68 / 71
8章
第67話 二学期中間テスト
しおりを挟む
◇◇◇
顧問との約束通り、海茅は二学期からも勉強を頑張った。夏休み中も、一週間に一度は顧問に勉強した内容を報告し、分からないところを質問していたので、今まで積みあがっていた分からないことも随分解消できた。
そのおかげか、二学期の授業は今までと一味違った。先生の話していることがちゃんと理解でき、脳みそに吸収される。授業中に出された問題も自力で解けるようになった。
それに、本を読む習慣ができた海茅は、国語の授業も前ほど嫌ではなくなった。といっても、扱う題材が難しすぎるときは「やっぱり国語なんて嫌いだ」と思ってしまうのだが。
海茅の一番苦手な科目に社会が入っていたのだが、これは意外な方法で克服できた。それは、社会の教科書に載っている文化財の写真や絵画で、匡史がこっそり興奮していることに気付き声をかけたのがきっかけだった。
ある日の昼休み、海茅は一緒にお弁当を食べていた匡史に尋ねた。
「ねえ、匡史君。さっき授業中にちょっとニヤニヤしてなかった? プリント配るときに見ちゃったんだけど」
「えっ!? 見られてた!?」
「やっぱりそうだった。口元隠してたけど、バレバレだったよ」
匡史は顔を真っ赤にして唐揚げを頬張る。
「だって、俺の好きな絵画が教科書に載ってたから……」
「そうなんだ。何ページ?」
その質問がきっかけで、匡史の抑えていた「好き」が堰を切ってあふれ出た。匡史は、その絵画を描いた画家の話だけでなく、この絵画の時代背景もとめどなく話す。
彼の時代背景の解説が面白く、教科書に載っている歴史とも繋がっていたため、海茅は自然と社会の理解を深めていった。
今では、匡史は好きなことを好きなだけ話しても海茅に謝ることはない。それで海茅が楽しんでくれているということを、彼は素直に受け入れることにした。それに、これが二人の仲を深めることのひとつだと匡史は気付いていた。
テスト期間に入ると、海茅はまたいつものメンバーと勉強会をした。五人の中では変わらず海茅が一番勉強を苦手としていたが、海茅なりにも勉強を頑張ってきたおかげで、同じ土俵には立てている気がしてホッとした。
そしてテスト結果はというと――
海茅は、一番心配していた英語のテストが返ってきたとき、クラスメイトの前で床に崩れ落ちた。
「うわぁぁぁ……っ」
結果が気になった優紀、匡史、茜、創が駆け寄る。
「海茅ちゃん、どうだった!?」
海茅は涙と鼻水を垂らした顔で友だちを見上げた。
「み、みんなぁ……っ」
海茅が差し出したテストには、赤ペンで五十一点という点数が書かれている。
「うおー! 五十一点! ギリッギリセーフ!!」
「すごい! よかったねみっちゃん!!」
「勉強頑張った甲斐があったねぇミッチー! 五十一点だって! すごいぃぃぃ!」
五十点を下回る点数だったのではないかと心配していた創、匡史、茜は、喜びのあまり海茅のテスト用紙を掲げて大はしゃぎした。
クラスメイト全員に聞こえる声で「五十一点」を連呼された海茅は、ぐるぐる目を回して創からテスト用紙を引ったくる。
「も、もう! みんなに聞こえちゃったじゃん! 恥ずかしいよぉー!」
「ご、ごめん! 嬉しすぎて我を忘れてた……!」
クラスでドッと笑いが沸き起こる。そしていつしか教室が拍手に包まれた。クラスメイトも、元学年最下位の海茅が勉強を頑張っていたことを知っていたからだろう。
たったの五十一点で祝われるのは恥ずかしかったが、それでも頑張りを認められたことは嬉しかった。
他の教科も、顧問と約束していた点数よりほんの少し上回る点数だった。
テスト結果を報告すると、顧問は顔をほころばせた。
「よく頑張ったな、彼方」
「ありがとうございます!」
「じゃあ次は全教科六十点目指そうな」
「えっ」
どうやら、顧問はこれで満足してくれないらしい。
