【完結】またたく星空の下

mazecco

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4章

第39話 報告

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 ◇◇◇

 翌日、優紀との約束を守るために海茅はちゃんと登校した。時間があれば成績表を見てため息を吐く海茅。顧問にどうやって懇願しようかと考えると授業どころではなかった。
 放課後、海茅はカタカタ震えながら音楽室の教師控室をノックした。ドアを開けると、顧問が目で向かいの椅子に座るよう合図する。

「どうした?」
「あ、あの。期末テストの成績を報告しに来ました……」

 海茅が差し出した紙ぺらを受け取った顧問は、一瞥して彼女を睨みつける。

「三教科赤点か」
「はい……」
「俺がテスト前に言ったこと、覚えてるか?」
「は、はい。でも……っ」

 海茅は勢いよく立ち上がり、腰を九十度に曲げる。

「お願いします!! コンクールに出させてください!! お願いします!!」

 この一日悩んだ海茅は、言い訳をせずにひたすら頭を下げることに決めた。この一週間はすごく勉強したとか、前回に比べたら何十点も成績が上がったんだから頑張った方だとか、伝えたい努力はたくさんあった。だが、顧問が求めた結果を出せなかったことには変わりないのだから、何を言っても説得力がない。
 海茅は、ただひたすらコンクールに出たいという想いを伝えるしかなかった。
 しかし、顧問の目は冷たい。

「俺は一教科でも赤点を取ったらコンクールに出させないといった」
「はい……! でも、出たいんです! お願いします!!」
「そこまで出たいなら、どうして勉強しなかった? 勉強して赤点を取らなかったらよかっただけの話だろう」

 勉強は精一杯した。今まで生きてきた中で一番頑張った。それを「勉強しなかった」の一言で済ませられるのは腹が立つ。
 あと一カ月……いや、あと一週間あれば、きっと全教科赤点を免れただろう。海茅は勉強しなかったのではない。時間が足りなかっただけだ。時間さえあれば、赤点なんて取らなかった。
 そもそも、海茅は全教科一桁から三十点台まで点数を引き上げたのだ。数学なんて五十七点も取ったし、理科は四十二点。これこそが海茅が勉強を頑張った証拠ではないか。なぜそれを顧問は分かってくれないのだろう。
 海茅の頭の中が、頑張りを認めてくれない顧問への不満でいっぱいになる。
 海茅は拳を握りしめ、唇を噛んだ。
 しかし、それを顧問に言えないのは、それがただの言い訳だと分かっているからだ。
 時間ならたくさんあった。テスト一週間前からしか勉強しなかったのは海茅自身。
 成績は上がったが、それは自分の基準で考えたときであって、平均を大きく下回っていることに変わりはない。
 顧問の「勉強しなかった」という言葉は、テスト期間のことを言っているのではない。海茅が中学に入ってから今までの三カ月間のことを言っている。
 それなら海茅に言い返せる言葉なんて、一つもない。
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