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7、バカだからこそと作戦言い渡し

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「なぁ、よくわかんねぇけど……。『振り向かなければいい』って単純に思っちまうのが普通だけど、全員それが出来たら三崎みたいに来なくならないってのはわかる」

隆一も協力するからには、情報は共有すべきと判断したから話した。
コイツが言ってるのはアレ。振り向いた人が叫びながら連れてかれたことが増長効果を生んでしまった。最初なら声を掛け合って、一時的に振り向かないようにしようとは言えるだろう。楠木も実際にそ うしたみたいだし、一人目までは何とか再度言えても、
半数になったらそんな余裕さえ出なくなる。想像に難しくはないはずだ。

「行方不明者が一体どれだけいるのかわかんねぇ。生きてんのか、死んでるのかもわかんねぇ。順番の基準もわかんねぇ。……わかんねぇだらけで困っちまうな」

「……分からなくても、終わらせなきゃならないのにはかわらねぇだろ」

確認作業にしかならない会話でも、俺たちには必要だった。頭を整理しておく必要は十二分にある。

◆◇◆◇◆◇◆◇

「……やっときたか。楠木?」

「さ、相良先生?」

フルタイムだったはずの相良先生が何で俺たちより先に、ビル前にいるんだか。担任はしてないから、融通が利くのかな。でも、ぶっちゃけた話、どうでもいいけど。

「相良先生も協力してくれてるんだ。三崎の話は先生が聞いたことだから」

「悩んでいる生徒がいたら、支えになるのが教師だろう?楠木も安心するといい」

胡散臭いイケメンスマイルとデマカセ。素顔を知っているだけにイラっとするな。

「相良先生ってイケメンだけじゃないんだな!頼もしいぜ!」

親友まで騙されてるよ……。

「……取り敢えず、入りましょう」

この場所に寝泊まりしているから、俺が先導する。エレベーターに乗り込み、最上階のボタンを押す。
楠木はかなり緊張して、固まっている。……隆一は目を輝かせながら、そわそわしてるのが手に取るようにわかるよ。相良先生は一度来ているから、問題ないな。


━━チン


扉が開くと、そのまま正面の扉を押す。

「いらっしゃい。ようこそ、御神楽探偵事務所へ」

菖蒲さんが、滅多に座らない社長椅子に後ろ向きで座っていた。この人も何かと型に填まりたがるよな。

「お連れしましたよ、菖蒲さん。おまけつきですが」

「おまけ?」

くるりと回転してこちらを向く。

「あら、お久しぶりね。熱血少年くん」

にっこり微笑むが、当の隆一はぽかんとしていた。

「え?え?あの、校門にいた女の子のお姉さんか何かじゃ……?すげぇ美人さんだけど!」

「……いや、本人だよ。その説明はあとで。楠木」

パニクる隆一を抑え、楠木を前に出す。

「う、うん。は、初めまして!楠木真理と言います」

椅子から降りて、楠木をくるりと眺め回す。かなり失礼だよな。知ってたけど。

「真理ちゃんね。あたしは御神楽菖蒲。よろしくね~♪」

楠木の前に立ち、にっこり微笑む。
立つとわかるけど、幾ばくか菖蒲さんの方が小さい。

「所長、さんですよね。咲良を助けた人って聞いていたのでびっくりしちゃいました。こんな若くて綺麗な人だったなんて」

楠木、何で俺と菖蒲さんを交互に見てるんだよ?

「……見た目じゃ、ホントわからないですね!」

俺見て言いやがったな。流石は、隆一のダチ。楠木も大概、失礼だよ。

「んふふ♪今日日は筋肉関係ないわよぉ」

菖蒲さんも色々ダメだった……。

「いらっしゃいませ。主人の気が利かず申し訳ありません。ソファにお座りください」

更にキラキラとしたイケメンスマイルが、トレイにティーカップを乗せて登場した。

「え?あ、はい……」

楠木が真っ赤だな。なにも知らないから……、可哀想に。

「すげー!執事さん、超イケメン!」

「エドガー・クロフォードと申します。僭越ながら、不肖の菖蒲お嬢様の執事をしております。粗茶ですが」

粗茶って出すのは、日本茶!紅茶は粗茶ちげぇ!

「……翔太様は立ってらしてもいいですよ?」

「フルタイムだったもので、座らせてもらえるとありがたいですね」

どうでもいいけど、そこで火花散らさないでほしい。迷惑だから。
隆一と楠木が並んで片方に座ると、菖蒲さんが正面に座る。

「優多はこっちね」

隣をポンポンしないで。大人っぽく振る舞っても、滲み出る子どもじみた所作。『あたし』とかかなり無茶だし。
取り敢えず、騒がれる前に腰をおろした。

「では、真理ちゃん。あなたが優多に助けを求めた。間違いないわね?」

いきなり本題に入るなぁ。

「はい、咲良に言われてビックリしましたけど、確かにそうなんです。特異体質だから、とは言われました」

「そうなの、優多は特異体質だから、条件が揃ったんでしょうね。……ねぇ、真理ちゃん。あなたは妖怪を信じる?」

いきなりだな、をい!

「え?非科学的だとは思いますが……、あり得なくはないかなくらいは」

「普通はそうよね。逆に信心深くても困っちゃうし」

あんなことがあったんだから、信じてなかったとしても、あり得なくはないにくらい至るだろ。

「でも、何で妖怪なんですか?」

知らないんだから、いきなり妖怪は疑問になるよな。

「例えばの話よ。じゃ、話してくれるかしら?」

楠木は、俺たちに話したことを順を追って、再度語りだした。

『future』について、何が起きたのか等。
更に、相良先生が三崎の話をする。

「ふぅん。それは不思議ね。目的すらも特定不可能。結果が割りに合わない、陳腐さ。常人が成せることではないわね」

「お願いします!この無限のようなループをとめてください 」

「……あくまで、ここは探偵事務所。あなたに依頼料、払えるかしら?」

「あ、菖蒲さん!」

いくら何でも女子高生に……!

「……と、言いたいところだけど。先に口火を切ったのは優多だし、あたしはそういう現象をターゲットに仕事をしているの。だから、あなたはあくまで情報提供者。そこで、あなたには三崎さんの聞き込みをしてほしいの。同じ体験をした真理ちゃんになら、話してくれるんじゃない?地盤固めの意味もある。情報はより正確なものがほしいの」

……かなり悩んでるぞ。相良先生にアイコンタクトを送ってみた。あ、溜め息ついた。わかってくれたか。

「楠木、頼む。金城のためにも、おまえの協力が必要なんだよ」

「……わかりました」

イケメンは、ここの辞書に道具って付け足された気がするよ。

◆◇◆◇◆◇◆◇

楠木を相良先生に見送りを頼んだ。……決意は固いが、わかってない隆一はそこにいる。

「さぁて、……優多、スマホ出して」

「いきなりなんですか?」

「『future』に予約して」

……え?

「いきなり順番が回ってきたら、高確率で妖怪です。お仕事ですよ、優多さん」

やっぱり囮かよ!

「仕事?優多おまえ、アルバイトしてんの?」

「まぁ、そんなとこかな」

仕方なしに登録をする。あとは待つしかない。
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