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神の書を求めて
vs古代竜2
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竜の口の中で渦巻く何かが大きくなっていくのが見える。つまりはもう一度、アレが来るという事だ。
ジリスさんのほうへ目をやると、視線をアチラコチラと動かしながら、回復か防御魔法かと呟いている。
たぶん、どちらが先でも足りないのだ。
体力も防御するための術も時間も。
ダメだ。
このままじゃあ間に合わない。
でも、自分に出来る事なんて無い。
来る。
ダメ。ダメダメ。
間に合わない。
光が来る。
ヤメて。ヤメて。
ヤメて、ヤメて、ヤメて!
『ヤメてえぇぇぇぇっ!!!』
ただ叫んだ。
次の瞬間には世界が真っ白になっていた。
「ジリスさん、アレ、アレ見てください」
そう言われて視線を流したその先にいたソレを見て、まさかという気持ちが沸いてくる。
話には聞いていた。たがそれは有り得ないと、そう思っていたのだ。ただの噂、ただの勘違いだろうと。
まさか本当に古代竜がこの大陸にいるだなんて。
ボンヤリしている場合では無い。
ガイとレオンに声をかける。
彼女──アイリンの方をチラリと確認するも状況が解っていないのか、驚きはすれども恐怖は無い様だ。
だが、こんな状況は有り得ないのだ。
そう、有り得ない。
だからこそ、最悪の事態を想定して動かなければならない。
此処は平原だ。隠れられる様な所は無い。仮に逃げ出すにしても今からでは間に合わない。どうしても追いつかれる。ならば、如何にか間を作りながらの撤退。これしかない。
杖に魔力の石の効果を上乗せして、防御系、退避用の基本のステータスを上げておく。
そして念の為、対策を指示してから、気持ちを落ち着けるために大きく息を吐いたところで彼女から声をかけられた。其方に目をやると、不安そうな顔で此方を見ている彼女と目が合う。…不安そうにしているその理由も想像がつく。彼女には以前、古代竜が彼女と同じ古代魔術言語が話せると言ってあるのだ。話し合いをすれば良いのではないかと思っているのだろう。
私だってそう思う。通常であれば。
たが今は非常事態だ。
その考えが正しいと思い込んでは駄目だ。よく考えて行動しなくてはならない。そこまで考えたところでソレは目の前まで迫っていた。
暴風を纏って降り立って来たその竜は、正に伝承どおりの姿だった。黄金色の体に二本の角、巨大な翼。
違うのはその目だろうか。
本来ならば理知的で濃い琥珀色の瞳だという事だったはずだが、今、目の前にいる竜は禍々しさを湛えた紅い瞳をしている。
紅い瞳──つまりは状態異常を示しているのだ。
有り得ない。
この世界の最強種である古代竜が、何らかの状態異常。全てに於いて高い耐性を保つとされているこの竜が状態異常だなんて。
念の為、話し合いを試みてみるも返答は無し。それどころか威圧の咆哮が来た。有り得ない。知恵持たぬ下級の竜であるなら、それもおかしくはない。だが目の前にいるのは叡智ある者の代表とも言って良い古代竜だ。上位種の竜であってもいきなり威圧などという事はしない。彼等は自らの種に高い誇りを持っている。故に下位の者がその威厳に平伏す事はあっても、いきなり威圧を放つ事などほぼ無いのだ。
この状況はマズイ。
目の前の竜は状態異常に少しでも抗おうとしているのか、体を大きく揺らしている。
今、この時に撤退すべきか?それとも竜の状態異常を解除出来るか試すべきか?後々を考えれば状態異常を如何にかするほうが良い。だが、あの古代竜を状態異常にするようなモノを、自分が如何にか出来るだろうか?
