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決戦編:バンスティンダンジョン
オアシスエリア(ジルとアーサー除く)
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――このように、アーサーとモニカ、そしてS級冒険者は、少しずつ地下洞窟を攻略していった。
洞窟地下に蠢く魔物はほとんどがA級とS級。そして一階ごとに中ボスである、王族が仕入れたのであろう凶悪な魔物の魂魄を身に宿したSSS級の変異種魔物が一体~三体待ち受けていた。ヒト型魔物も生息していたので、聖魔法を使わなければならないリアーナとモニカは、強制的に魔力を奪われた。
ダンジョンを進むごとにごっそり体力と魔力が削り取られる。また、階段の前には決まって謎解きが設置されており、ジルとマデリアとアーサーは脳みそまでクタクタだ。
道中で判明したのだが、アーサーが地下一階の謎解きで飲んだ液体は、一本は液状にした魔物の死体、もう一体は反魔法液だった。それに気付いたのは、アーサーが魔物と戦っている時に深い傷を負ったときだった。回復魔法を受けても回復しなかったため、反魔法を飲まされている状態だと分かった。
その上、アーサーはどこかでリンクスの指輪を紛失していた。回復魔法とエリクサーが効かないうえに回復速度を上げる役割を担っていた指輪がなくなり、さすがのアーサーも参ってしまう。アーサーは自作の薬でなんとか傷と痛みをごまかしていた。
苦戦を強いられることも度々あったものの、彼らは少しずつ、しかし確実に地下洞窟を進んでいった。
魔法使いの魔力を温存しておこうと、主にカミーユとクルドが大活躍だ。やはりS級パーティリーダーはだてではない。
しかし、地下四十階まで進んだとき――
ジルとアーサーにとって、相性が最悪な魔物とぶつかってしまった。
その頃には、バンスティンダンジョンに潜ってから半年が経っていた。
体力なんて、もうあってないようなものだ。食料も少なくなっており、切り詰めていたので頭もほとんど働かない。今でも元気なのはリアーナただ一人だった。
「ったく……どこまで続くんだよこのダンジョンはよぉ……!」
地下四十階の奥にも地下に続く扉があるのを見て、カミーユが声を荒らげる。
くたびれているカトリナが、投げやりに応えた。
「四十階なんて中途半端な数字で終わりっこないわァ……。きっと少なくとも五十階はあるでしょうね」
「だぁぁ……。そりゃこんなとこぶち込まれたら誰だって死ぬに決まってんだろうがぁぁ……」
「ほんと、パーティ一組で放り投げられていたら、私たちでも死んでたわねェ」
「まあ……よくここまで誰も死ななかったこった……」
もうみんな死にかけているがな、とカミーユが小さく呟いた。
謎解きを解き、地下の階段をおりる一行。
地下四十階は、地下深くとは思えないほと明るく、一面が花畑だった。しかしその花たちは……黒や深紫など、おどろおどろしい色と形状をしている。
「光だぁ……」
アーサーとモニカが頬を緩めた。半年以上も洞窟に籠っていたため、明るいところに出られただけで心が落ち着く。
しかしカミーユは顔をわずかにしかめていた。
「いやぁ……嫌な予感しかしねえなあ」
「こういう特殊エリアには、決まって厄介な魔物がいるからね」
ジルはそう言ってカミーユと並んで歩いた。
気味が悪いほど魔物がいない。
「なにここ、オアシスエリア?」
「バンスティンダンジョンにオアシスエリアなんてないだろ……」
オアシスエリアとは、魔物が棲息していない、冒険者がゆっくり休めるエリアのことらしい。
当然、そんなことはなかった。
一時間ほど歩いたところで、どこかから女性たちの笑い声が聞こえた。
それを耳にしたジルが顔を真っ青にする。
「ちょっ……と待って……この声……まさか……」
なにかを察したのか、カミーユが虚ろな目をしていた。
「あー……疲れてるしな。しゃねえよ。うん。ま、マデリアとモニカがいるから何とかしてくれるだろうよ」
「うそ。いやだよモニカに醜態見せたくないんだけど。僕戻る。倒してから呼びに来て」
「その方がいいかもな。ジル、お前はどっかで隠れて待機しとけ――」
しかしもう遅かった。
女性の笑い声がだんだんと近づいてきたかと思えば、突然ジルの目の前に姿を現す。
「ひっ……」
「あーら、いいオトコ」
ジルの頬に尖った爪が生えた手を添えた、ピンク髪の美しい女性。背中にはコウモリのような小さな黒い羽が生えており、尻には黒くて長い尻尾が生えている。
