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第一章 全ての始まり 『種族の集まる国 ガイア』
第五十三話 『初めての魔王襲来』
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「ナンダコレハー」
ダンジョン攻略を終えた俺達を待ち構えていたものは、ガイアの街から上がる黒煙とモンスターの軍勢だった。
(いや、流石に二回目だと棒読みにもなるよ。決して俺が薄情な訳ではない。はずだ!)
「はぁ、本当にこの国はモンスターに襲われるのが好きだな。まぁ、今は俺の国だから助けるけど。とりあえず情報収集だな。皆、街の人を助けながら王城に向かうぞ」
なんて他人事のように言うが内心、焦っている。俺の治める国に誰がこんなことを。そんな怒りもある。だが、どれを優先して良いのか分からず、今は淡々と指示を出すしかないのだ。
「「「はい!」」」
「グリモアはとりあえず魔導書の姿に戻ってくれ。もしもの時には頼んだぞ」
「Yes,マスター」
グリモアは今回は光ことなく魔導書の姿に戻り俺の左手に収まった。大きさは少しでかめの辞書位だが、問題はない。
「よし! 行くぞ!」
俺を先頭に俺達は王城を目指し、あゆみを進めだした。
「きゃぁぁぁ~~~助けて~~!!」
「うぇぇぇ~~ん、お母さーん」
「おい! しっかりしろ! 死ぬんじゃない!!」
街は燃え、人々はパニックに陥り、まるで地獄のようだった。
「皆、大丈夫か」
俺は国の人々に声をかけながら、男の人に襲いかかっていたゴブリンを斬り伏せる。
「あ、え? 国王様!? あの、有難う御座います!」
「礼はいい。それよりこれはいったいなにががあったんだ?」
「ま、魔王が、魔王が攻めて来たんです!!」
「魔王……か…………」
(これはまたRPGなキャラが出てきたな。確かこの世界の魔王は魔王領『グラシャ』を納める者の事を言うんだったよな。特に世界征服を企んでいるとか、そんな事は無かったはずなのだが。)
「それで、その魔王は今どこにいる」
「魔王は街をモンスターに襲わせてその間に国王様の王城に向かったようです」
「そうか。情報をありがとう」
俺はそう言って頭を下げる。それを見てぎょっとした男は、
「い、いえ、私なんかに感謝の御言葉はもったいないです。頭をあげて下さい。国王様」
と、慌てて言った。俺が頭を上げるとほっとしたようで、「それでは私は安全な所に避難しますので、国王様もどうかご無事で」そう言って男は街の奥に走って行った。俺はそのあとも国民を助けながら先に進み、広場に着いた。
「俺はこれから一人で王城に向かう。スカーレット達はこの国の人達をモンスターから守ってくれ」
「はい、分かりました」
「皆、死なないでくれよ。お前達の誰か一人でも死んだら、俺はこの世界から、1つ国を消すことになる」
「ユウ様もどうかお無事で」
「あぁ」
俺はそうしてスカーレット達と別れ、グリモアを左手に刀を右手に持ち、王城に向かった。
───────────────────────
王城に着いた。外から見た限りではどこも破壊されておらず、綺麗なままだったが、中から異様な気配を感じた。
(この異様な気配が魔王か。それに、他にも気配が4つある。これは魔王の部下のものか。でも、この魔王の気配どこかおかしいような……)
何か引っかかる所があったが気のせいだろう。と王城に入った。
(気配はどうやら、玉座の方から漏れているな。)
俺は玉座の間に向かった。不思議な事に王城にはモンスターが一匹もいなかった。確かに感じた気配は5つだし当たり前なんだが、これは少しおかしいな、俺はそんな異様な雰囲気に警戒心を高めながら先に進み玉座の間の扉まで来ていた。開けた途端に部屋の中から攻撃が来るかもしれないと思い、魔法対策にグリモアを広げた。
そして俺は扉を仰々しく、重くゆっくりとした動きで開いた。
