物語は突然に

かなめ

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神とは

オノタカムイの書2

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「オノタカムイの書…?!」
「はい。と言っても、写本なのですが」
ジリスさんが手に持つ。真っ黒に彩られ金の二重線で縁取られている、表紙には何も書かれていない、シンプルなソレがオノタカムイの書?!
「国の図書室にあった物を借り受けてきたのです。時空魔法に関して記述があるかもしれないと思いまして」
「えっ!」
それって、私のために借りてきてくれたって事?
「ただ、最重要書財なので借りられるのは一日だけなのですが…それでも良ければ読みますか?」
「読みます!」
私の返事を聞くと、更にニコッと笑みを強くしてを机の上に置いてくれた。何これ、スッゴイ。スッゴイ物が出てきた!
「もし宜しければ、あとで私にも内容を聞かせてくれませんか?私はその…読めないもので」
苦笑いしながらそう言うジリスさん。
「はいっ!私で良ければ喜んで」
わざわざ借りてきてくれたんだもん。それくらいなんて事ないよ!これ…これは、もしかして!?帰る方法とか乗ってる可能性も大なんじゃないの!?期待しちゃうよ?!ヤッバーイッ!ふぉぉーーーぅっ!
「あの…」
「はいっ!何でありましょうか、ボス?」
「えっ?」
おっと、しまった。興奮しすぎて変な言葉遣いになっちゃったよ。
「あの、今、何て…?」
「いやいや、何でも無いです。それよりも何でしょうか?何か言いかけてましたよね?」
勢いで誤魔化す。
「え?あ、はい。あの、アイリンさんが其れを読んでいる間、此処で一緒に過ごしていても良いですか?」
「ホワイ?」
何故ー?!それだと、ちょっとお試しとか出来ないやーん!
「お許しが出て良かったです。その写本は誰も読めなくて…」
「はいいぃ!?」
「はい?」
「あっ、えと、あの、なんていうか、その…」
あぁ、ヤバイ。もしかして〝why〟と〝はい〟を聞き間違えられた?!いや、私が思わず〝ホワイ?〟とか言っちゃったからだけど!
「如何かしましたか?」
「イイエ、ナンにも……」
私のバカ…っ。くっそぅ!何してるんだ、私ぃ!あ゛ぁ゛…っ、くぅ。仕方ないか…。
自分のバカさ加減にノタマワりたいところをグッと我慢して。
取り敢えず読むか…。
何も書かれていない表紙をめくる。と、中表紙に一言。

【とかくや】

とかくやって何だし?いきなり意味が解らん。まぁ、まだ中表紙だし…。先行こ、先。

ペラリ、ペラリ、

取り敢えず十数頁読んでみた。
感想はと言うと…これ、日記なんじゃないかって事。
最初の数頁は漢字ばっかりの漢文?だったけど、途中から仮名も混じってきたけど、これ古語だよね?!古語とかメンドイな、もう!しかも十二頁目くらいには短歌っぽいのが…。書かれてる内容も変な耳した女がいたとか、竜と賭けして勝ったらお酒貰ったから、御礼に日本語教えてやったとかって、これはもしやの…?読めない部分もあるけど、これは…。
何これ。オノタカムイって、もしかして本当に日本人…?
いや、それよりこの内容をジリスさんに話して聞かせるとか!わざわざ話して聞かせるような内容じゃないんだけど、どうしたらいいの?!
いや待て!まだ十数頁だ。まだまだ先は長い。きっともっと何かいい感じの事も書かれているに違いない!そうであってほしい!そうでないとむしろ困る!
ジリスさんのあの期待の眼差しを裏切ったらアカーン!
頑張ってよ、オノタカムイ!
心の中で激しく叫びながらも、続きを読む私だった…。






いい加減、もう読むの疲れてきた…。日記だよ、日記、ただの日記。まぁ、アレだね。たまに、なんっじゃ、それ!?とか言いたくなるような内容のは、きっと神様とか呼ばれちゃう事になった一端だったりするんだろうなとは思うけど。
けど、ですよ?
半分ほどまで読んできて、見た事の無い食べ物を食べたとか、鬼も目じゃない化け物がいたとか、色々とやらかしちゃったよ的なのとか、たまに閻魔様への愚痴とか、どうでもイイ事ばっかり。
しかも古語で!翻訳しながら読むのメンドイのに!
半分…まだ半分だよ。長いよ。ずっとこんな感じだったら心折れるよ?
溜息と共にペラリとまた頁をめくる。
「ん………?」
(はざまはたゆたう、ゆえにまどう、こはぜんであるが、ぜんはこにあらず…?)
また意味の解らんのが出てきた。たまにあるこの意味の解らないのは何だろう?しかも文章は全部違う。どういう事?どう見ても日記じゃあないよね…?
…………………。
何か引っかかるんだけど、何なのか解らない。書き方もおかしいし、何か意味がありそうなんだけど…。
解らん。
取り敢えず先を読むか。読み進めていけば何か解るのがあるかもしれないし。
ペラリ……………ペラリ……………
ののしるとはをかしって何だしー?!一頁まるっと使ってコレだけとか、意味が解んないよ?!
やっぱりさっきのも意味なんて無いのかもしれない。
マジでオノタカムイって何なの?

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