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第17話 先の事
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僕は、金田社長、中田社長に挨拶をした後、薫と一緒に社長室を後にした。社長秘書の方が、セキュリティゲートの外まで、送ってくれた。
「本日は、ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ」
簡単な挨拶で薫と一緒に金田物産のビルを出た。
「さっきの社長秘書の人、来た時と帰る時で態度が変わっていたような」
「ふふっ、それが普通のサラリーマンです。康人さん」
「……」
「康人さんには一生分からないかもですね。ところで、ねえ康人さん。今日は二人の日ですよね。もう七時半です。ホテルで食事して、ねっ」
「うん、分かっている」
「金田。面白い男を見つけたな」
「ああ、薫から聞いた時は、眉唾かと思ったが、どうして中々」
「まだ、未知数だが、使ってみる価値はありそうだ。価値が有れば良し。なければ元に戻るだけ。彼にとっても悪い話ではない」
「そうだな。楽しみが、また一つ増えたな」
「はは、金田は、好きだな。人の人生を見て行く事が」
「中田もだろう」
「そうだな」
「はっ、くしょん」
「どうしたの。康人」
「いや、急にくしゃみが出て」
「はい、じゃあ、もっと側にいないと」
「ああ」
思い切り腕に寄りかかれながら、ホテルに向かった。
ふふっ、これで、香澄さんとは、五分五分に戻せたかな。
「ただいま、香澄」
「お帰りなさい。あなた。どうでした。金田物産社長とのお話」
「ああ、なんか話が大きくて。食事終わったら話そう」
「分かったわ。でもその顔では、悪い話では無かった様ね」
「そうだな」
食事も終わり、ウィスキーのロックを口にしながら
「会社、変わりそうだ」
「えっ、首に……」
「いや、中田産業の社長付になる」
「……」
「中田社長の仕事の手伝いをしながら会社の仕事を覚えて行けと言われた」
その後の社長云々は、言わずにおいた。
「良く分からないんだけど」
「僕もだ。でも良い事もある。年収が今の三倍になる」
「えーっ。それじゃ、このマンションのローンの返済も早くできるし。私欲しい洋服ある」
「まだ、勤め始めて仕事が出来るか判断されてからの事だ」
「……」
「今度、園で薫さんに会ったらお礼言った方がいいかな」
「いや、一切触れないでくれ。この事、薫さんは知っているが、私的な事ではない」
「分かりました」
一か月後、
出向していた会社の同僚からは、親会社に戻ると思われているらしく、戻った後も、声を掛けさせてくれと頼りにされていた証を言葉で言ってくれていた。
中田産業に入社した日だけは、色々な手続きの説明だけだったが、翌日の出社後からは、紹介もそこそこに、仕事に就いた。仕事は慣れない事もあったが、多忙を極めた。
酷い時は、前日、いや当日の朝午前二時まで仕事をしながら、五時には出社しないといけない日もあった。
普通でも、朝六時から夜十時が通常時間。社長という仕事がいかに激務か良く分かった。
だが、偶に休暇もどきがある。中田社長は、ゴルフをする。僕は出来なかったので、送迎車手配と同行以外は、休むことが出来た。スケジュールは、然り決まっているが。
土日出勤も当たり前だった。
だが、薫とのは時は、何故か仕事に一部にされているようにその日だけは、早く帰れた。
多分、金田社長からの入知恵だろう。
香澄は、少し不満げだったが。
「金田、一年前に紹介して貰った河西という男。良いものを見つけたようだ。まだまだ原石だが、我が社の要職に就けるだけの器量を一年で身につけた」
「失敗したな。逃がした魚は大きかったか」
「そういうことだ。礼をいう」
「しかし、あの男、これだけ忙しい中で薫さんと家族と上手く過ごしていけるなんて、我々には無い才能が有るのかもしれないな」
「おれもそう思うよ。薫はあいつと会った翌日の嬉しそうな顔といったら。単に体合わせた位で、あの笑顔は生まれないだろう。美香ともうまく過ごしているらしい。その辺はこちらが教えて欲しいものだ」
「はははっ、そうだな。そこでだ。社長付を外して、専務職につけようと思う」
「あの若さでか。社内は付いてくるか」
「ここ一年、私と一緒に仕事をして、役員連中や周りの奴らは舌を巻いていた。文句を言うやつはいない。それに元々洋二が付くポストだった。それに比べれば格段にいい」
「そうか」
「香澄、今度専務になる」
「えっ、たった一年しか仕事していないですよ」
「まあ、役員会の反対も無く決まった」
「そっ、そうなんですか。でもここ一年忙しかったですからね」
「仕事が忙しいのは、皆同じだ。だが拝命した以上、今まで以上にがんばる必要がある」
「あなた、出世なさったことも、収入が増えた事も、妻としてはとても喜ばしく思います。でも、私との約束は忘れないで下さいね」
「うんっ?」
「一年前に言いましたよね。二人目は薫さんより私が先だって。まさか忘れていないですよね」
「忘れてない。忘れてない」
「じゃあ、証明して下さい」
「うっ、わ、分かった」
「いやなんですか」
「ソンナコトナイヨ」
「なぜ棒読みなんですか」
「いや……」
返事する前に唇を塞がれた。
今日も努力あるのみ。ファイトー!何発?!