中には見た目十三歳位の少女と二十歳位の男女四人がいた。しかしその五人全員が人間では無いことはその姿を見ればあきらかだった。真ん中に立っている少女は背中から黒色の翼が生えており、尻尾もある。だが、その翼と尻尾の見た目は鳥や猫のものと言うより悪魔の物と言った感じだった。他の四人も人間ではあり得ない特徴があった。
しかしやはり一番目を引くのは真ん中にいる少女だった。その理由は至極簡単で5人の中で誰よりもオーラがあり、5人の中で誰よりも綺麗だったからだ。他の男女4人も顔は整っており、誰がみても美男美女だ。
だが、少女はその中でも群を抜いていた。顔は当たり前のように整っており、艶やかな枝毛の一本もない綺麗な黒髪、二つの明るい紫色の瞳は、宝石のようだ。例えるならばアメジストのような色だ。身長は160センチにも満たないがそれが更に可愛らしさを際立たせている。
そして、顔は整っていると言ってもまだ幼さを残している。それなのに何処か妖艶な大人な雰囲気を纏っており、本当に文字通り絶世の美少女だった。
そんな、彼女に目を奪われていた俺だったが、直ぐに意識のズレを戻し言葉をぶつけた。
「真ん中のお前が……いや、貴女が魔王、ですか?」
「そうだ。そなたの言う通り妾が魔王だ」
魔王は俺の質問に答えた。
(どうやら、話は通じる相手のようだな。)
「では、妾も質問する。そなたはいったい誰だ」
「名乗るのが遅れたな。俺はこの国の国王、ユウ・レス・ウィーンだ」
「そうか、そなたが新しい国王か………名乗り遅れた妾は魔王領第52代目当主シャーミア・レヴィア・シュヴァルツ。魔王だ」
「ご丁寧にどうも。で、今回俺の王国に攻めて来た訳を教えて貰おうか」
俺は他の4人の名前をあえて聞かず話を続けた。あまり話の通じる相手じゃなさそうだったからだ。
「それは………そうですね。話がしたかった、からでしょうか?」
「いや、聞かれても」
「それが、妾も何処から話したものかと、何処から話しましょうか? ………うーん」
魔王が可愛らしく悩んでいる、その時!いきなり俺目掛けて魔法が飛んできた。中級火魔法『ファイヤーランス』だ。俺は咄嗟にグリモアを前に突き出す。すると、瞬く間に魔法はグリモアに吸い込まれ消滅した。
「これは……どう言うつもりだ」
「いや、妾は何も…………何をしているのだ──そなた達……………っ!」
魔王レヴィアが、部下を注意しようと、後ろを向くと同時、部下の一人が明らかに魔法で強化された肉体で魔王を蹴り飛ばした。突然の事に魔王は反応出来ず吹き飛ばされ俺側にあった壁にぶつかる。
「な、何を………」
「はぁ、さっきから、何を仲良くお喋りしているんですか。本当に使えませんね。これだったら、もっと早めに始末しといてもよかったかもしれませんね。まぁ、今からそこの国王もろとも、消せば良いだけの話ですが」
部下の発言に魔王は驚きのあまり喋ることが出来ないようだった。俺ははそんな状況を見かねて、
「これはいったいどう言う事なんだ?」
と、質問した。
「今から死ぬやつに何を話しても意味はありませんが、冥土の土産に教えてあげましょう」
(冥土の土産って……何処の雑魚キャラだよ)
俺は内心そんな事を考えバカにしていたが、表には出さず話を聞くことにした。
「私達はねぇ、先代魔王から、その名前と身分を受け継いだこのガキが気に入らなかったの。だから今ここでこのガキとお前を殺せば二つの国を同時に支配出来るって考えたわけ」
「俺と魔王を殺す、か」
「だから、国を支配するためには国の人間に恐怖を植え付ければ簡単に支配出来る」
「って事は外のモンスターは魔王じゃなくてお前達が勝手にやったと、そう言う事だな」
「そう言う事。それじゃあお喋りはここまでよ。死んでちょうだい」
そう言って魔王の元部下どもは一斉に襲いかかってきた。その四人の攻撃が当たる刹那、ユウの姿が蜃気楼のように消えた。魔王の元部下どもは驚きの声を上げ、回りを見渡す。
