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神の書を求めて
不問
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一通り自分の考えを述べた後、全員の様子を窺うも皆、一様に驚愕の表情を浮かべている。当然と言えば当然か。神とまで言われているオノタカムイと同種族かもしれない、そんな存在が今まさに此処にいるなど、通常では考えられない状況だが…。
「良いですか?
彼女がオノタカムイと同種族であるかもしれないというのは、確定ではありません。あくまでも推測の域を出ないものです」
私のこの言葉に納得がいかないのか、あちこちから声があがる。
「し…しかし…」
「あんな魔力ありえないよ」
「見たコトない」
「違うとしたら彼女は一体、何者なのでしょう?」
まだ互いに滔々と語る様を見て、それも無理は無いとは思う。しかし。
「今までの彼女の話からは嘘をついていると言った様子は見受けられませんでした。そしてその話から受けた印象としては、ニンゲンという種族が決して少ない人口ではない、というものです」
「しかし、それほどの人口であるならば、誰にも知られる事なく隠れ住むなどというのは無理があるのでは?」
「そうですね。それは私もそう思います。ですが。彼女はメイフなる神の事は知っていた。それを踏まえて、そしてこれも私の推測ですが…メイフなる神の御許に住んでいる…という可能性もあるのでは?」
「神界に!?」
「「そうなの!?」」
かなり驚愕な内容だったのだろう、皆、大声を出している。いや、ガイだけは静かだったか。しかしその表情は皆と変わらぬものだった。
「神では無いとも言っていましたし、神界では無いと思えますが、例えば…そう、此処と神界の間に何か居住出来る場があるかもしれないと考えただけです。
…まぁ、これは憶測でしかありませんが」
「なるほど…そう言った場所があるならば考えられない事も無いと言う事ですか…」
私の考えにガイは納得が言ったような反応をしている。それに反した意見を述べたのは妖精達だ。
「えー!?」
「そんなの聞いたコトなーい!」
まぁ、私だって聞いた事など無い。だから憶測の域を出ないのだが。
「では…精霊は普段は何処に存在しているのでしょう?」
「「えっ!?」」
「貴女達は精霊を信仰しているのでしょう?しかしながら、精霊は神では無い。神界にはいないはずです。では、普段は何処にいるんでしょうね?」
想像していなかったところを突かれたのだろう、驚きだけではない表情が混じっているのが解る。
「精霊様…達は…」
「何処にいるか…?」
「わ…わかんない」
「わ、わたしも知らない!」
「え!?ニンゲンって精霊様なの!?」
「え!?でも精霊様とは全然違うの!」
「で、でも…」
「精霊様が普段いる場所なんて知らない…」
「でも!そんな場所があるなら…」
「ニンゲンって精霊様と変わらないってコト!?」
「でも古代竜を追い払うとか!」
「精霊様でも出来ないよ!」
「じゃあニンゲンって…」
「精霊様よりエライ…?」
「どうしよう!?」
「知らないよー!?」
「落ち着いてください」
うっかり妖精達の言い分を聞いていたら段々と凄い話になってきてしまった。
しかし。
精霊の住む場所が解らないと言うのを考えるならば、やはりそう言った場所がある可能性も高いのではないだろうか。
「あくまでも可能性がある、というだけです。良いですか?」
「うん…」
「そ、そうだね…」
納得は出来ないのだろうが、答えが出ない事を話していても仕方ないと思ったのか、それとも単に考えるのを放棄したのか、先程とは違って静かになっている。
ふむ。先ずはこんなところでしょうか。
「さて。
色々と思うところはあるでしょうが、彼女の情報に関しては他言無用、極秘でお願いします。そして彼女自身にも、今、貴方達が彼女に関しての情報を得たという話は極秘でお願いします」
「それは…今までと同じ態度で接しろと言う事でしょうか?」
ガイが解りやすく返してくる。
「そうです」
「ど、どうしてですか…?」
同様に簡単に返答をすると、今度はレオンから疑問が上がる。
「彼女から貴方達に、別な情報が漏れる事を期待して…ですかね」
「別な…?」
「ええ。今の所、彼女が嘘をついている様子はありません。ですが、隠している事はあるのではないかと思っています。
その隠し事が今後、彼女の種族と諍いの元になるものでなければ構いませんが、そうでは無かった場合、出来るだけ取り除いておきたいですからね」
「な、なるほど」
「今は変装魔法で妖精と同種族という事になっていますし、私では得られなかった話が出てくるかもしれませんからね」
「「おおー!」」
「ジリス、悪い人みたい!」
「悪い人もカオマケだね!」
!!!!!