「サキュバス……」
「ん~。いいオトコばっかりで迷っちゃう。これは取り合いのコロシアイになるかな~?」
「……」
サキュバス。誘惑魔法と結界魔法を使い、男性を誘惑して精気を吸いとる魔物だ。普通のサキュバスであればF級魔物なので、こんな高ランクなダンジョンに棲息していないはずだ。おそらく、王族が手に入れた魂魄より生まれた、特殊なサキュバスなのだろう。
彼女に続き、男性冒険者の前にポン、ポン、と音を立てて姿を現す十人のサキュバスたちと、女性冒険者の前に姿を現した十人のインキュバスたち。
サキュバスに特に人気だったのはブルギーだった。ブルギーの周りには五人ものサキュバスが群がっている。
しかしブルギーは平気な顔をしていた。
「なーんか俺、いっつも誘惑系の魔物に好かれるんだよなあ」
「良い体してるからだろ。俺らも良い体してんのになあ、カミーユ?」
クルドに声をかけられたカミーユは、ヘッと笑ってみせた。
「俺は確かに良い体をしているが、この体はシャナだけのもんだ。きっと匂いで分かんだろ。なあ?」
余裕綽々のカミーユが、ブルギーに群がっているサキュバスに話しかけた。
しかしサキュバスたちは首を横に振る。
「ううん。あなたはちょっと筋肉だるますぎるわ。筋肉っていうのはこの子くらいでいいのよ」
「筋肉だるまぁ……!?」
「それに褐色の肌がたまんない」
ねえ、とサキュバスがブルギーにへばりつく。
隣にいたサンプソンがわざとらしくため息をついた。
「どうして僕はサキュバスに人気がないんだろう。こんなにも色男なのに」
「あなたは女みたいだもん。細すぎるし、髪が長すぎ」
「そっかあ。残念だなあ」
こんな会話をしている間も、サキュバスは男性陣に誘惑魔法をかけていた。それなのに、ブルギーをはじめ、カミーユ、クルド、サンプソンは全く動じない。
不思議そうにしているサキュバスに、ブルギーが言った。
「悪いな。俺らの誘惑耐性はS級なんだ。いくら誘惑かけられたって効かねえよ」
彼らにとっては、誘惑と結界魔法しか使えないサキュバスは、ただの飛べるギャルなだけ。
サキュバスたちは誘惑が効かない男性陣に頬をふくらませる。
「ええええ。つまんなあい」
「ワタシたちとイイコトしようよ」
「ねえ~。精気吸わせてよお~」
「吸わせるかよ。こちとらクタクタなんだよ。そんな体力ねえ」
クルドがサキュバスをくっつけたままカミーユに話しかける。
「なんだ。サキュバス生息地か。つまりこのエリアは実質オアシスエリアだな」
「ああ、俺らにとっては、な」
そしてカミーユは、ジルとアーサーに目をやった。
この、他の状態異常には強い耐性を持っているのに、誘惑だけは耐久性皆無な残念な男二人に。
洞窟地下に蠢く魔物はほとんどがA級とS級。そして一階ごとに中ボスである、王族が仕入れたのであろう凶悪な魔物の魂魄を身に宿したSSS級の変異種魔物が一体~三体待ち受けていた。ヒト型魔物も生息していたので、聖魔法を使わなければならないリアーナとモニカは、強制的に魔力を奪われた。
ダンジョンを進むごとにごっそり体力と魔力が削り取られる。また、階段の前には決まって謎解きが設置されており、ジルとマデリアとアーサーは脳みそまでクタクタだ。
道中で判明したのだが、アーサーが地下一階の謎解きで飲んだ液体は、一本は液状にした魔物の死体、もう一体は反魔法液だった。それに気付いたのは、アーサーが魔物と戦っている時に深い傷を負ったときだった。回復魔法を受けても回復しなかったため、反魔法を飲まされている状態だと分かった。
その上、アーサーはどこかでリンクスの指輪を紛失していた。回復魔法とエリクサーが効かないうえに回復速度を上げる役割を担っていた指輪がなくなり、さすがのアーサーも参ってしまう。アーサーは自作の薬でなんとか傷と痛みをごまかしていた。
苦戦を強いられることも度々あったものの、彼らは少しずつ、しかし確実に地下洞窟を進んでいった。
魔法使いの魔力を温存しておこうと、主にカミーユとクルドが大活躍だ。やはりS級パーティリーダーはだてではない。
しかし、地下四十階まで進んだとき――
ジルとアーサーにとって、相性が最悪な魔物とぶつかってしまった。
その頃には、バンスティンダンジョンに潜ってから半年が経っていた。
体力なんて、もうあってないようなものだ。食料も少なくなっており、切り詰めていたので頭もほとんど働かない。今でも元気なのはリアーナただ一人だった。
「ったく……どこまで続くんだよこのダンジョンはよぉ……!」
地下四十階の奥にも地下に続く扉があるのを見て、カミーユが声を荒らげる。
