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第一章
第23話 小学生向け雑貨通販
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◇◇◇
ポストに投函されていた冊子を見て、私は歓声を上げた。
「きゃー! やっと届いた! ムミィ、ムミィ~!!」
歯磨きをしているムミィが脱衣所からひょこっと顔を出す。
「わっ、届いたんですね。六つ目の夢が!」
私が開いて見せたのは、カラフルな写真で埋め尽くされた、小学生向けの通販雑貨カタログ。私が小さい頃は、月刊少女漫画雑誌に注文ハガキが入っていて、セレブな友人たちが毎月買っていたものだ。
ちなみに私にはそんなお金がなかったので、一度だけ剥がせるマニュキアを買ったことがあるだけ。それ以外は、注文ハガキに買いたい商品の番号を書くだけ書いて、ポストに入れずに捨てていた。
いつか記入欄いっぱいに番号を書いてハガキを投函したい。それが私の小学生の時の夢だった。
小学生の時にその夢は叶わなかったけど! 大人になった今では! 好きなものを好きなだけ買える!! 夢を叶える時は、今!!
ネット通販もしているみたいなんだけれど、当時のワクワクを感じたくてカタログを請求した。それで正解。冊子の厚みにテンションが上がる。
一面にぎっしり載せられている、可愛らしい雑貨の数々。やっぱり子ども向けだからキラキラしたものが多いけど、三十代の私が見てもやっぱり可愛いし欲しいと思っちゃう。
私は記載されている値段を見て絶叫した。
「シャーペンが五十円……キーホルダー二十五円!? やっすぅぅぅぅっ……! はぁぁぁ!? 経営大丈夫かこれぇ!!」
「さすが小学生向け! お値段が優しいですね!」
「優しいどころじゃないわよもはや暴力的でしょうこの安さは……。逆に心配になるわ……」
セール商品なんて税込み十円になっているものもあった。今どき駄菓子でも十円では何も買えないのに。
「見てムミィ……。ふわふわのシールが売ってるよぉ……。私、シール大好きだったんだよねぇ……」
「ふわふわシール! 僕も欲しいです! 買って、いたるところに貼りましょうよー!」
「剥がすときが大変なんだよ? シールって」
大人になってからもシールが大好きで買うこともあったけれど、貼るところがない
から親戚の子どもにあげることになる。
「使いたいんだけどなあ。使うところがないんだよなあ……」
私がシールを買おうか迷っていると、ムミィが親指を立てた。
「真白さん! じゃあ、僕のパブに貼るのはどうですか? 好きなところに貼りたいだけ貼っていいですよ!」
「えっ! いいのぉー!?」
「もちろん! だってこのシールだって真白さんの夢! 僕のパブにとっても、貼ってもらうことは嬉しいことです!」
そういえば、ムミィのパブにはポスターやステッカーがいたるところに貼られていた。ほとんどが色褪せていたそれも、古びたパブの雰囲気を助長させていて結構良かった。あの中に子供向けのシールを貼るとちょっと違和感がありそうだけど、ムミィのことだから気にしないのだろう。
ムミィのお言葉に甘えて、私は心置きなくシールの商品番号を注文用紙に書き込んだ。
他にも、ジッパーチャームやイヤリング、ペンも安かったからたくさん買っちゃった。余ったものはムミィのパブに飾ってくれるらしい。
私は注文用紙を商品番号で埋め尽くし、近所のポストに投函した。いつ届くのだろうと考えるだけでワクワクする。
商品が届いたのはそれから二週間後だった。段ボールを開けると、小さくて、可愛くて、キラキラしている雑貨が詰め込まれている。
正直にいうと、どれも安物で使い道のないものばかり。それなのにどうして、こんなにも心が躍るのだろう。
「下手したらブランド物のバッグ買ったときよりも嬉しいよ、これ……」
「当然です! だってこれらが、真白さんの本当に欲しかったものなんですから!」
「そっかあ。そうだったんだね」
使わない物を買うのはただの無駄遣い。だから、気が付けば使える物ばかり選んで買っていた。
それも大事なことだけど、こんなに心が満たされるなら、時にはこうして気持ちのままに、欲しい物を買うのもいいかもしれないな。
ポストに投函されていた冊子を見て、私は歓声を上げた。
「きゃー! やっと届いた! ムミィ、ムミィ~!!」
歯磨きをしているムミィが脱衣所からひょこっと顔を出す。
「わっ、届いたんですね。六つ目の夢が!」
私が開いて見せたのは、カラフルな写真で埋め尽くされた、小学生向けの通販雑貨カタログ。私が小さい頃は、月刊少女漫画雑誌に注文ハガキが入っていて、セレブな友人たちが毎月買っていたものだ。
ちなみに私にはそんなお金がなかったので、一度だけ剥がせるマニュキアを買ったことがあるだけ。それ以外は、注文ハガキに買いたい商品の番号を書くだけ書いて、ポストに入れずに捨てていた。
いつか記入欄いっぱいに番号を書いてハガキを投函したい。それが私の小学生の時の夢だった。
小学生の時にその夢は叶わなかったけど! 大人になった今では! 好きなものを好きなだけ買える!! 夢を叶える時は、今!!
