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1章
第9話 またたく星空
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その週の土曜日、パート練習をしているときに見知らぬ女性が音楽室に入ってきた。一年部員が小さい声で挨拶をしていると、彼女に気付いた樋暮先輩と段原先輩が顔をほころばせて駆け寄った。
「みんな! 紹介するね。この方は、パーカッションのOBの先輩! 今は全国大会の常連高校でパーカッションをされているすごい方なんだ!」
いつもより声を弾ませた段原先輩が紹介すると、OBが海茅たちに手を振った。
「どうもどうも! うわー小さいねぇ! 小学生みたい!」
「ちょっと前まで小学生でしたからね」
OBは気さくで面白い人だった。一年部員はすぐに打ち解け、笑顔を彼女たちに向けている。
「で、君たち。コンクールではどの楽器担当するのー?」
優紀たちは元気に担当楽器を伝えた。
しかし海茅は、俯き加減で答える。
「……シンバルが主です」
恥ずかしそうにそう言った海茅を見て、OBの先輩はハハーンと口角を上げた。
そしてスタンドからクラッシュシンバルを持ち上げ、くるくると回す。
「クラッシュシンバルっておサルさんのイメージが強いから、どうしてもバカッぽく思われがちだよね」
海茅も全くの同意だが、頷いていいのかどうか分からず曖昧な声を出した。
そんな海茅に、OBはシンバルを太ももに当てて軽く振動させながら言葉を続けた。
「でもね――」
OBが片方のシンバルを大きく振り下ろす。
「……っ!」
海茅の目の前に、またたく星空が広がった。シャーン……と余韻が残る金色のきらめきが、シンバルの間から生まれ音楽室に散らばっていく。
今まで聴いたことのなかったシンバルの美しい音色に茫然としている海茅を、OBがビシッと指さした。
「曲の山場を盛り上げる大役。これほどかっこいい楽器はないよ」
次にOBは、シンバル同士を軽く当てた。先ほどの力強い音とは違い、微かに聞こえる妖精の囁き声のような音がシンバルから生まれる。
「クラッシュシンバルは、当てるポイント、当てる角度、当てる高さ……そして気持ち。それらで音色が繊細に変わる。ま、どの楽器もそうなんだけどさ」
OBは、海茅が担当するクラッシュシンバルの楽譜をつついた。
「ここではどんな音色を奏でたい? そんな風に考えたことはある?」
小さく首を横に振った海茅に、OBはニッと笑った。
「楽器は音楽を表現するためのツールだ。音が鳴っただけで満足されちゃあ困るんだよ。シンバルナメんな。こいつで良い音を奏でたかったら、毎日魂込めて練習しろ」
「みんな! 紹介するね。この方は、パーカッションのOBの先輩! 今は全国大会の常連高校でパーカッションをされているすごい方なんだ!」
いつもより声を弾ませた段原先輩が紹介すると、OBが海茅たちに手を振った。
「どうもどうも! うわー小さいねぇ! 小学生みたい!」
「ちょっと前まで小学生でしたからね」
OBは気さくで面白い人だった。一年部員はすぐに打ち解け、笑顔を彼女たちに向けている。
「で、君たち。コンクールではどの楽器担当するのー?」
優紀たちは元気に担当楽器を伝えた。
しかし海茅は、俯き加減で答える。
「……シンバルが主です」
恥ずかしそうにそう言った海茅を見て、OBの先輩はハハーンと口角を上げた。
そしてスタンドからクラッシュシンバルを持ち上げ、くるくると回す。
「クラッシュシンバルっておサルさんのイメージが強いから、どうしてもバカッぽく思われがちだよね」
海茅も全くの同意だが、頷いていいのかどうか分からず曖昧な声を出した。
そんな海茅に、OBはシンバルを太ももに当てて軽く振動させながら言葉を続けた。
「でもね――」
OBが片方のシンバルを大きく振り下ろす。
「……っ!」
海茅の目の前に、またたく星空が広がった。シャーン……と余韻が残る金色のきらめきが、シンバルの間から生まれ音楽室に散らばっていく。
今まで聴いたことのなかったシンバルの美しい音色に茫然としている海茅を、OBがビシッと指さした。
「曲の山場を盛り上げる大役。これほどかっこいい楽器はないよ」
次にOBは、シンバル同士を軽く当てた。先ほどの力強い音とは違い、微かに聞こえる妖精の囁き声のような音がシンバルから生まれる。
「クラッシュシンバルは、当てるポイント、当てる角度、当てる高さ……そして気持ち。それらで音色が繊細に変わる。ま、どの楽器もそうなんだけどさ」
OBは、海茅が担当するクラッシュシンバルの楽譜をつついた。
「ここではどんな音色を奏でたい? そんな風に考えたことはある?」
小さく首を横に振った海茅に、OBはニッと笑った。
「楽器は音楽を表現するためのツールだ。音が鳴っただけで満足されちゃあ困るんだよ。シンバルナメんな。こいつで良い音を奏でたかったら、毎日魂込めて練習しろ」
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