わ、悪い人って…。
「おいぃぃっ!失礼な事を言うなっ!」
レオンが必死にそんな事は無いと言ってくれているが…そんな事初めて言われた……。これでも人を助ける司祭なのに……。悪い人って…。
「良いですか?
彼女がオノタカムイと同種族であるかもしれないというのは、確定ではありません。あくまでも推測の域を出ないものです」
私のこの言葉に納得がいかないのか、あちこちから声があがる。
「し…しかし…」
「あんな魔力ありえないよ」
「見たコトない」
「違うとしたら彼女は一体、何者なのでしょう?」
まだ互いに滔々と語る様を見て、それも無理は無いとは思う。しかし。
「今までの彼女の話からは嘘をついていると言った様子は見受けられませんでした。そしてその話から受けた印象としては、ニンゲンという種族が決して少ない人口ではない、というものです」
「しかし、それほどの人口であるならば、誰にも知られる事なく隠れ住むなどというのは無理があるのでは?」
「そうですね。それは私もそう思います。ですが。彼女はメイフなる神の事は知っていた。それを踏まえて、そしてこれも私の推測ですが…メイフなる神の御許に住んでいる…という可能性もあるのでは?」
「神界に!?」
「「そうなの!?」」
かなり驚愕な内容だったのだろう、皆、大声を出している。いや、ガイだけは静かだったか。しかしその表情は皆と変わらぬものだった。
「神では無いとも言っていましたし、神界では無いと思えますが、例えば…そう、此処と神界の間に何か居住出来る場があるかもしれないと考えただけです。
…まぁ、これは憶測でしかありませんが」
「なるほど…そう言った場所があるならば考えられない事も無いと言う事ですか…」
私の考えにガイは納得が言ったような反応をしている。それに反した意見を述べたのは妖精達だ。
「えー!?」
「そんなの聞いたコトなーい!」
まぁ、私だって聞いた事など無い。だから憶測の域を出ないのだが。
「では…精霊は普段は何処に存在しているのでしょう?」
「「えっ!?」」
「貴女達は精霊を信仰しているのでしょう?しかしながら、精霊は神では無い。神界にはいないはずです。では、普段は何処にいるんでしょうね?」
想像していなかったところを突かれたのだろう、驚きだけではない表情が混じっているのが解る。
「精霊様…達は…」
「何処にいるか…?」
「わ…わかんない」
「わ、わたしも知らない!」
「え!?ニンゲンって精霊様なの!?」
「え!?でも精霊様とは全然違うの!」
「で、でも…」
「精霊様が普段いる場所なんて知らない…」
「でも!そんな場所があるなら…」
「ニンゲンって精霊様と変わらないってコト!?」
「でも古代竜を追い払うとか!」
「精霊様でも出来ないよ!」
「じゃあニンゲンって…」
「精霊様よりエライ…?」
「どうしよう!?」
「知らないよー!?」
「落ち着いてください」
うっかり妖精達の言い分を聞いていたら段々と凄い話になってきてしまった。
しかし。
精霊の住む場所が解らないと言うのを考えるならば、やはりそう言った場所がある可能性も高いのではないだろうか。
「あくまでも可能性がある、というだけです。良いですか?」
「うん…」
「そ、そうだね…」
納得は出来ないのだろうが、答えが出ない事を話していても仕方ないと思ったのか、それとも単に考えるのを放棄したのか、先程とは違って静かになっている。
ふむ。先ずはこんなところでしょうか。
「さて。
色々と思うところはあるでしょうが、彼女の情報に関しては他言無用、極秘でお願いします。そして彼女自身にも、今、貴方達が彼女に関しての情報を得たという話は極秘でお願いします」
「それは…今までと同じ態度で接しろと言う事でしょうか?」
ガイが解りやすく返してくる。
「そうです」
「ど、どうしてですか…?」
同様に簡単に返答をすると、今度はレオンから疑問が上がる。
「彼女から貴方達に、別な情報が漏れる事を期待して…ですかね」
「別な…?」
「ええ。今の所、彼女が嘘をついている様子はありません。ですが、隠している事はあるのではないかと思っています。
その隠し事が今後、彼女の種族と諍いの元になるものでなければ構いませんが、そうでは無かった場合、出来るだけ取り除いておきたいですからね」
「な、なるほど」
「今は変装魔法で妖精と同種族という事になっていますし、私では得られなかった話が出てくるかもしれませんからね」
「「おおー!」」
「ジリス、悪い人みたい!」
「悪い人もカオマケだね!」
!!!!!
わ、悪い人って…。
「おいぃぃっ!失礼な事を言うなっ!」
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