「ど、何処にいきやがった!」
すると、国王の姿だけでなく魔王の姿まで消えている事に気がつく。
「あいつら逃げやがった。探せ!」
その言葉と同時に玉座の間には誰もいなくなり静寂に包まれた………
「………ふぅ、危なかったな」
俺は現在魔王を抱えて王城の自室に逃げてきていた。
「ここなら、結界が張ってあるしバレないだろう」
「なん………た……け……」
「ん、なんだ? 声が小さくてよく聞こえない。しっかりと言ってくれないか」
「なんで………妾を助けたんだ? 妾なんか助けないで一人で逃げれば良かっただろう?」
「は? なんでって、今回の襲撃はあいつらが勝手にやったことなんだろ。だったら、お前は関係ないってことだ。そんな関係の無い奴を見殺しにしたら後味が悪いだろ。だから、助けた。それだけの事だ。それに逃げた訳じゃない。俺はこれからあいつらを殺す。俺の家で俺の国で無茶苦茶してくれたからな」
「戦う? ダメだ!! あの四人は強い。魔王領でも、最強の四人で四天王の称号を持っている。そなたが戦って勝てる相手ではない!」
「なんだ、心配してくれてるのか。でも、大丈夫だよ。俺はあの程度の奴らには負けない」
「そなたはあの四人の強さを分かってない。お願いだ、戦わないでくれ。妾を助けてくれたそなたに死んで欲しくないんだ」
「俺は死なないよ。それに狙われてるのは、俺だけじゃなくて魔王もなんだろ? 俺はここでお前を見捨てて一人で逃げる位なら死んだ方がマシだ。まぁ、俺は死なないけどな。だって俺はここで尻尾巻いて逃げる気はない。俺はアイツらを倒す。俺はこの国の国王だ。一応な。国民や大切な人達を守らないといけない。だから、俺はこの国を守るために戦う。それに魔王の事も俺が守ってやる。絶対にな」
「妾を……守る?」
「そうだ、守ってやるよ。それに、普通、君みたいな可愛い子を守るのは男として当然の事だからな」
「か、可愛い?!」
魔王は綺麗な白い肌を朱に染める。まるで茹で上がったタコみたいだ。
俺はそんな魔王の頭に右手を持っていき優しく撫でる。
「だから、ここで待っていてくれ。絶対に帰ってくるから。まぁ、初めて会ったばかりの俺にこんな事を言われても嬉しくないかもしれないけどな。すまん。そこは我慢してくれ」
俺はシャーミアの反応が可笑しくてどこか可愛くて何故かいとおしくて笑みを浮かべる。優しく温かい太陽のようなとまではいかないにしても、心からの笑顔を。それを見たシャーミアの鼓動は波打つように速くなる。
「で、でも、妾は………」
大きく波打つ鼓動のせいでうまく言葉が出ない。それでも、この胸の高鳴りは、ユウに言葉を伝えないといけないと急かす。
「………妾の仲間がこんな事をしたのだったら、妾も戦いに参加したい。参加出来ないにしても事の全てを見ておきたい。………ダメか?」
シャーミアは俺を上目使いで見上げる。
「それは………そうだな。だったら一緒に行こう。俺が守る。これは絶対の約束だ。だから、安心してくれ」
「う、うん!」
その時のシャーミアの笑顔は太陽よりも眩しく、どんな芸術品よりも綺麗だった。
(これは、また、人を好きになってしまったかもしれないな。はぁぁぁ~~あ。まったく俺って奴はどうしようもないな。)
「それじゃあ、行こうか魔王………あ、えっと魔王や君って呼ぶのはなんかよそよそしいから、シャーミアって呼んでもいいか?俺の事はユウって呼んでくれればいいから」
「あ、あぁ、良いぞ! 是非そう呼んでくれ! 妾もそなたに言われた通りこれからはそなたの事をユウって呼ぶことにするからな」
そう言って笑うシャーミアの顔は見た目通りの可愛い女の子だった。
「よし! なら、今度こそ行くぞ! シャーミア」
そうして俺達は玉座の間に向かった。
(これは、やっぱり好きになっちまったようだ…………ごめんな。スカーレット、それにライム。俺、この戦いが終わったらシャーミアに告白するかもしれない。)
サラリと死亡フラグを建てるユウだった。
