻ると水は出た。
 手袋をはめて、冷蔵庫を開けると、食料は少ないが、ちゃんと入っていた。


 「なんだ?」

 奥の方にお菓子が入っていた。ポテトチップスのようだ。

 「この村にも、お店があるのか?」






 「そういえば、お茶とかはどこで買うんですか?まさか、栽培しているとは言いませんよね?」
 龍弥はふと疑問になったことを言った。


 「はは。流石にそこまでは。一か月に一度の頻度で、販売車が来るんだ。と言っても村の中には入ってこない。なにせ、村への道は、細くて狭くて、見つけるのに苦労するからね。
 一度、裏山から販売車が走っているのを、何人かで見つけたんだ。そうしたら次の月も同じ日に来ていたから、それからその日は、村人総出で外に買いに行くんだ。
 お菓子や、ジュースも買えるよ」

 「へぇ。どんなものか見てみたいな。次はいつ来ますか?」

 「すまんね。今月は来週なんだ」

 「そうですか…。残念です。疑問なんですが、販売車は、なぜここら辺に来るんですか?他にも村があったりするんですか?」

 「あぁ。少し遠くに小さな集落があって、そこには森が好きだったり、静かに暮らしたい若者が住んでいるんだ」

 「へぇ。そうなんですか」

 「あぁ。そのための販売車だから、結構最近流行りのものも買えて、いい刺激になっているよ。私たちが近くに住んでいることを知った販売車の店員が、その次から売り物の種類や、数を多くしてくれてね。本当に助かっているよ」

 「そうですか。それは良かった。どんな生活をしているのか、少し心配で」

 「はは。心配、なんて、君がすることじゃないよ。ありがとう」



 さぁ、もう少しだ。君を捕らえるのはね。
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