涙女村

立花すずな

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 「ねぇ、あの茜ちゃんって子、引き取らない?」妻のみどりが言った。

 「え、本当にいいの?」
 「だってさ、一通り話聞いたけど、茜ちゃんが住んでる村はおかしいし、もしその村の人がどうにか探し当ててきたら、3人とも危ないじゃない」

 「じゃ、どうするの?」
 「引っ越す」翠は結構大胆だ。やる事いう事全て。

 「茜ちゃんになんて言うの」

 「多分ね、あの子自身も村に戻りたくないと思うんだ。だから、きっと逃げて来たんだと思う。話をきっと理解してくれると思うよ」そして、人の気持ちが分かる。


 「そうかな…。うん、そうだね。そうしてみよう」
 僕たちは茜ちゃんが寝ている部屋へ向かった。

 「茜ちゃん…?」
 「んん…」彼女はぐっすり寝ていた。

 「寝てたとこ悪いんだけどね、お話聞いてくれる?」翠が優しく言った。
 「うん」


 
 「茜ちゃんさ、どうして村から逃げてきたの?」
 「怖かったの…」茜が泣きそうな顔で言った。

 「そうなんだね。それでさ茜ちゃんも思ってると思うんだけど、もうあの村には行かない方が良いと思うんだ」
 「うん…」

 「だからね、私たちと一緒に、どこか遠くに行かないかな。そうしたら、村のことはもう忘れても大丈夫なんだよ」

 「いいの?私邪魔じゃないの?」
 「全然!!むしろ大歓迎!!」翠は子供が好きだからね。

 「うん、そうする!」僕はとても嬉しくなった。



 
 「茜―!朝ごはん!!」
 「あ、はーい!」

 朝7時。昨日となんら変わらない朝。それが幸せ。いつものかわいい制服を着て、大好きな両親に。

 「おはよう、茜」大好きなパパ。

 「おはよう。よく眠れた?」大好きなママ。

 「おはよう、パパ、ママ!」幸せな私。

 毎日が幸せ。大好きな両親に見送られ、家を出れば…
 「茜、おっはよう!」大好きな親友がいる。

 「おはよう。咲那さな
 「冬休みなのに、ほぼ学校ってひどいよねぇ…」

 「うん、たしかに。休み欲しいよね」
 「まぁ、私は茜と一緒にいられるから幸せだけどね!」

 「なにそれ、気持ち悪~い!」
 「はあ~?本当のことだしぃ!」

 「ふふふ」私も、とっても幸せ。

 「そう言えば龍弥くんは?」
 「なんか、部活の後輩と村に行くんだって」

 「え、どこどこ?」
 「わかんない。教えてくれなかった」

 「そっかー。冬休み終わるまで帰って来るといいね」
 いま、何してるんだろ。




 「先輩?先輩?」

 「あ?ここどこだ?」目を開けると知らない部屋だった。なんというか、汚くて、嫌な雰囲気がする。

 「村長のお家ですよ。ご飯食べている間に、寝ちゃうんですもん、先輩」
 「あ、そうか…」

 「今日は、村にある宿に泊まらせてもらえるらしいです」
 「そっか。よかった」

 「疲れましたねー!でもさっきのごはんで疲れなんて取れちゃいましたよ!」
 「でもなんか、おかしくなかったか?」

 「何がです?」

 「鹿の肉と言っていたが、多分違うと思うんだ」
 「え?」

 「俺は鹿の肉を食べたことがあるんだけど、味が違う」
 「え…」

 「やっぱりおかしいんだ。俺は夜中この村を調べる。お前も来るか?」
 「は、はい!」




 「さ、ここだよ。この部屋は大きいから、二人で使ってくれ。明日の朝ごはんは7時だ。それじゃあ、おやすみ」

 「「おやすみなさい」」



 夜中2時30分。

 「おい。行くぞ」
 「わかりました!」
 静かに扉を開ける。

 「よし、誰もいないみたいだな」
 静かに、音を立てないで…

 やっとの思いで、宿の外に出られた。

 「この村意外に広いですよね」
 「そうだな。なら隠しているところもありそうだな」

 「隠す?何をですか?」
 「死体だよ。今日食べた肉の」

 「人間の肉って決めつけるんですか?」
 「そうとしかいえねぇだろ。俺は本物の鹿の肉を食ったことがあるんだ」

 「そうですね。じゃあ探しに行きましょう」




 「あぁ、外に出てしまったか…。悪い子たちだなぁ…」
 二人を見てたのは…?
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