「─────何処に行きやがったー! 俺はここにいる出てきやがれ!!」
俺は玉座の間に戻り大声で叫んだ。すると、何処からか音もなく四天王の四人が現れた。
「フッ、やっと殺される気になって出てきたか。まぁ、素直に出てきたその勇気だけは褒めてやろう」
「何処までも上から目線だな、お前。それに誰が殺される気になんかなるかよ。さっきのはシャーミアが危なかったから一時的に戦闘を回避しただけだ。そもそもお前達は自分と相手との力量の差も分からない程の雑魚なのか? 力の差を見極めるなんて野生の動物でも出来る事だぞ」
「なんだとぉぉ~~~! それはこっちのセリフだ! 今からその喉を引き裂いて生意気な口を聞けなくしてやる」
(まさか、こんな安い挑発に乗るとは…………やはり雑魚だったか。)
俺は挑発に乗って怒りを露にしこちらに向かって来るリーダー格の魔族の男を鞘に納めた状態の刀を思いっきり振り抜き吹っ飛ばした。
「あれ? おかしいな。ダンジョンのモンスターの方がまだ強いぞ。もしかして、本当に弱いのか」
「に、人間風情が調子に乗るなー!! お前ら、見てないで魔法を射つなりして攻撃しろ!」
その、言葉を聞いて慌てて魔法を射つ準備をする魔族。俺はその長い詠唱が終わるのをまってやる。詠唱が終わると直ぐに魔法が飛んでくる。
「食らえ! 上級水魔法『ブリザード!!』」
目の前に水の竜巻が出来る。
「おお! コレが水魔法の上級かー!」
「コレでどうだ!」
「あぁ、驚いたよ上級魔法が使えたとはな。コレでストックが増える」
「な、何!? ストックだと?」
「グリモア、この魔法………大丈夫だよな?」
「勿論ですマスター。お任せください」
グリモアはそう言うと、ごく普通に水の竜巻を消し去った。いや、正しくは自分の体内に知識として吸収した。
「な、馬鹿な! 上級魔法だぞ! こんな簡単に消される訳が無い!」
「ん? どうした? もう打つ手がないのか?」
俺がそう言うと、リーダーの男が吼える。
「ふざけるな! 俺達は負けない!」
「ふーん、あ、そう。じゃあ、これお返しするよ」
開いたグリモアを左手に持ち、右手を前に出す。
「『ブリザード』」
──淡々と、それが当然のように。無演唱で『ブリザード』を放った。
「「「!?!?」」」
「みんな回避しろ!!」
リーダーの声に反応して、4人は間一髪の所で魔法を回避する。
「流石に避けるか。腐っても魔族って、感じかな?」
「クソッ!! 全員で一気に行くぞ!!」
折れかけた心を無理矢理に奮い立たせた様子で、奴等は束になって襲いかかってきた。
(あー、もうめんどくさくなってきたな。てか、格下だと言ってた相手に四人がかりって。それはもう俺を脅威だって認めてるようなものじゃん。……ふぅ。遊びもここら辺にして。──片付けるか)
俺は4人の攻撃のすべてをことごとく回避し、魔族の後に回り込んだ。筈なのだが。
「な、何! 消えただと!」
「いや、消えてないけど」
「なっ!? 後ろか!!」
「あーもう、いちいちうるさい!」
俺は刀を使う事なくリーダー格の魔族の顔面に右ストレートをいれた。吹き飛ぶ男。男はそれっきり立ち上がることは無かった。息をすることも。
「あ、やっちまったよ。どうやら力入れすぎて首の骨をポッキリやっちゃったみたいだな」
「え? お、おい嘘だろ。う、うわぁ!! ば、化け物だ!?!?!」
リーダーが殺られた。
その単純で明快な現実を目の当たりにして。
3人の魔族は錯乱し、それぞれまとまりなく逃げようとする。
(どうやら、さっきの男が一番強かったようだな。まぁ、逃がす気はないけど)
逃げようとした、3人の魔族の首を早業で全てへし折った。
こうして戦いにもならない俺の殺戮は僅か3分での出来事だった。
ダンジョン攻略を終えた俺達を待ち構えていたものは、ガイアの街から上がる黒煙とモンスターの軍勢だった。
(いや、流石に二回目だと棒読みにもなるよ。決して俺が薄情な訳ではない。はずだ!)