―――――
このままでは、済みませんよ。
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
「本日は、ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ」
簡単な挨拶で薫と一緒に金田物産のビルを出た。
「さっきの社長秘書の人、来た時と帰る時で態度が変わっていたような」
「ふふっ、それが普通のサラリーマンです。康人さん」
「……」
「康人さんには一生分からないかもですね。ところで、ねえ康人さん。今日は二人の日ですよね。もう七時半です。ホテルで食事して、ねっ」
「うん、分かっている」
「金田。面白い男を見つけたな」
「ああ、薫から聞いた時は、眉唾かと思ったが、どうして中々」
「まだ、未知数だが、使ってみる価値はありそうだ。価値が有れば良し。なければ元に戻るだけ。彼にとっても悪い話ではない」
「そうだな。楽しみが、また一つ増えたな」
「はは、金田は、好きだな。人の人生を見て行く事が」
「中田もだろう」
「そうだな」
「はっ、くしょん」
「どうしたの。康人」
「いや、急にくしゃみが出て」
「はい、じゃあ、もっと側にいないと」
「ああ」
思い切り腕に寄りかかれながら、ホテルに向かった。
ふふっ、これで、香澄さんとは、五分五分に戻せたかな。
「ただいま、香澄」
「お帰りなさい。あなた。どうでした。金田物産社長とのお話」
「ああ、なんか話が大きくて。食事終わったら話そう」
「分かったわ。でもその顔では、悪い話では無かった様ね」
「そうだな」
食事も終わり、ウィスキーのロックを口にしながら
「会社、変わりそうだ」
「えっ、首に……」
「いや、中田産業の社長付になる」
「……」
「中田社長の仕事の手伝いをしながら会社の仕事を覚えて行けと言われた」
その後の社長云々は、言わずにおいた。
「良く分からないんだけど」
「僕もだ。でも良い事もある。年収が今の三倍になる」
「えーっ。それじゃ、このマンションのローンの返済も早くできるし。私欲しい洋服ある」
「まだ、勤め始めて仕事が出来るか判断されてからの事だ」
「……」
「今度、園で薫さんに会ったらお礼言った方がいいかな」
「いや、一切触れないでくれ。この事、薫さんは知っているが、私的な事ではない」
「分かりました」
一か月後、
出向していた会社の同僚からは、親会社に戻ると思われているらしく、戻った後も、声を掛けさせてくれと頼りにされていた証を言葉で言ってくれていた。
中田産業に入社した日だけは、色々な手続きの説明だけだったが、翌日の出社後からは、紹介もそこそこに、仕事に就いた。仕事は慣れない事もあったが、多忙を極めた。
酷い時は、前日、いや当日の朝午前二時まで仕事をしながら、五時には出社しないといけない日もあった。
普通でも、朝六時から夜十時が通常時間。社長という仕事がいかに激務か良く分かった。
だが、偶に休暇もどきがある。中田社長は、ゴルフをする。僕は出来なかったので、送迎車手配と同行以外は、休むことが出来た。スケジュールは、然り決まっているが。
土日出勤も当たり前だった。
だが、薫とのは時は、何故か仕事に一部にされているようにその日だけは、早く帰れた。
多分、金田社長からの入知恵だろう。
香澄は、少し不満げだったが。
「金田、一年前に紹介して貰った河西という男。良いものを見つけたようだ。まだまだ原石だが、我が社の要職に就けるだけの器量を一年で身につけた」
「失敗したな。逃がした魚は大きかったか」
「そういうことだ。礼をいう」
「しかし、あの男、これだけ忙しい中で薫さんと家族と上手く過ごしていけるなんて、我々には無い才能が有るのかもしれないな」
「おれもそう思うよ。薫はあいつと会った翌日の嬉しそうな顔といったら。単に体合わせた位で、あの笑顔は生まれないだろう。美香ともうまく過ごしているらしい。その辺はこちらが教えて欲しいものだ」
「はははっ、そうだな。そこでだ。社長付を外して、専務職につけようと思う」
「あの若さでか。社内は付いてくるか」
「ここ一年、私と一緒に仕事をして、役員連中や周りの奴らは舌を巻いていた。文句を言うやつはいない。それに元々洋二が付くポストだった。それに比べれば格段にいい」
「そうか」
「香澄、今度専務になる」
「えっ、たった一年しか仕事していないですよ」
「まあ、役員会の反対も無く決まった」
「そっ、そうなんですか。でもここ一年忙しかったですからね」
「仕事が忙しいのは、皆同じだ。だが拝命した以上、今まで以上にがんばる必要がある」
「あなた、出世なさったことも、収入が増えた事も、妻としてはとても喜ばしく思います。でも、私との約束は忘れないで下さいね」
「うんっ?」
「一年前に言いましたよね。二人目は薫さんより私が先だって。まさか忘れていないですよね」
「忘れてない。忘れてない」
「じゃあ、証明して下さい」
「うっ、わ、分かった」
「いやなんですか」
「ソンナコトナイヨ」
「なぜ棒読みなんですか」
「いや……」
返事する前に唇を塞がれた。
今日も努力あるのみ。ファイトー!何発?!
―――――
このままでは、済みませんよ。
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
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宜しくお願いします。
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