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決戦編:裏S級との戦い
お姉ちゃん
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大人たちとの話し合いで疲れた様子のアーサーが、お風呂から上がり寝室に戻って来た。はぁ~と深いため息をついてベッドに寝転んだ彼の上にモニカが飛び乗る。
「ぐえぇっ!」
「ねえアーサー! 私考えたんだけど~」
「なにぃ?」
疲れ切って眠いのか目がとろんとしているアーサーに、モニカはニパッと笑って言った。
「そろそろ私がお姉ちゃんを名乗ってもいいと思うのよねー!」
「……え!?」
「ほら、私たち双子じゃない? そもそもどうしてアーサーがお兄ちゃんなの? 同じ時に生まれたのに」
「そ、それは、それはモニカ、どうしてって、ミアーナがそう言ってたからじゃないかぁ……!」
アーサーは明らかにうろたえていた。
「モ、モニカッ、どうして急にそんなこと言うのぉ!? 僕がお兄ちゃんなのやだ!?」
「やだじゃないけど、私だってアーサーのお姉ちゃんになってみたいもん!」
「どうして!?」
「だって私より背が小さいし、体も小さいし、年下みたいなんだもん」
「ンアーーーーーー!!」
気にしていることをドスドスと無遠慮に攻撃され、アーサーは理性を失った。上に乗っていたモニカを押し倒し、今度はアーサーが彼女に馬乗りになる。
「ア……アーサー……?」
ヒク、とモニカの顔が引きつった。感情が昂ったのか、アーサーの瞳孔が細くなっている。
「背は僕の方が低いけど、力はモニカより強いよ」
「そ、そうね……? えーっと、アーサー、ごめん、やっぱりアーサーがお兄ちゃんのままでいいから……」
「体は僕の方が小さいけど、力はモニカより強いよ」
(力が強いことしか言えないのかしら……)
怒ったアーサーを落ち着かせようとヘラヘラしていたモニカだったが、よく考えてみればそれもおかしなことだということに気付いた。
(ちょっと待ってよ。力が強かったらお兄ちゃんになれるの? そんなのおかしくない?)
力でねじ伏せようとするアーサーにだんだんと腹が立ってきたモニカは頬を膨らませる。
「そう? 力はアーサーの方が強いかもしれないけど、そんなアーサーにだって魔法で私は勝てるわよ」
「へえ? やってみたら?」
「むぅ~!」
挑発されたモニカは手のひらをアーサーに向け、歌を歌った。オーヴェルニュ家を壊してしまわないよう、氷魔法を放ったが……。
「へ?」
アーサーは凍らなかった。それどころか全く氷魔法が効いていない。
アーサーはペロッと自分の指を舐め、口角を上げた。
「シルヴェストルの魔力と血が入った僕は、反魔法がいつでも使えるようになったよ。もうモニカの魔法は効かない」
「むぅぅぅ!」
足をバタつかせてもアーサーはどいてくれない。
「ね? 僕の方がお兄ちゃんでしょ? だからお姉ちゃんになりたいなんて言わないで?」
「むぅぅぅ! だったらこれでどうよー!!」
モニカの歌声を聞いて、アーサーは「ヒッ」と顔を真っ青にして部屋の隅まで慌てて逃げた。
「ちょっ……モ、モニカ! 今聖魔法使おうとしたなー!?」
「そうよ! ふっふっふ、他の魔法が効かなくなったって、聖魔法には敵わないでしょ?」
「ひぐぅ……っ」
形勢逆転。今度はモニカがアーサーに詰め寄る番だ。
「さあアーサー。力でも私に勝てないわねえ。これはもう私がお姉ちゃんってことで決まりじゃない?」
「ち、ちがっ、ぼ、僕がお兄ちゃんだもん……っ」
「どうして? アーサーが先に言ったのよ? 力が強い方が上だって」
「そ、そんなこと言ってないぃぃ……」
「言ってたわ。言ってたわよねえ?」
「ひぅ……。言ってたけどぉ……だってそれしかモニカに勝てないと思ったんだもん!」
(そんなことはないんだけど……)
今となっては目に涙を浮かべてぷるぷる震えているアーサー。まるで雨に濡れた子犬を見ているようで、モニカの胸がときめいた。
「うぅぅ……っ、その可愛さは反則だわアーサー……っ」
「かわいいって言わないでよぉ……僕がお兄ちゃんなんだからぁぁぁ……」
「どうしてそんなにお兄ちゃんがいいの? いいじゃない別に弟でも」
「よくない! だってモニカの弟はもう二人いるじゃないかぁぁ……!」
「えっ」
「僕はモニカのたった一人のお兄ちゃんでいたいんだぁぁぁ!」
「ア……アーサァァァ……!」
私のお兄ちゃんはなんて可愛い生き物なんだろう世界一可愛い最高、とモニカは脳内で叫び、アーサーを抱きしめた。
「もうアーサーがお兄ちゃんでいい!」
「ほんと……? よかったぁぁ……」
「でも、一回だけ私のことお姉ちゃんって呼んでぇ?」
「えぇ……」
「ねえ、お願い~」
モニカに可愛い声でおねだりされ、アーサーはムスッとした顔で仕方なく言う。
「……お姉ちゃん……」
「きゃーーーーー!! ねえ、もう一回!」
「一回だけって言ったのに!」
「おねがぁい! もう一回だけ!」
「お姉ちゃん……」
「んきゃーーーー!!」