「はぁ、本当にこの国はモンスターに襲われるのが好きだな。まぁ、今は俺の国だから助けるけど。とりあえず情報収集だな。皆、街の人を助けながら王城に向かうぞ」
なんて他人事のように言うが内心、焦っている。俺の治める国に誰がこんなことを。そんな怒りもある。だが、どれを優先して良いのか分からず、今は淡々と指示を出すしかないのだ。
「「「はい!」」」
「グリモアはとりあえず魔導書の姿に戻ってくれ。もしもの時には頼んだぞ」
「Yes,マスター」
グリモアは今回は光ことなく魔導書の姿に戻り俺の左手に収まった。大きさは少しでかめの辞書位だが、問題はない。
「よし! 行くぞ!」
俺を先頭に俺達は王城を目指し、あゆみを進めだした。
「きゃぁぁぁ~~~助けて~~!!」
「うぇぇぇ~~ん、お母さーん」
「おい! しっかりしろ! 死ぬんじゃない!!」
街は燃え、人々はパニックに陥り、まるで地獄のようだった。
「皆、大丈夫か」
俺は国の人々に声をかけながら、男の人に襲いかかっていたゴブリンを斬り伏せる。
「あ、え? 国王様!? あの、有難う御座います!」
「礼はいい。それよりこれはいったいなにががあったんだ?」
「ま、魔王が、魔王が攻めて来たんです!!」
「魔王……か…………」
(これはまたRPGなキャラが出てきたな。確かこの世界の魔王は魔王領『グラシャ』を納める者の事を言うんだったよな。特に世界征服を企んでいるとか、そんな事は無かったはずなのだが。)
「それで、その魔王は今どこにいる」
「魔王は街をモンスターに襲わせてその間に国王様の王城に向かったようです」
「そうか。情報をありがとう」
俺はそう言って頭を下げる。それを見てぎょっとした男は、
「い、いえ、私なんかに感謝の御言葉はもったいないです。頭をあげて下さい。国王様」
と、慌てて言った。俺が頭を上げるとほっとしたようで、「それでは私は安全な所に避難しますので、国王様もどうかご無事で」そう言って男は街の奥に走って行った。俺はそのあとも国民を助けながら先に進み、広場に着いた。
「俺はこれから一人で王城に向かう。スカーレット達はこの国の人達をモンスターから守ってくれ」
「はい、分かりました」
「皆、死なないでくれよ。お前達の誰か一人でも死んだら、俺はこの世界から、1つ国を消すことになる」
「ユウ様もどうかお無事で」
「あぁ」
俺はそうしてスカーレット達と別れ、グリモアを左手に刀を右手に持ち、王城に向かった。
───────────────────────
王城に着いた。外から見た限りではどこも破壊されておらず、綺麗なままだったが、中から異様な気配を感じた。
(この異様な気配が魔王か。それに、他にも気配が4つある。これは魔王の部下のものか。でも、この魔王の気配どこかおかしいような……)
何か引っかかる所があったが気のせいだろう。と王城に入った。
(気配はどうやら、玉座の方から漏れているな。)
俺は玉座の間に向かった。不思議な事に王城にはモンスターが一匹もいなかった。確かに感じた気配は5つだし当たり前なんだが、これは少しおかしいな、俺はそんな異様な雰囲気に警戒心を高めながら先に進み玉座の間の扉まで来ていた。開けた途端に部屋の中から攻撃が来るかもしれないと思い、魔法対策にグリモアを広げた。
そして俺は扉を仰々しく、重くゆっくりとした動きで開いた。
中には見た目十三歳位の少女と二十歳位の男女四人がいた。しかしその五人全員が人間では無いことはその姿を見ればあきらかだった。真ん中に立っている少女は背中から黒色の翼が生えており、尻尾もある。だが、その翼と尻尾の見た目は鳥や猫のものと言うより悪魔の物と言った感じだった。他の四人も人間ではあり得ない特徴があった。
しかしやはり一番目を引くのは真ん中にいる少女だった。その理由は至極簡単で5人の中で誰よりもオーラがあり、5人の中で誰よりも綺麗だったからだ。他の男女4人も顔は整っており、誰がみても美男美女だ。
だが、少女はその中でも群を抜いていた。顔は当たり前のように整っており、艶やかな枝毛の一本もない綺麗な黒髪、二つの明るい紫色の瞳は、宝石のようだ。例えるならばアメジストのような色だ。身長は160センチにも満たないがそれが更に可愛らしさを際立たせている。
そして、顔は整っていると言ってもまだ幼さを残している。それなのに何処か妖艶な大人な雰囲気を纏っており、本当に文字通り絶世の美少女だった。
そんな、彼女に目を奪われていた俺だったが、直ぐに意識のズレを戻し言葉をぶつけた。
「真ん中のお前が……いや、貴女が魔王、ですか?」
「そうだ。そなたの言う通り妾が魔王だ」
魔王は俺の質問に答えた。
(どうやら、話は通じる相手のようだな。)
「では、妾も質問する。そなたはいったい誰だ」
「名乗るのが遅れたな。俺はこの国の国王、ユウ・レス・ウィーンだ」
「そうか、そなたが新しい国王か………名乗り遅れた妾は魔王領第52代目当主シャーミア・レヴィア・シュヴァルツ。魔王だ」
「ご丁寧にどうも。で、今回俺の王国に攻めて来た訳を教えて貰おうか」
俺は他の4人の名前をあえて聞かず話を続けた。あまり話の通じる相手じゃなさそうだったからだ。
「それは………そうですね。話がしたかった、からでしょうか?」
「いや、聞かれても」
「それが、妾も何処から話したものかと、何処から話しましょうか? ………うーん」
魔王が可愛らしく悩んでいる、その時!いきなり俺目掛けて魔法が飛んできた。中級火魔法『ファイヤーランス』だ。俺は咄嗟にグリモアを前に突き出す。すると、瞬く間に魔法はグリモアに吸い込まれ消滅した。
「これは……どう言うつもりだ」
「いや、妾は何も…………何をしているのだ──そなた達……………っ!」
魔王レヴィアが、部下を注意しようと、後ろを向くと同時、部下の一人が明らかに魔法で強化された肉体で魔王を蹴り飛ばした。突然の事に魔王は反応出来ず吹き飛ばされ俺側にあった壁にぶつかる。
「な、何を………」
「はぁ、さっきから、何を仲良くお喋りしているんですか。本当に使えませんね。これだったら、もっと早めに始末しといてもよかったかもしれませんね。まぁ、今からそこの国王もろとも、消せば良いだけの話ですが」
部下の発言に魔王は驚きのあまり喋ることが出来ないようだった。俺ははそんな状況を見かねて、
「これはいったいどう言う事なんだ?」
と、質問した。
「今から死ぬやつに何を話しても意味はありませんが、冥土の土産に教えてあげましょう」
(冥土の土産って……何処の雑魚キャラだよ)
俺は内心そんな事を考えバカにしていたが、表には出さず話を聞くことにした。
「私達はねぇ、先代魔王から、その名前と身分を受け継いだこのガキが気に入らなかったの。だから今ここでこのガキとお前を殺せば二つの国を同時に支配出来るって考えたわけ」
「俺と魔王を殺す、か」
「だから、国を支配するためには国の人間に恐怖を植え付ければ簡単に支配出来る」
「って事は外のモンスターは魔王じゃなくてお前達が勝手にやったと、そう言う事だな」
「そう言う事。それじゃあお喋りはここまでよ。死んでちょうだい」
そう言って魔王の元部下どもは一斉に襲いかかってきた。その四人の攻撃が当たる刹那、ユウの姿が蜃気楼のように消えた。魔王の元部下どもは驚きの声を上げ、回りを見渡す。
「ど、何処にいきやがった!」
すると、国王の姿だけでなく魔王の姿まで消えている事に気がつく。
「あいつら逃げやがった。探せ!」
その言葉と同時に玉座の間には誰もいなくなり静寂に包まれた………
「………ふぅ、危なかったな」
俺は現在魔王を抱えて王城の自室に逃げてきていた。
「ここなら、結界が張ってあるしバレないだろう」