ネット通販もしているみたいなんだけれど、当時のワクワクを感じたくてカタログを請求した。それで正解。冊子の厚みにテンションが上がる。
一面にぎっしり載せられている、可愛らしい雑貨の数々。やっぱり子ども向けだからキラキラしたものが多いけど、三十代の私が見てもやっぱり可愛いし欲しいと思っちゃう。
私は記載されている値段を見て絶叫した。
「シャーペンが五十円……キーホルダー二十五円!? やっすぅぅぅぅっ……! はぁぁぁ!? 経営大丈夫かこれぇ!!」
「さすが小学生向け! お値段が優しいですね!」
「優しいどころじゃないわよもはや暴力的でしょうこの安さは……。逆に心配になるわ……」
セール商品なんて税込み十円になっているものもあった。今どき駄菓子でも十円では何も買えないのに。
「見てムミィ……。ふわふわのシールが売ってるよぉ……。私、シール大好きだったんだよねぇ……」
「ふわふわシール! 僕も欲しいです! 買って、いたるところに貼りましょうよー!」
「剥がすときが大変なんだよ? シールって」
大人になってからもシールが大好きで買うこともあったけれど、貼るところがない
から親戚の子どもにあげることになる。
「使いたいんだけどなあ。使うところがないんだよなあ……」
私がシールを買おうか迷っていると、ムミィが親指を立てた。
「真白さん! じゃあ、僕のパブに貼るのはどうですか? 好きなところに貼りたいだけ貼っていいですよ!」
「えっ! いいのぉー!?」
「もちろん! だってこのシールだって真白さんの夢! 僕のパブにとっても、貼ってもらうことは嬉しいことです!」
そういえば、ムミィのパブにはポスターやステッカーがいたるところに貼られていた。ほとんどが色褪せていたそれも、古びたパブの雰囲気を助長させていて結構良かった。あの中に子供向けのシールを貼るとちょっと違和感がありそうだけど、ムミィのことだから気にしないのだろう。
ムミィのお言葉に甘えて、私は心置きなくシールの商品番号を注文用紙に書き込んだ。
他にも、ジッパーチャームやイヤリング、ペンも安かったからたくさん買っちゃった。余ったものはムミィのパブに飾ってくれるらしい。
私は注文用紙を商品番号で埋め尽くし、近所のポストに投函した。いつ届くのだろうと考えるだけでワクワクする。
商品が届いたのはそれから二週間後だった。段ボールを開けると、小さくて、可愛くて、キラキラしている雑貨が詰め込まれている。
正直にいうと、どれも安物で使い道のないものばかり。それなのにどうして、こんなにも心が躍るのだろう。
「下手したらブランド物のバッグ買ったときよりも嬉しいよ、これ……」
「当然です! だってこれらが、真白さんの本当に欲しかったものなんですから!」
「そっかあ。そうだったんだね」
使わない物を買うのはただの無駄遣い。だから、気が付けば使える物ばかり選んで買っていた。
それも大事なことだけど、こんなに心が満たされるなら、時にはこうして気持ちのままに、欲しい物を買うのもいいかもしれないな。
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