その日モニカは「もう一回だけ」と言って、何度もアーサーに「お姉ちゃん」と呼ばせた。満足した頃には空が明るんでおり、次の日は二人揃って寝坊した。
「ぐえぇっ!」
「ねえアーサー! 私考えたんだけど~」
「なにぃ?」
疲れ切って眠いのか目がとろんとしているアーサーに、モニカはニパッと笑って言った。
「そろそろ私がお姉ちゃんを名乗ってもいいと思うのよねー!」
「……え!?」
「ほら、私たち双子じゃない? そもそもどうしてアーサーがお兄ちゃんなの? 同じ時に生まれたのに」
「そ、それは、それはモニカ、どうしてって、ミアーナがそう言ってたからじゃないかぁ……!」
アーサーは明らかにうろたえていた。
「モ、モニカッ、どうして急にそんなこと言うのぉ!? 僕がお兄ちゃんなのやだ!?」
「やだじゃないけど、私だってアーサーのお姉ちゃんになってみたいもん!」
「どうして!?」
「だって私より背が小さいし、体も小さいし、年下みたいなんだもん」
「ンアーーーーーー!!」
気にしていることをドスドスと無遠慮に攻撃され、アーサーは理性を失った。上に乗っていたモニカを押し倒し、今度はアーサーが彼女に馬乗りになる。
「ア……アーサー……?」
ヒク、とモニカの顔が引きつった。感情が昂ったのか、アーサーの瞳孔が細くなっている。
「背は僕の方が低いけど、力はモニカより強いよ」
「そ、そうね……? えーっと、アーサー、ごめん、やっぱりアーサーがお兄ちゃんのままでいいから……」
「体は僕の方が小さいけど、力はモニカより強いよ」
(力が強いことしか言えないのかしら……)
怒ったアーサーを落ち着かせようとヘラヘラしていたモニカだったが、よく考えてみればそれもおかしなことだということに気付いた。
(ちょっと待ってよ。力が強かったらお兄ちゃんになれるの? そんなのおかしくない?)
力でねじ伏せようとするアーサーにだんだんと腹が立ってきたモニカは頬を膨らませる。
「そう? 力はアーサーの方が強いかもしれないけど、そんなアーサーにだって魔法で私は勝てるわよ」
「へえ? やってみたら?」
「むぅ~!」
挑発されたモニカは手のひらをアーサーに向け、歌を歌った。オーヴェルニュ家を壊してしまわないよう、氷魔法を放ったが……。
「へ?」
アーサーは凍らなかった。それどころか全く氷魔法が効いていない。
アーサーはペロッと自分の指を舐め、口角を上げた。
「シルヴェストルの魔力と血が入った僕は、反魔法がいつでも使えるようになったよ。もうモニカの魔法は効かない」
「むぅぅぅ!」
足をバタつかせてもアーサーはどいてくれない。
「ね? 僕の方がお兄ちゃんでしょ? だからお姉ちゃんになりたいなんて言わないで?」
「むぅぅぅ! だったらこれでどうよー!!」
モニカの歌声を聞いて、アーサーは「ヒッ」と顔を真っ青にして部屋の隅まで慌てて逃げた。
「ちょっ……モ、モニカ! 今聖魔法使おうとしたなー!?」
「そうよ! ふっふっふ、他の魔法が効かなくなったって、聖魔法には敵わないでしょ?」
「ひぐぅ……っ」
形勢逆転。今度はモニカがアーサーに詰め寄る番だ。
「さあアーサー。力でも私に勝てないわねえ。これはもう私がお姉ちゃんってことで決まりじゃない?」
「ち、ちがっ、ぼ、僕がお兄ちゃんだもん……っ」
「どうして? アーサーが先に言ったのよ? 力が強い方が上だって」
「そ、そんなこと言ってないぃぃ……」
「言ってたわ。言ってたわよねえ?」
「ひぅ……。言ってたけどぉ……だってそれしかモニカに勝てないと思ったんだもん!」
(そんなことはないんだけど……)
今となっては目に涙を浮かべてぷるぷる震えているアーサー。まるで雨に濡れた子犬を見ているようで、モニカの胸がときめいた。
「うぅぅ……っ、その可愛さは反則だわアーサー……っ」
「かわいいって言わないでよぉ……僕がお兄ちゃんなんだからぁぁぁ……」
「どうしてそんなにお兄ちゃんがいいの? いいじゃない別に弟でも」
「よくない! だってモニカの弟はもう二人いるじゃないかぁぁ……!」
「えっ」
「僕はモニカのたった一人のお兄ちゃんでいたいんだぁぁぁ!」
「ア……アーサァァァ……!」
私のお兄ちゃんはなんて可愛い生き物なんだろう世界一可愛い最高、とモニカは脳内で叫び、アーサーを抱きしめた。
「もうアーサーがお兄ちゃんでいい!」
「ほんと……? よかったぁぁ……」
「でも、一回だけ私のことお姉ちゃんって呼んでぇ?」
「えぇ……」
「ねえ、お願い~」
モニカに可愛い声でおねだりされ、アーサーはムスッとした顔で仕方なく言う。
「……お姉ちゃん……」
「きゃーーーーー!! ねえ、もう一回!」
「一回だけって言ったのに!」
「おねがぁい! もう一回だけ!」
「お姉ちゃん……」
「んきゃーーーー!!」
その日モニカは「もう一回だけ」と言って、何度もアーサーに「お姉ちゃん」と呼ばせた。満足した頃には空が明るんでおり、次の日は二人揃って寝坊した。
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