「なん………た……け……」
「ん、なんだ? 声が小さくてよく聞こえない。しっかりと言ってくれないか」
「なんで………妾を助けたんだ? 妾なんか助けないで一人で逃げれば良かっただろう?」
「は? なんでって、今回の襲撃はあいつらが勝手にやったことなんだろ。だったら、お前は関係ないってことだ。そんな関係の無い奴を見殺しにしたら後味が悪いだろ。だから、助けた。それだけの事だ。それに逃げた訳じゃない。俺はこれからあいつらを殺す。俺の家で俺の国で無茶苦茶してくれたからな」
「戦う? ダメだ!! あの四人は強い。魔王領でも、最強の四人で四天王の称号を持っている。そなたが戦って勝てる相手ではない!」
「なんだ、心配してくれてるのか。でも、大丈夫だよ。俺はあの程度の奴らには負けない」
「そなたはあの四人の強さを分かってない。お願いだ、戦わないでくれ。妾を助けてくれたそなたに死んで欲しくないんだ」
「俺は死なないよ。それに狙われてるのは、俺だけじゃなくて魔王もなんだろ? 俺はここでお前を見捨てて一人で逃げる位なら死んだ方がマシだ。まぁ、俺は死なないけどな。だって俺はここで尻尾巻いて逃げる気はない。俺はアイツらを倒す。俺はこの国の国王だ。一応な。国民や大切な人達を守らないといけない。だから、俺はこの国を守るために戦う。それに魔王の事も俺が守ってやる。絶対にな」
「妾を……守る?」
「そうだ、守ってやるよ。それに、普通、君みたいな可愛い子を守るのは男として当然の事だからな」
「か、可愛い?!」
魔王は綺麗な白い肌を朱に染める。まるで茹で上がったタコみたいだ。
俺はそんな魔王の頭に右手を持っていき優しく撫でる。
「だから、ここで待っていてくれ。絶対に帰ってくるから。まぁ、初めて会ったばかりの俺にこんな事を言われても嬉しくないかもしれないけどな。すまん。そこは我慢してくれ」
俺はシャーミアの反応が可笑しくてどこか可愛くて何故かいとおしくて笑みを浮かべる。優しく温かい太陽のようなとまではいかないにしても、心からの笑顔を。それを見たシャーミアの鼓動は波打つように速くなる。
「で、でも、妾は………」
大きく波打つ鼓動のせいでうまく言葉が出ない。それでも、この胸の高鳴りは、ユウに言葉を伝えないといけないと急かす。
「………妾の仲間がこんな事をしたのだったら、妾も戦いに参加したい。参加出来ないにしても事の全てを見ておきたい。………ダメか?」
シャーミアは俺を上目使いで見上げる。
「それは………そうだな。だったら一緒に行こう。俺が守る。これは絶対の約束だ。だから、安心してくれ」
「う、うん!」
その時のシャーミアの笑顔は太陽よりも眩しく、どんな芸術品よりも綺麗だった。
(これは、また、人を好きになってしまったかもしれないな。はぁぁぁ~~あ。まったく俺って奴はどうしようもないな。)
「それじゃあ、行こうか魔王………あ、えっと魔王や君って呼ぶのはなんかよそよそしいから、シャーミアって呼んでもいいか?俺の事はユウって呼んでくれればいいから」
「あ、あぁ、良いぞ! 是非そう呼んでくれ! 妾もそなたに言われた通りこれからはそなたの事をユウって呼ぶことにするからな」
そう言って笑うシャーミアの顔は見た目通りの可愛い女の子だった。
「よし! なら、今度こそ行くぞ! シャーミア」
そうして俺達は玉座の間に向かった。
(これは、やっぱり好きになっちまったようだ…………ごめんな。スカーレット、それにライム。俺、この戦いが終わったらシャーミアに告白するかもしれない。)
サラリと死亡フラグを建てるユウだった。
「─────何処に行きやがったー! 俺はここにいる出てきやがれ!!」
俺は玉座の間に戻り大声で叫んだ。すると、何処からか音もなく四天王の四人が現れた。
「フッ、やっと殺される気になって出てきたか。まぁ、素直に出てきたその勇気だけは褒めてやろう」