顧問との約束通り、海茅は二学期からも勉強を頑張った。夏休み中も、一週間に一度は顧問に勉強した内容を報告し、分からないところを質問していたので、今まで積みあがっていた分からないことも随分解消できた。
そのおかげか、二学期の授業は今までと一味違った。先生の話していることがちゃんと理解でき、脳みそに吸収される。授業中に出された問題も自力で解けるようになった。
それに、本を読む習慣ができた海茅は、国語の授業も前ほど嫌ではなくなった。といっても、扱う題材が難しすぎるときは「やっぱり国語なんて嫌いだ」と思ってしまうのだが。
海茅の一番苦手な科目に社会が入っていたのだが、これは意外な方法で克服できた。それは、社会の教科書に載っている文化財の写真や絵画で、匡史がこっそり興奮していることに気付き声をかけたのがきっかけだった。
ある日の昼休み、海茅は一緒にお弁当を食べていた匡史に尋ねた。
「ねえ、匡史君。さっき授業中にちょっとニヤニヤしてなかった? プリント配るときに見ちゃったんだけど」
「えっ!? 見られてた!?」
「やっぱりそうだった。口元隠してたけど、バレバレだったよ」
匡史は顔を真っ赤にして唐揚げを頬張る。
「だって、俺の好きな絵画が教科書に載ってたから……」
「そうなんだ。何ページ?」
その質問がきっかけで、匡史の抑えていた「好き」が堰を切ってあふれ出た。匡史は、その絵画を描いた画家の話だけでなく、この絵画の時代背景もとめどなく話す。
彼の時代背景の解説が面白く、教科書に載っている歴史とも繋がっていたため、海茅は自然と社会の理解を深めていった。
今では、匡史は好きなことを好きなだけ話しても海茅に謝ることはない。それで海茅が楽しんでくれているということを、彼は素直に受け入れることにした。それに、これが二人の仲を深めることのひとつだと匡史は気付いていた。
テスト期間に入ると、海茅はまたいつものメンバーと勉強会をした。五人の中では変わらず海茅が一番勉強を苦手としていたが、海茅なりにも勉強を頑張ってきたおかげで、同じ土俵には立てている気がしてホッとした。
そしてテスト結果はというと――
海茅は、一番心配していた英語のテストが返ってきたとき、クラスメイトの前で床に崩れ落ちた。
「うわぁぁぁ……っ」
結果が気になった優紀、匡史、茜、創が駆け寄る。
「海茅ちゃん、どうだった!?」
海茅は涙と鼻水を垂らした顔で友だちを見上げた。
「み、みんなぁ……っ」
海茅が差し出したテストには、赤ペンで五十一点という点数が書かれている。
「うおー! 五十一点! ギリッギリセーフ!!」
「すごい! よかったねみっちゃん!!」
「勉強頑張った甲斐があったねぇミッチー! 五十一点だって! すごいぃぃぃ!」
五十点を下回る点数だったのではないかと心配していた創、匡史、茜は、喜びのあまり海茅のテスト用紙を掲げて大はしゃぎした。
クラスメイト全員に聞こえる声で「五十一点」を連呼された海茅は、ぐるぐる目を回して創からテスト用紙を引ったくる。
「も、もう! みんなに聞こえちゃったじゃん! 恥ずかしいよぉー!」
「ご、ごめん! 嬉しすぎて我を忘れてた……!」
クラスでドッと笑いが沸き起こる。そしていつしか教室が拍手に包まれた。クラスメイトも、元学年最下位の海茅が勉強を頑張っていたことを知っていたからだろう。
たったの五十一点で祝われるのは恥ずかしかったが、それでも頑張りを認められたことは嬉しかった。
他の教科も、顧問と約束していた点数よりほんの少し上回る点数だった。
テスト結果を報告すると、顧問は顔をほころばせた。
「よく頑張ったな、彼方」
「ありがとうございます!」
「じゃあ次は全教科六十点目指そうな」
「えっ」
どうやら、顧問はこれで満足してくれないらしい。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
スペクターズ・ガーデンにようこそ
一花カナウ
児童書・童話
結衣には【スペクター】と呼ばれる奇妙な隣人たちの姿が見えている。
そんな秘密をきっかけに友だちになった葉子は結衣にとって一番の親友で、とっても大好きで憧れの存在だ。
しかし、中学二年に上がりクラスが分かれてしまったのをきっかけに、二人の関係が変わり始める……。
なお、当作品はhttps://ncode.syosetu.com/n2504t/ を大幅に改稿したものになります。
改稿版はアルファポリスでの公開後にカクヨム、ノベルアップ+でも公開します。
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。
氷鬼司のあやかし退治
桜桃-サクランボ-
児童書・童話
日々、あやかしに追いかけられてしまう女子中学生、神崎詩織(かんざきしおり)。
氷鬼家の跡取りであり、天才と周りが認めているほどの実力がある男子中学生の氷鬼司(ひょうきつかさ)は、まだ、詩織が小さかった頃、あやかしに追いかけられていた時、顔に狐の面をつけ助けた。
これからは僕が君を守るよと、その時に約束する。
二人は一年くらいで別れることになってしまったが、二人が中学生になり再開。だが、詩織は自身を助けてくれた男の子が司とは知らない。
それでも、司はあやかしに追いかけられ続けている詩織を守る。
そんな時、カラス天狗が現れ、二人は命の危険にさらされてしまった。
狐面を付けた司を見た詩織は、過去の男の子の面影と重なる。
過去の約束は、二人をつなぎ止める素敵な約束。この約束が果たされた時、二人の想いはきっとつながる。
一人ぼっちだった詩織と、他人に興味なく冷たいと言われている司が繰り広げる、和風現代ファンタジーここに開幕!!
不死鳥の巫女はあやかし総長飛鳥に溺愛される!~出逢い・行方不明事件解決篇~
とらんぽりんまる
児童書・童話
第1回きずな児童書大賞・奨励賞頂きました。応援ありがとうございました!!
中学入学と同時に田舎から引っ越し都会の寮学校「紅炎学園」に入学した女子、朱雀桃花。
桃花は登校初日の朝に犬の化け物に襲われる。
それを助けてくれたのは刀を振るう長ランの男子、飛鳥紅緒。
彼は「総長飛鳥」と呼ばれていた。
そんな彼がまさかの成績優秀特Aクラスで隣の席!?
怖い不良かと思っていたが授業中に突然、みんなが停止し飛鳥は仲間の四人と一緒に戦い始める。
飛鳥は総長は総長でも、みんなを悪いあやかしから守る正義のチーム「紅刃斬(こうじんき)」の
あやかし総長だった!
そして理事長から桃花は、過去に不死鳥の加護を受けた「不死鳥の巫女」だと告げられる。
その日から始まった寮生活。桃花は飛鳥と仲間四人とのルームシェアでイケメン達と暮らすことになった。
桃花と総長飛鳥と四天王は、悪のあやかしチーム「蒼騎審(そうきしん)」との攻防をしながら
子供達を脅かす事件も解決していく。
桃花がチームに参加して初の事件は、紅炎学園生徒の行方不明事件だった。
スマホを残して生徒が消えていく――。
桃花と紅緒は四天王達と協力して解決することができるのか――!?
大嫌いなキミに愛をささやく日
またり鈴春
児童書・童話
私には大嫌いな人がいる。
その人から、まさか告白されるなんて…!
「大嫌い・来ないで・触らないで」
どんなにヒドイ事を言っても諦めない、それが私の大嫌いな人。そう思っていたのに…
気づけば私たちは互いを必要とし、支え合っていた。
そして、初めての恋もたくさんの愛も、全部ぜんぶ――キミが教えてくれたんだ。
\初めての恋とたくさんの愛を知るピュアラブ物語/
なんでおれとあそんでくれないの?
みのる
児童書・童話
斗真くんにはお兄ちゃんと、お兄ちゃんと同い年のいとこが2人おりました。
ひとりだけ歳の違う斗真くんは、お兄ちゃん達から何故か何をするにも『おじゃまむし扱い』。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる