幸せだったのに

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第9話 夫の考え

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「ねえ、本当にあの女の所戻るの。私と一緒になれば、幸せになるよ」
「悪いな。俺も馬鹿だと思う。でも一度、一生責任を持つと誓った妻だ」
「あんた馬鹿だよ」
「そうだな。馬鹿だな」


「あの男は」
「ああ、今時、何処にいるのかな。俺には興味ない。今度目の前に現れたら、この世に生を持ったことを後悔させるだけさ」
「まったく……」

実際はあの男に、妻の顔を隠した不倫ビデオをあの男の会社の人事に送った。厚生省のあいつの仕事場にも送った。

あいつは、僕の妻と浮気しながら、自分の会社の役員の娘との婚約する仲まで行ったようだが、婚約を破棄された。

厚生省の知り合いにも送って展開して貰ったが、省内の女の子に手を出していた事が、今回の騒動でばれてしまった。

その子は、あいつを訴えた。
 結果的に会社を首になり、仕事が出来る場所を失った。



家を出てから三週間後、家に戻った。鍵が閉まっていることにホッとしたが、開けて見ると異様な光景が有った。

リビングで人が倒れている。異様な匂いがした。ゆっくりと側に近寄ると倒れているのは妻だった。
妻の側に、小さな箱が有った。

臭い。はっきり言って酷い匂いだ。汚臭だ。かつて輝きを持って共に暮らしていたはず妻の姿がそこにあった。妻の体から汚臭が出ている。小さな箱からもだ。

 意味が無いと思いながら、首で心拍を取りながら鼻に指を当てて呼吸しているか確認した。心拍は弱く、ゆっくりだ。呼吸はしている。

 箱の中を見た。黒くなった物体が、枯れた花の上に置かれていた。



貴方、行かないで。なんで行くの。思い切り手を伸ばしても、離れて行く。目の間に真っ暗な穴が有った。

大きな黒い物が、小さな魚を抱いている。目の前の黒い物が大きくなって、飲み込まれそうになった時、

優香、優香。
誰かが呼んでいる。いきなり目が開かれた。


ここは、

「優香、気が付いたか」

えっ、

「まったく。目が覚めたのか」
「あなた」
妻が目覚めた。直ぐにナースコールを押した。

和樹が、私の手を持ってずっと私を見ていた。

理由は分からないが、ただただ涙がこぼれて来た。

「ごめんなさい。ごめんなさい」
「どうした。悪い夢でも見たか」

私には、記憶がある。与野君と浮気をして、夫に問い詰められ、問い詰められ……。
えっ、

「どうかした、優香」
「だって私。・・。あ、赤ちゃんが」
「流れた。知合いを通じて、丁重に弔った。何も考えるな。ゆっくり休め」
「えっ」
ショックで、また眠ってしまった。



信じられなかった。私は家のベッドの上で寝ていた。

「体調が落ち着くまで、横になった方がいい」
「……」


「もう、十二時になる。お昼は、何を食べたい。好きな物作ってあげるよ」

分からない。今いつのなのだろうか。
「あなた」
「うん」
「いま、いつなの」
可笑しい顔して言う妻に、微笑みながら
「今日は、十月十六日だよ。もうお昼」

えっ、私が……。一ヶ月以上経っている。

ベッドから体を起こすと
「大丈夫か。ずっと点滴ばかりだったから」
左腕の関節を見ると赤い点がいっぱいついていた。

「あなた」
「なに」
「私。浮気……」

「忘れるんだ。優香、これからはいつも僕の側に入ればいい。君が急に意識を失って、病院運ばれた。悪い夢でも見ていたと思えばいい。」

分からずに涙が出て来た。たまらなく。たまらなく。
私の生活がいつもの様に戻ったのは、それから更に一か月後だった。


「優香。行ってくる」
「いってらっしゃい。あなた」

彼が、背中に手を回して口付けをしてくる。私も思い切り唇を彼に当てた。彼の手が私のお尻に触って来る。気持ちが良かった。もっとして欲しかった。
 彼が行った後、二か所の鍵をロックした。

お腹に手を当てて、居たはずの子供の思いを感じていた。ごめんなさい。私が悪かったの。

夫は、短期出張だと言って、一日か二日帰ってこない時があった。何をしているか、想像もつく。

 でも、私はそれ以上に許されない事したんだ。夫は、こんな私でも受入れてくれる。
前の様な生活に戻れたんだ。

 夜だけは、何もしないで寝てしまう夫だけど、それは、私が償えない罪の代償。これで良いと思った。


―――――

これで良いのかな。こんなものなの??

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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