47 / 71
5章
第46話 キラキラグループ
しおりを挟む
◇◇◇
「ミッチー!」
放課後、茜が部活に行こうとする海茅と優紀を呼び止めた。
「明日から夏休みだね! 学校で会えなくなる分、いっぱい遊ぼうねー!」
そう言って二人に抱きついた茜の肩に、創が手を乗せる。
「残念でした。喜田さんと彼方さんは、コンクールがあるから夏休みは忙しいでーす」
「あ、そっかー……。いや、でもコンクール終わってからは遊べるよねぇ!?」
「普通にそのあとも部活あるんじゃね?」
「えぇぇ!? 休みないのぉ!?」
海茅と優紀は目を見合わせたあと、子犬のように目をうるませている茜に応える。
「実は、コンクールのあとのことは私たちでも分からないんだぁ」
「お盆くらいは休みなんじゃないかな?」
茜は「そんなあ~……」とがっくり項垂れた。
「お盆は家族で旅行だよぉ……。また五人で遊びたかったよ~……」
「なあ、コンクールって何日なんだ?」
創の質問には、海茅と優紀が声を揃えて即答する。
「「八月十日だよ」」
「それって誰でも聴きに行ける感じ?」
「たぶん?」
自信のなさそうな返事だったが、創にとってはそれで充分のようだった。彼はニッと口角を上げ、茜に声をかけた。
「一緒に聴きに行こうぜ、コンクール」
「行くぅ~!! 絶対行くー!!」
「匡史も誘ったら来るだろ」
「絶対来ると思うー!!」
「じゃあ決まりだな!」
盛り上がっている二人に、海茅と優紀は照れくさそうに笑う。
「そ、そんなに期待しないでね?」
「うわー、見つけたら手振っちゃいそうだから、見つけないようにしないと」
そろそろ部活の時間が始まる。手を振ってから背を向けた海茅と優紀に、茜が念を押した。
「でも、それとは別に遊べたら遊んでねー!」
音楽室に向かっているとき、海茅はふと気になったことを口に出した。
「どうして茜ちゃんと黒間君って、私と仲良くしてくれるんだろう?」
「えっ? 今さらそんなこと言うの!?」
「ううん、どうして地味な私なんかとって意味じゃなくて」
茜たちには、キラキラした六人グループがある。今でも茜たちが主に仲良くしているのはそのグループなのだが、ちょくちょくそのグループを抜けて海茅たちのところに来るのだ。時には昼ごはんを一緒に食べることもある。
優紀はそんなに興味がなさそうな様子だが、事情を知っていたようで教えてくれた。
「別に仲が悪いわけじゃないけど、ちょっと息が詰まる時があるんだって。茜ちゃんが言ってた」
「そうなの? そんな風には見えなかった」
「茜ちゃん、黒間君、多田君の三人って幼馴染だから気心知れてるでしょ? でも他の三人は中学から仲良くなった子たちだから、ちょっと気を遣うみたい」
それを言ったら、海茅も茜たちと中学からの付き合いだ。
首を傾げる海茅に、優紀が肩をすくめる。
「多分だけど、三人の見た目はキラキラグループにぴったりだけど、性格と考え方は私たちとの方が合うんじゃない?」
「そっかあ。キラキラした人たちの中にも色々いるんだね」
「当然。みんな十人十色の人間なんだから」
海茅は、優紀と仲良くなれてよかったと思った。彼女の考え方は海茅の中にはないものばかりだ。それに、周りが気になりビクビクしている海茅と違い、しっかり揺るがない自分を持っている。
海茅にとって、優紀は今まで出会ってきた人の誰よりもかっこいい存在だった。
「ミッチー!」
放課後、茜が部活に行こうとする海茅と優紀を呼び止めた。
「明日から夏休みだね! 学校で会えなくなる分、いっぱい遊ぼうねー!」
そう言って二人に抱きついた茜の肩に、創が手を乗せる。
「残念でした。喜田さんと彼方さんは、コンクールがあるから夏休みは忙しいでーす」
「あ、そっかー……。いや、でもコンクール終わってからは遊べるよねぇ!?」
「普通にそのあとも部活あるんじゃね?」
「えぇぇ!? 休みないのぉ!?」
海茅と優紀は目を見合わせたあと、子犬のように目をうるませている茜に応える。
「実は、コンクールのあとのことは私たちでも分からないんだぁ」
「お盆くらいは休みなんじゃないかな?」
茜は「そんなあ~……」とがっくり項垂れた。
「お盆は家族で旅行だよぉ……。また五人で遊びたかったよ~……」
「なあ、コンクールって何日なんだ?」
創の質問には、海茅と優紀が声を揃えて即答する。
「「八月十日だよ」」
「それって誰でも聴きに行ける感じ?」
「たぶん?」
自信のなさそうな返事だったが、創にとってはそれで充分のようだった。彼はニッと口角を上げ、茜に声をかけた。
「一緒に聴きに行こうぜ、コンクール」
「行くぅ~!! 絶対行くー!!」
「匡史も誘ったら来るだろ」
「絶対来ると思うー!!」
「じゃあ決まりだな!」
盛り上がっている二人に、海茅と優紀は照れくさそうに笑う。
「そ、そんなに期待しないでね?」
「うわー、見つけたら手振っちゃいそうだから、見つけないようにしないと」
そろそろ部活の時間が始まる。手を振ってから背を向けた海茅と優紀に、茜が念を押した。
「でも、それとは別に遊べたら遊んでねー!」
音楽室に向かっているとき、海茅はふと気になったことを口に出した。
「どうして茜ちゃんと黒間君って、私と仲良くしてくれるんだろう?」
「えっ? 今さらそんなこと言うの!?」
「ううん、どうして地味な私なんかとって意味じゃなくて」
茜たちには、キラキラした六人グループがある。今でも茜たちが主に仲良くしているのはそのグループなのだが、ちょくちょくそのグループを抜けて海茅たちのところに来るのだ。時には昼ごはんを一緒に食べることもある。
優紀はそんなに興味がなさそうな様子だが、事情を知っていたようで教えてくれた。
「別に仲が悪いわけじゃないけど、ちょっと息が詰まる時があるんだって。茜ちゃんが言ってた」
「そうなの? そんな風には見えなかった」
「茜ちゃん、黒間君、多田君の三人って幼馴染だから気心知れてるでしょ? でも他の三人は中学から仲良くなった子たちだから、ちょっと気を遣うみたい」
それを言ったら、海茅も茜たちと中学からの付き合いだ。
首を傾げる海茅に、優紀が肩をすくめる。
「多分だけど、三人の見た目はキラキラグループにぴったりだけど、性格と考え方は私たちとの方が合うんじゃない?」
「そっかあ。キラキラした人たちの中にも色々いるんだね」
「当然。みんな十人十色の人間なんだから」
海茅は、優紀と仲良くなれてよかったと思った。彼女の考え方は海茅の中にはないものばかりだ。それに、周りが気になりビクビクしている海茅と違い、しっかり揺るがない自分を持っている。
海茅にとって、優紀は今まで出会ってきた人の誰よりもかっこいい存在だった。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
守護霊のお仕事なんて出来ません!
柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。
死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。
そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。
助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。
・守護霊代行の仕事を手伝うか。
・死亡手続きを進められるか。
究極の選択を迫られた未蘭。
守護霊代行の仕事を引き受けることに。
人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。
「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」
話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎
ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。
【完】ノラ・ジョイ シリーズ
丹斗大巴
児童書・童話
✴* ✴* 母の教えを励みに健気に頑張る女の子の成長と恋の物語 ✴* ✴*
▶【シリーズ1】ノラ・ジョイのむげんのいずみ ~みなしごノラの母の教えと盗賊のおかしらイサイアスの知られざる正体~ 母を亡くしてみなしごになったノラ。職探しの果てに、なんと盗賊団に入ることに! 非道な盗賊のお頭イサイアスの元、母の教えを励みに働くノラ。あるとき、イサイアスの正体が発覚! 「え~っ、イサイアスって、王子だったの!?」いつからか互いに惹かれあっていた二人の運命は……? 母の教えを信じ続けた少女が最後に幸せをつかむシンデレラ&サクセスストーリー
▶【シリーズ2】ノラ・ジョイの白獣の末裔 お互いの正体が明らかになり、再会したノラとイサイアス。ノラは令嬢として相応しい教育を受けるために学校へ通うことに。その道中でトラブルに巻き込まれて失踪してしまう。慌てて後を追うイサイアスの前に現れたのは、なんと、ノラにうりふたつの辺境の民の少女。はてさて、この少女はノラなのかそれとも別人なのか……!?
✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴*
【完結】アシュリンと魔法の絵本
秋月一花
児童書・童話
田舎でくらしていたアシュリンは、家の掃除の手伝いをしている最中、なにかに呼ばれた気がして、使い魔の黒猫ノワールと一緒に地下へ向かう。
地下にはいろいろなものが置いてあり、アシュリンのもとにビュンっとなにかが飛んできた。
ぶつかることはなく、おそるおそる目を開けるとそこには本がぷかぷかと浮いていた。
「ほ、本がかってにうごいてるー!」
『ああ、やっと私のご主人さまにあえた! さぁあぁ、私とともに旅立とうではありませんか!』
と、アシュリンを旅に誘う。
どういうこと? とノワールに聞くと「説明するから、家族のもとにいこうか」と彼女をリビングにつれていった。
魔法の絵本を手に入れたアシュリンは、フォーサイス家の掟で旅立つことに。
アシュリンの夢と希望の冒険が、いま始まる!
※ほのぼの~ほんわかしたファンタジーです。
※この小説は7万字完結予定の中編です。
※表紙はあさぎ かな先生にいただいたファンアートです。
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。
すべての世界で、キミのことが好き♥~告白相手を間違えた理由
立坂雪花
児童書・童話
✨.゚・*..☆.。.:*✨.☆.。.:.+*:゚+。✨.゚・*..☆.。.:*✨
結愛は陸のことが好きになり、告白しようとしたけれど、間違えて悠真に告白することになる。そうなった理由は、悠真の元に届いたあるメールが原因で――。
☆綾野結愛
ヒロイン。
ピンクが大好きな中学二年生!
うさぎに似ている。
×
☆瀬川悠真
結愛の幼なじみ。
こっそり結愛のことがずっと好き。
きりっとイケメン。猫タイプ
×
☆相川陸
結愛が好きになった人。
ふんわりイケメン。犬タイプ。
結愛ちゃんが告白相手を間違えた理由は?
悠真の元に、未来の自分からメール?
☆。.:*・゜
陸くんに告白するはずだったのに
間違えて悠真に。
告白してからすれ違いもあったけれど
溺愛される結愛
☆。.:*・゜
未来の自分に、過去の自分に
聞きたいことや話したい事はありますか?
☆。.:*・゜
――この丘と星空に、キミがいる。そんな景色が見たかった。
✩.*˚第15回絵本・児童書大賞エントリー
散りばめられたきずなたち✩.*˚
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

児童絵本館のオオカミ
火隆丸
児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる