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第一章「時の扉」

第一話「時の扉」

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それは夜風が吹きすさぶある孤島での話だ。
あるマッドサイエンティストのジージョ博士と、博士の身辺の世話をする女性科学者キャンディの物語。
その孤島は夏にもかかわらず雪が降っていた。
なぜ雪が降っているかというと、この二人の科学者による実験が原因だ。
その二人は「いかしにて自然にあらがうか」をメインテーマに実験を重ねていた。
例えば先ほども言ったように夏に雪を降らせてみたり、池の水を枯渇させてみたり、虹の色を操作したり、が今まで彼らがやってきた実験の内容だ。
そして彼らは人類がどうしてもあらがえない、「時間」というテーマに着手しつつあった。
時は自然に流れていくもの、そして過去には行けない。そして刻々と経ってゆく時間にもあらがえない。
そう、今回、彼らが言うところの「集大成」の実験は「過去と現在の境界線を無くす」、「時間によって老いない不老不死」をテーマにしていた。
ジージョ博士は言った。
「よし、この装置、〝カコミライゲンザイ〟が完成した。まだ試作段階だが、キャンディ、君にはわたしと一緒に実験に参加してもらうぞ」
キャンディは
「はい、博士」
と、従順な彼女の性格を単に表すように、一言で答えた。
その装置は、丸い大きなかまどに何本か角が生えたような、ヘンテコな外観だった。
「この装置の電源を入れると、我々は眠たくなる。そこからが実験のスタートじゃ」
「はい」
博士は装置のスイッチを入れようとしたが、一瞬思いとどまって、
「キャンディ、この実験には危険がともなう。最後に言っておきたい事はあるかい?」
「博士を愛しています」
博士はフフ、と微笑を浮かべてから
「では、スイッチを押すぞ?」
「はい」
博士はスイッチを入れた。
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