逡巡した時間は長くなかったと思う。
だが打てる手を潰えさせるには充分だったのだろう、竜の口元に魔力が溜められていくのが見えた。
竜の咆哮が来る。
「全員、私の側に!早く!」
散開していた二人が盾になるべく私のすぐ前に立つ。それを確認してから急いで防御魔法の重ねがけをする。勿論、強度を上げるために範囲を最小に狭めたモノだ。それでもどれ程保つかは解らない。だが即死さえしなければ回復は出来る。そう、即死さえしなければ良い、そう思って。
その考えすら甘かったのだと吹き飛ばされてから痛感した。いや、即死は免れたのだから想定通りと言っても良いのかもしれないが、決して喜べるものでもない。すぐに回復魔法をかけたが、それでも盾となっていた二人は動けない。自分も起き上がるのがやっとという状態だ。もう一度回復魔法を──そう、思ったのだが全体にかけるには魔力が足りない。咄嗟にマジックボックスの中にある魔力回復薬を取ろうとしたところで、彼女に気付いた。どうやら無意識にポケットを庇っていたらしい。
心配そうな顔の彼女に怪我などしていないかを確認する。大丈夫だったらしい。自分も大丈夫だ。そう、生きているのだから。取り敢えず単体用の回復魔法をかけてから、魔力回復薬を飲む。だが足りない。量もだが、時間も。魔力回復薬は即効性ではない。回復までに十分程かかるのだ。しかもこの小瓶では全体回復魔法一回分程しか魔力は回復しない。小瓶はあと一本あるが、何に使うべきかよく考える必要がある。
見れば古代竜はまたも体を大きく揺らしている。
今の内に。そう、今の内に古代竜の状態異常を如何にか出来れば。状態異常解除の魔法は最上級までのを取得している。それで解除出来るかは解らないが、何方にせよ、回復魔法や防御魔法をかけるには魔力が足りないのだ。博打的ではあるが、これが一番マシに思える。
そう、今の内に──。
だが、またもその判断は遅かったのだろう。竜の口が開いていくのが見えた。咄嗟に周りを見る。今からでも間に合うのか?どうする?それとも回復するか、防御に変えるか?
そして。
それが放たれるまでの間は一瞬だった。
それと同時に彼女の声が聞こえて──。
ジリスさんのほうへ目をやると、視線をアチラコチラと動かしながら、回復か防御魔法かと呟いている。
たぶん、どちらが先でも足りないのだ。
体力も防御するための術も時間も。
ダメだ。
このままじゃあ間に合わない。
でも、自分に出来る事なんて無い。
来る。
ダメ。ダメダメ。
間に合わない。
光が来る。
ヤメて。ヤメて。
ヤメて、ヤメて、ヤメて!
『ヤメてえぇぇぇぇっ!!!』
ただ叫んだ。
次の瞬間には世界が真っ白になっていた。
「ジリスさん、アレ、アレ見てください」
そう言われて視線を流したその先にいたソレを見て、まさかという気持ちが沸いてくる。
話には聞いていた。たがそれは有り得ないと、そう思っていたのだ。ただの噂、ただの勘違いだろうと。
まさか本当に古代竜がこの大陸にいるだなんて。
ボンヤリしている場合では無い。
ガイとレオンに声をかける。
彼女──アイリンの方をチラリと確認するも状況が解っていないのか、驚きはすれども恐怖は無い様だ。
だが、こんな状況は有り得ないのだ。
そう、有り得ない。
だからこそ、最悪の事態を想定して動かなければならない。
此処は平原だ。隠れられる様な所は無い。仮に逃げ出すにしても今からでは間に合わない。どうしても追いつかれる。ならば、如何にか間を作りながらの撤退。これしかない。
杖に魔力の石の効果を上乗せして、防御系、退避用の基本のステータスを上げておく。
そして念の為、対策を指示してから、気持ちを落ち着けるために大きく息を吐いたところで彼女から声をかけられた。其方に目をやると、不安そうな顔で此方を見ている彼女と目が合う。…不安そうにしているその理由も想像がつく。彼女には以前、古代竜が彼女と同じ古代魔術言語が話せると言ってあるのだ。話し合いをすれば良いのではないかと思っているのだろう。