「何処までも上から目線だな、お前。それに誰が殺される気になんかなるかよ。さっきのはシャーミアが危なかったから一時的に戦闘を回避しただけだ。そもそもお前達は自分と相手との力量の差も分からない程の雑魚なのか? 力の差を見極めるなんて野生の動物でも出来る事だぞ」
「なんだとぉぉ~~~! それはこっちのセリフだ! 今からその喉を引き裂いて生意気な口を聞けなくしてやる」
(まさか、こんな安い挑発に乗るとは…………やはり雑魚だったか。)
俺は挑発に乗って怒りを露にしこちらに向かって来るリーダー格の魔族の男を鞘に納めた状態の刀を思いっきり振り抜き吹っ飛ばした。
「あれ? おかしいな。ダンジョンのモンスターの方がまだ強いぞ。もしかして、本当に弱いのか」
「に、人間風情が調子に乗るなー!! お前ら、見てないで魔法を射つなりして攻撃しろ!」
その、言葉を聞いて慌てて魔法を射つ準備をする魔族。俺はその長い詠唱が終わるのをまってやる。詠唱が終わると直ぐに魔法が飛んでくる。
「食らえ! 上級水魔法『ブリザード!!』」
目の前に水の竜巻が出来る。
「おお! コレが水魔法の上級かー!」
「コレでどうだ!」
「あぁ、驚いたよ上級魔法が使えたとはな。コレでストックが増える」
「な、何!? ストックだと?」
「グリモア、この魔法………大丈夫だよな?」
「勿論ですマスター。お任せください」
グリモアはそう言うと、ごく普通に水の竜巻を消し去った。いや、正しくは自分の体内に知識として吸収した。
「な、馬鹿な! 上級魔法だぞ! こんな簡単に消される訳が無い!」
「ん? どうした? もう打つ手がないのか?」
俺がそう言うと、リーダーの男が吼える。
「ふざけるな! 俺達は負けない!」
「ふーん、あ、そう。じゃあ、これお返しするよ」
開いたグリモアを左手に持ち、右手を前に出す。
「『ブリザード』」
──淡々と、それが当然のように。無演唱で『ブリザード』を放った。
「「「!?!?」」」
「みんな回避しろ!!」
リーダーの声に反応して、4人は間一髪の所で魔法を回避する。
「流石に避けるか。腐っても魔族って、感じかな?」
「クソッ!! 全員で一気に行くぞ!!」
折れかけた心を無理矢理に奮い立たせた様子で、奴等は束になって襲いかかってきた。
(あー、もうめんどくさくなってきたな。てか、格下だと言ってた相手に四人がかりって。それはもう俺を脅威だって認めてるようなものじゃん。……ふぅ。遊びもここら辺にして。──片付けるか)
俺は4人の攻撃のすべてをことごとく回避し、魔族の後に回り込んだ。筈なのだが。
「な、何! 消えただと!」
「いや、消えてないけど」
「なっ!? 後ろか!!」
「あーもう、いちいちうるさい!」
俺は刀を使う事なくリーダー格の魔族の顔面に右ストレートをいれた。吹き飛ぶ男。男はそれっきり立ち上がることは無かった。息をすることも。
「あ、やっちまったよ。どうやら力入れすぎて首の骨をポッキリやっちゃったみたいだな」
「え? お、おい嘘だろ。う、うわぁ!! ば、化け物だ!?!?!」
リーダーが殺られた。
その単純で明快な現実を目の当たりにして。
3人の魔族は錯乱し、それぞれまとまりなく逃げようとする。
(どうやら、さっきの男が一番強かったようだな。まぁ、逃がす気はないけど)
逃げようとした、3人の魔族の首を早業で全てへし折った。
こうして戦いにもならない俺の殺戮は僅か3分での出来事だった。
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「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
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