【完結】疫病神がうちに来まして~不幸せにするために、まずはあなたを幸せにします~

mazecco

文字の大きさ
35 / 49
第二章

第34話 高慢

しおりを挟む
 使わなかった食材は余らせてしまったけれど、段ボールの中身はごっそり減った。
 そして私とムミィの体力もゼロに近い。
 酒瓶が転がる静かになったパブで、私とムミィはぐったりと椅子にもたれかかった。

「真白さん……お疲れさまでしたぁ……」
「お疲れ……。神様ってみんなパワフルだね……」
「はい……。それはもう元気なんですよ……」

 ムミィは伸びをしてから、私に笑いかけた。

「みんな、真白さんの料理に大喜びでしたよ」
「ありがたいことにねえ……」
「八幡神の塩は痛かったですが、そんなの気にならなくなるくらい儲けられました!」

 カウンター裏には、神からお代としてもらった物が山積みになっている。

「それは良かった。で? お給料は?」

 私が手の平を差し出すと、ムミィの顔が引きつった。

「え? もらってたじゃないですか。神から直接」
「あれはチップでしょ。あれは別。あんたから給料欲しい」
「うっわ、がめつ……」
「だからあんたにだけは言われたくない」

 ムミィは顔をしわくちゃにして、山積みになった報酬からいくつかを私に渡した。

「これは宇迦之御魂神からもらったお米十キロ×五セットです。それとこれは玉租命からもらった手鏡と勾玉のネックレス。あとこれは――」

 不機嫌な顔で次々と品物を渡すムミィに、私は思わず口を開いた。

「ちょ、ちょっとムミィ!? さすがにこんなにいっぱいもいらないよ!?」
「え? そうなんですか?」
「こんなにもらえるほどの料理は作ってないから」

 私の言葉を聞き、ムミィはニィッと口角を上げ、首を傾けた。

「へえ。真白さんって高慢ですねえ」
「なんでそうなる? むしろ逆では?」

 ムミィは首を横に振り、胸を軽く叩く。

「だって、神である僕よりも、自分の方が正しいと思っているじゃないですか」
「い、いや、そういうわけでは……」
「そうじゃないなら、報酬をお受け取り下さい。僕がこのくらいの価値があると決めて報酬を渡しているんです」

 そういうことなら、ありがたくいただくけれども……。やっぱりずいぶん多めに報酬をもらってしまっている気がしてモヤモヤする。
 あんなに欲しがっていた報酬をもらっても嬉しそうにしない私を見て、ムミィが呆れたようにボソッと呟いた。

「神を信じるのも、神に逆らうのも、ヒトだけに与えられた特権ですねえ」

 この時のムミィは、私が知っているムミィとはまるで別人のように感じた。あどけない笑顔、子どもっぽい口調、馴れ馴れしいスキンシップ……そんなものはひとつもなかった。
 ほんの少し、怖いと感じた。これが畏怖というものなのかもしれない。

 私の視線に気付いたムミィは、ハッとしていつもの満面の笑顔を向ける。

「真白さん! 神に逆らうのは結構ですが、どうせならもっとこう……いつものように、ポジティブな逆らい方をしてください! 報酬が少ないとか、もっと寄越せとか、そんな感じの方が僕は楽しいです!」
「どんな注文よそれ……」
「だって、今の逆らい方は誰も得しないし面白くないじゃないですか。せめてどちらかは楽しめるようにしましょう!」

 ムミィはよっぽど、私の報酬への態度が気に食わなかったらしい。
 それだったらお望み通り、過剰請求してやるわよ。

「そう。だったらもっとちょうだい。あと、浴槽ゼリーの報酬もまだもらってないよね? それもちょうだい。それと足りない調味料は次までにちゃんと揃えといてね」

 私はド厚かましいことを次から次へと口に出した。ムミィは怒るフリをしていたけれど、なぜか口元がほころんでいた。ムミィってもしかしてちょっとMなのかな。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

厄災烙印の令嬢は貧乏辺境伯領に嫁がされるようです

あおまる三行
恋愛
王都の洗礼式で「厄災をもたらす」という烙印を持っていることを公表された令嬢・ルーチェ。 社交界では腫れ物扱い、家族からも厄介者として距離を置かれ、心がすり減るような日々を送ってきた彼女は、家の事情で辺境伯ダリウスのもとへ嫁ぐことになる。 辺境伯領は「貧乏」で知られている、魔獣のせいで荒廃しきった領地。 冷たい仕打ちには慣れてしまっていたルーチェは抵抗することなくそこへ向かい、辺境の生活にも身を縮める覚悟をしていた。 けれど、実際に待っていたのは──想像とはまるで違う、温かくて優しい人々と、穏やかで心が満たされていくような暮らし。 そして、誰より誠実なダリウスの隣で、ルーチェは少しずつ自分の居場所を取り戻していく。 静かな辺境から始まる、甘く優しい逆転マリッジラブ物語。 【追記】完結保証タグ追加しました

処理中です...