グリモワールな異世界転移

クー

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第一章 全ての始まり 『種族の集まる国 ガイア』

第四十九話 『初めての皮』

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 さてと………今、俺達は90層のボス部屋に居るのだが……


「キシャァアアアア!!」


 ………こいつ、あかんわ……


「うわぁー。おっきな蜘蛛くもだね。ねぇ、ユウ………ユウ?」

「ごめん………ちょっと待ってくれ、慣れるから……」

「ご主人? 大丈夫ですか? ……………どうやら、あれは『影蜘蛛シャドウスパイダー』と言うみたいですよ」

「そ、そうか。影系は天明魔法だったよな………すまないが俺がアイツの見た目に慣れるまでスカーレット達、頼んだぞ……」

「はい! 分かりました!」


 スカーレットはそう返事をしてから攻撃を始めた。


「『ホーリーレーザー!』」


 ジュ゛ッ!! 一筋の光が影蜘蛛の足を掠める。


「シャァア!?」


「よし、ちゃんと攻撃が効いた! …………ユウがこの蜘蛛に慣れるまで3人で耐えるよ!」

「「はい!!」」



─────────────────────────



 ……………なんとか……慣れたかな

 グロいのでも、醜悪なゴブリンでも、悪臭を放つオークでも大丈夫な俺が『大丈夫じゃない』物が三つある。

 残り二つはまたの機会にでも。

 で、そのうちの一つ。『虫』だ。

 ありとか蜻蛉とんぼとかちょうとかなら大丈夫。

 でも奴らはダメだ。


 漆黒を身に宿す迅速じんそくの奴。

 百もの足を巧みに操り視覚からも害を与える厄介者。

 八つの足で器用に糸を操る暗殺者

 嬢王の指揮下で統率の取られた数百の軍隊

 小さな身で猛毒を抱え込む輩

 幼少期に様々な異名を持つ大きなはねのアイツ。


 まだまだ居るがこういう奴らは無理。時間をかけて頑張れば慣れる……かもしれない。

 話を戻そう。つまり今、俺は事実上初めて敵におくしている。

 まあ、幸いなことに相手は蜘蛛くもだ。まだ何とかなる。

ゴキブリとかじゃなくてよかった………)


 そんな事を考えている俺なのであった。





───────────────────────




 
「………よし、俺は行ける子俺はやれる子俺は頑張れる子俺は強い俺は───そう、神だ!」


 おのれに暗示をかけて敵対するほどではないと、自分でも思う。でも、人間分かっていてもやっちゃうことってあるよね!

 ………え? 俺のステータス? ははっ、人間だよ? まだ、な。




「さて、と! 俺はやるぞ! スカーレットたち、サンキューな!」

「うん! どーってことないよ!」

「それよりご主人。あの蜘蛛さん、魔法以外効きませんのでご注意を!」


(魔法のみ、か……刀に魔力をまとわせたらいけるかな?)


「了解。ちょっと試しに斬ってみるわ」

「え!? ユ、ユウ、今効かないって───」

「まぁ、ちょっとした実験だから気にするなー」


 俺は蜘蛛に近づいていった。



「シャァアアアア!」

「うらぁっ!」

 スパン、と言う効果音が当てはまりそうな程、綺麗に斬れた影蜘蛛。だが、二つに分かれたはずの蜘蛛の形をした影は元に戻る。情報通り斬撃は効かないみたいだな。


「シャッ、シャッシャアーーー」


 んー……アテレコするなら「フッ、ザマァーー」とかだろう。けどな……


「俺の奴はただの斬撃じゃないぞ?」


 すると突如とつじょ、蜘蛛が燃えだした。
 発火場所は俺が切りつけた場所。


「ユウ……一体何をしたの?」


 何って言われても……

 
「武器に魔力を纏わせて『火よ、付けー!』って感じで斬っただけだが?」


 影の前に虫だから火に弱いと思ってな。


「ユウ様……それは一部で魔剣術と言われる代物ですよ」

「へぇー、そんなのがあるのか。今度見てみたいな」

「シャァァァァァアアアア!!!!」


 話をしていると蜘蛛が邪魔してきた。むかつく。


「では次。右手に『ファイアボール』。それに左手に…『エア』」

「今度は初期魔法ですか? 効果はあまり無いと思うんですが」

「まあまあ見てなさい、スカーレットさんや」

「は、はい……」


 俺はゆっくり右手と左手を近づける。
 すると火と風が混ざり合い、一つの魔法となる。


 《~♪魔法:『混合魔法』を取得しました》


 やはりな。俺ってば魔法使いの素質あるんじゃね?


「ユウ様……一体それは?」

「これか? 特に名前なんて決めてなかったからな……そうだ、『ファイアリーフ』ってものだ」

「『ファイアリーフ』ですか……聞いたことありませ────」

「シャアーーー!!」


 蜘蛛がこちらに向かって走って来る。

(いい加減うるさい!! こっちはスカーレットと楽しく話してんだよ、邪魔すんな!)


 近くの地面にファイアリーフを投げつける。
 すると地面から俺の背丈分せたけぶんくらいの大きさの炎の竜巻たつまきができた。


「シャア!?」

「よし、なら次はスカーレットだ。スカーレット、『ホーリーレーザー』を太くて大砲から出るイメージで撃ってくれ」

「え? ……あ、はい。………『ホーリーレーザー!』…………!?」


 するとまたしても影蜘蛛にとっては恐ろしい事が起こる。


「ユウ様、レーザーが太くなり──あ、新しい魔法を取得しました」

「ん。『ホーリーキャノン』だろ?」

 なんで知っているの!? と言わんばかりのリアクションをとるスカーレット。

「まぁ理由はこれが終わったら話すよ……どうやら、あちらも本気になったようだからな」


 そう、先ほどから何故こんなに呑気に話しているのか。
 それは蜘蛛が脱皮をしていたからだ。

 普段ならそんな事させないのだが実験してたらいつの間にか、ね。


「シャア!」


 カサッ。と変な音がした。影蜘蛛の様子がおかしい。


「何だと!? ふざけてんのかよ……」


 驚くべき事に蜘蛛は自分が脱皮した皮を影で覆い、もう一匹の影蜘蛛を作り出してしまったのだ。


「「シャァァァアアアア!!!!」」

「ユウ……皮から出来た方、元の奴より弱いよ。多分HPも元の奴の半分もない。でも、それでも強い事には変わりないと思う。警戒けいかいしとかないとヤバイかも」

「ああ、そうか。だが、ここはすまないが三人で皮の方をやってくれ。頼む。俺はその間に本体の方をやるから」

「おっけ! 任せて!」

「頼んだぞ!」


 俺はイプシー達に皮との戦闘を託し、本体に向かった。


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