私だってそう思う。通常であれば。
たが今は非常事態だ。
その考えが正しいと思い込んでは駄目だ。よく考えて行動しなくてはならない。そこまで考えたところでソレは目の前まで迫っていた。
暴風を纏って降り立って来たその竜は、正に伝承どおりの姿だった。黄金色の体に二本の角、巨大な翼。
違うのはその目だろうか。
本来ならば理知的で濃い琥珀色の瞳だという事だったはずだが、今、目の前にいる竜は禍々しさを湛えた紅い瞳をしている。
紅い瞳──つまりは状態異常を示しているのだ。
有り得ない。
この世界の最強種である古代竜が、何らかの状態異常。全てに於いて高い耐性を保つとされているこの竜が状態異常だなんて。
念の為、話し合いを試みてみるも返答は無し。それどころか威圧の咆哮が来た。有り得ない。知恵持たぬ下級の竜であるなら、それもおかしくはない。だが目の前にいるのは叡智ある者の代表とも言って良い古代竜だ。上位種の竜であってもいきなり威圧などという事はしない。彼等は自らの種に高い誇りを持っている。故に下位の者がその威厳に平伏す事はあっても、いきなり威圧を放つ事などほぼ無いのだ。
この状況はマズイ。
目の前の竜は状態異常に少しでも抗おうとしているのか、体を大きく揺らしている。
今、この時に撤退すべきか?それとも竜の状態異常を解除出来るか試すべきか?後々を考えれば状態異常を如何にかするほうが良い。だが、あの古代竜を状態異常にするようなモノを、自分が如何にか出来るだろうか?
逡巡した時間は長くなかったと思う。
だが打てる手を潰えさせるには充分だったのだろう、竜の口元に魔力が溜められていくのが見えた。
竜の咆哮が来る。
「全員、私の側に!早く!」
散開していた二人が盾になるべく私のすぐ前に立つ。それを確認してから急いで防御魔法の重ねがけをする。勿論、強度を上げるために範囲を最小に狭めたモノだ。それでもどれ程保つかは解らない。だが即死さえしなければ回復は出来る。そう、即死さえしなければ良い、そう思って。
その考えすら甘かったのだと吹き飛ばされてから痛感した。いや、即死は免れたのだから想定通りと言っても良いのかもしれないが、決して喜べるものでもない。すぐに回復魔法をかけたが、それでも盾となっていた二人は動けない。自分も起き上がるのがやっとという状態だ。もう一度回復魔法を──そう、思ったのだが全体にかけるには魔力が足りない。咄嗟にマジックボックスの中にある魔力回復薬を取ろうとしたところで、彼女に気付いた。どうやら無意識にポケットを庇っていたらしい。
心配そうな顔の彼女に怪我などしていないかを確認する。大丈夫だったらしい。自分も大丈夫だ。そう、生きているのだから。取り敢えず単体用の回復魔法をかけてから、魔力回復薬を飲む。だが足りない。量もだが、時間も。魔力回復薬は即効性ではない。回復までに十分程かかるのだ。しかもこの小瓶では全体回復魔法一回分程しか魔力は回復しない。小瓶はあと一本あるが、何に使うべきかよく考える必要がある。
見れば古代竜はまたも体を大きく揺らしている。
今の内に。そう、今の内に古代竜の状態異常を如何にか出来れば。状態異常解除の魔法は最上級までのを取得している。それで解除出来るかは解らないが、何方にせよ、回復魔法や防御魔法をかけるには魔力が足りないのだ。博打的ではあるが、これが一番マシに思える。
そう、今の内に──。
だが、またもその判断は遅かったのだろう。竜の口が開いていくのが見えた。咄嗟に周りを見る。今からでも間に合うのか?どうする?それとも回復するか、防御に変えるか?
そして。
それが放たれるまでの間は一瞬だった。
それと同時に彼女の声が聞こえて──。
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