妻の裏切りと夫の考え

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第9話 二回目の行動

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 新薬開発が開始されてから半年が経ち、これまでの進捗と合わせて消化した予算、発生した開発上の不具合、事故などを本社報告する日。



「影山室長。マザーへのアクセスを検知。これを見て下さい」

 そこには、十六桁のマザーのパスコードが一桁ずつ破られていく姿が写し出されていた。

「これは」

影山は、このパスコードアタックの方法に昔知り合った若い女性を思い出した。
「まさかな」

「室長、パスコードが通過されました。第一ゲート突破されます」

 三か月前のハッキングを元に三重のゲートを設けていた。もちろん竹山製薬の新薬開発研究室からは分からない様にしている。

「室長、第二ゲート、第三ゲート突破されました。…室長このコードは」
「まさか、信じられない」

 AI技術研究所のスーパーコンピュータのストレージ通称マザーに記録されている新薬の開発情報、AIを利用した新薬開発工程ごとのプロセスプロトコル、データなどが次々とコピーされていく。
「室長。また例の」

 コピーされているデータに横からデータが入って来ている。その混在データが専用線に流れ出て行った。

「室長止まりました」
「コピーされたデータ範囲は」
「ほぼ全量です」
「何だと」

 マザーに蓄積されている新薬開発情報は一テラ、二テラ単位ではない。映像を含めると百テラ単位となる。これだけの情報を専用線の通信容量レベルでコピーするなど現実的でない。
「いったどうやって、何処に」

とにかく、立花に……。いやまず今回はあの方からだ。


「どうした影山」
「担当役員。実は……」

「ほう。面白い。そのまま監視を続けろ。立花には、私に連絡が来ていることを言うなよ」
「分かっております」

数分後、

立花のポケットに入っているスマホが震えた。
「立花、影山だ」
「どうかしたか」
「マザーがハッキングされた」
「何だと」

「不味い事がある。今回マザーをハッキングしたパスコードは、望月新薬研究主任のものだ」
「そうか。影山、今回の件、悪いが、口外しないでくれ。パスコードが望月主任のものとなると簡単に公にする訳には行かない。理由は分かるだろう」
「そうだな。分かった」
「また、後で連絡する」




「立花主任。すべて竹山製薬の新薬開発室のストレージに転送完了です」
「そうか。では撤収だ」
「はい」

立花は、竹山製薬の新薬開発研究室の最後の電気を消すと、口を少し曲げて笑った。
「ふふっ、また、会えるかな」


立花と別れた白石は
『後藤室長』
『白石か』
『はい、第二回コピー作業は完了しました。パスコードは例のものです。これで立花主任も動くでしょう』
『そうか。証拠を掴めよ』
『分かっています』
『白石。今度食事するか』
『はい』
嬉しそうな音で答えた。
後藤からの連絡が途絶えると

「食事か。ふん」



翌日、本社報告から戻った望月主任は
「立花主任、君が来なかったから、代理の子大変だったのよ。役員からは詰め寄られるし、半分泣きべそだったわよ。何とか室長と一緒にフォローして納得してもらったけど、次回は、必ず出席してね。AI側は、あなたが責任者なんですから」
「はいはい。分かりましたよ」

「ところで、昨日のAIの三階層を四階層にする作業上手く出来た」
「…いや、途中でトラブルが発生してね。結局コンテンジェンシープランに基づいてリカバリ処理を走らせたよ。今、対策を検討中だ」
「そうなの」

おかしいな。こういう事でミスした事等ないのに。

「ところで、次の休憩時間に室長室で打合せをしたい」
「…分かったわ」



「望月主任、実はな。AIの階層アップを失敗した理由は、手続きが間違っていたんじゃないんだ。緊急事態が発生してね」
「緊急事態」

「それを説明する為に、ちょっと聞きたいのだが、…君は、昨日六時半から七時半までどこにいた」
「どういう意味」
「何処にいたと聞いている」
「何処だっていいでしょう。君に話す必要はないわ」

「…マザーがハッキングされ、データ全量がコピーされた。マザーのパスコードは君のものだ」
「…そんな。ありえない」

「じゃあ、どこにいた」
「………」

家で、夫が要求して来て、それに応えていたなんて言える訳がない。

「言えないという事は肯定しているという事だぞ」
「私は関係ないわ」
「じゃあ、どうして十六桁ものパスコードを誰が入力できるんだ。君しかいないだろう」

「私じゃない」
濡れ衣だ。誰かが私を陥れようとしている。直感的感じたが、確証も何もない。

「望月主任。もし、僕がこれを上に報告したら、君だけでない君の夫もこの会社には入れないだけでなく、多額の賠償請求をされる。幸い、被害はまだ出ていない」
「どうしろと」

「二人で食事でもしながら考えないか」
「………」
目的は分かっていた。でも夫にまで危害が及ぶことは許されない。

「分かりました」
「じゃあ、今日都合を付けてくれ」


ふふふっ、思った通りだわ。立花主任はそんなにあの女が好きなのかしら。



 立花主任と望月主任が揃って研究室を後にした。先に出ていた私は、竹山製薬の分室から出て来た二人を尾行する。

タクシーか。後で請求できるかな。

 都内のシティホテルの前でタクシーを止めると二人はそのままホテルロビーに入って行った。立花主任が望月主任の腰に手を回している。ふふっ、いいショットだわ。

 食事後、二人はフロントでキーを受け取りエレベータに乗った。ここまで録画すれば十分。さて、帰るか。
もう、八時半か。

『後藤室長』
『白石です。立花主任と望月主任の良いショットが取れました』
『そうか。よくやった。今週末にでも食事しよう』
『はい』
嬉しそうな音で言ってやった。



「友梨佳。久しぶりだな」
「抱かれれば、あの件、伏せてくれるのね。安心できる証拠は」
「俺を信用してもらうしかない」
「それでは、信用できないわ。これを知っている人間は誰」
「AI技術研究所のセキュリティ室長だけだ」
「その人は信用できるの」
「口止めはしてある」
「それじゃ、全く信用できないじゃない。私を抱いた後、明日暴露されるなんてごめんだわ」
「信用できないなら仕方ない。今夜は無しにしよう。明日の朝、君の夫がどんな顔するか楽しみだな」

立花は、ジャケットを片手に持ってドアに向かった。

「待って。…分かったわ。あなたを信用する」
「そうか」



彼は戻って来ると、私の唇を塞いだ。

 弱みを握られている所為で、色々な体位を要求された。前や後ろはもちろん、上からも口も要求されたが、断ることが出来なかった。

 体の芯が痺れている。あそこがまだ痺れている。悔しいけど思い切り感じてしまった。


「ふふっ、友梨佳。今の旦那じゃ、体が満足出来ていないんじゃないか。凄かったぞ。俺なら、お前を満足させられる。どうだ。またあの時の様に戻らないか」
「ふざけた事言わないで。今日だけよ」
「おれは、今日だけなんて一言も言っていないぞ。友梨佳」
「えっ、そんな」
「安心しろ。毎日とは言わない。俺の気が向いた時に都合付けてくれればいいさ」
「………」


―――――

おやおや、白石真由子の思いどういう事。
望月主任どうなるんですかね。しかし立花良くないですね。


次回をお楽しみに。

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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