くたびれているカトリナが、投げやりに応えた。
「四十階なんて中途半端な数字で終わりっこないわァ……。きっと少なくとも五十階はあるでしょうね」
「だぁぁ……。そりゃこんなとこぶち込まれたら誰だって死ぬに決まってんだろうがぁぁ……」
「ほんと、パーティ一組で放り投げられていたら、私たちでも死んでたわねェ」
「まあ……よくここまで誰も死ななかったこった……」
もうみんな死にかけているがな、とカミーユが小さく呟いた。
謎解きを解き、地下の階段をおりる一行。
地下四十階は、地下深くとは思えないほと明るく、一面が花畑だった。しかしその花たちは……黒や深紫など、おどろおどろしい色と形状をしている。
「光だぁ……」
アーサーとモニカが頬を緩めた。半年以上も洞窟に籠っていたため、明るいところに出られただけで心が落ち着く。
しかしカミーユは顔をわずかにしかめていた。
「いやぁ……嫌な予感しかしねえなあ」
「こういう特殊エリアには、決まって厄介な魔物がいるからね」
ジルはそう言ってカミーユと並んで歩いた。
気味が悪いほど魔物がいない。
「なにここ、オアシスエリア?」
「バンスティンダンジョンにオアシスエリアなんてないだろ……」
オアシスエリアとは、魔物が棲息していない、冒険者がゆっくり休めるエリアのことらしい。
当然、そんなことはなかった。
一時間ほど歩いたところで、どこかから女性たちの笑い声が聞こえた。
それを耳にしたジルが顔を真っ青にする。
「ちょっ……と待って……この声……まさか……」
なにかを察したのか、カミーユが虚ろな目をしていた。
「あー……疲れてるしな。しゃねえよ。うん。ま、マデリアとモニカがいるから何とかしてくれるだろうよ」
「うそ。いやだよモニカに醜態見せたくないんだけど。僕戻る。倒してから呼びに来て」
「その方がいいかもな。ジル、お前はどっかで隠れて待機しとけ――」
しかしもう遅かった。
女性の笑い声がだんだんと近づいてきたかと思えば、突然ジルの目の前に姿を現す。
「ひっ……」
「あーら、いいオトコ」
ジルの頬に尖った爪が生えた手を添えた、ピンク髪の美しい女性。背中にはコウモリのような小さな黒い羽が生えており、尻には黒くて長い尻尾が生えている。
「サキュバス……」
「ん~。いいオトコばっかりで迷っちゃう。これは取り合いのコロシアイになるかな~?」
「……」
サキュバス。誘惑魔法と結界魔法を使い、男性を誘惑して精気を吸いとる魔物だ。普通のサキュバスであればF級魔物なので、こんな高ランクなダンジョンに棲息していないはずだ。おそらく、王族が手に入れた魂魄より生まれた、特殊なサキュバスなのだろう。
彼女に続き、男性冒険者の前にポン、ポン、と音を立てて姿を現す十人のサキュバスたちと、女性冒険者の前に姿を現した十人のインキュバスたち。
サキュバスに特に人気だったのはブルギーだった。ブルギーの周りには五人ものサキュバスが群がっている。
しかしブルギーは平気な顔をしていた。
「なーんか俺、いっつも誘惑系の魔物に好かれるんだよなあ」
「良い体してるからだろ。俺らも良い体してんのになあ、カミーユ?」
クルドに声をかけられたカミーユは、ヘッと笑ってみせた。
「俺は確かに良い体をしているが、この体はシャナだけのもんだ。きっと匂いで分かんだろ。なあ?」
余裕綽々のカミーユが、ブルギーに群がっているサキュバスに話しかけた。
しかしサキュバスたちは首を横に振る。
「ううん。あなたはちょっと筋肉だるますぎるわ。筋肉っていうのはこの子くらいでいいのよ」
「筋肉だるまぁ……!?」
「それに褐色の肌がたまんない」
ねえ、とサキュバスがブルギーにへばりつく。
隣にいたサンプソンがわざとらしくため息をついた。
「どうして僕はサキュバスに人気がないんだろう。こんなにも色男なのに」
「あなたは女みたいだもん。細すぎるし、髪が長すぎ」
「そっかあ。残念だなあ」
こんな会話をしている間も、サキュバスは男性陣に誘惑魔法をかけていた。それなのに、ブルギーをはじめ、カミーユ、クルド、サンプソンは全く動じない。
不思議そうにしているサキュバスに、ブルギーが言った。
「悪いな。俺らの誘惑耐性はS級なんだ。いくら誘惑かけられたって効かねえよ」
彼らにとっては、誘惑と結界魔法しか使えないサキュバスは、ただの飛べるギャルなだけ。
サキュバスたちは誘惑が効かない男性陣に頬をふくらませる。
「ええええ。つまんなあい」
「ワタシたちとイイコトしようよ」
「ねえ~。精気吸わせてよお~」
「吸わせるかよ。こちとらクタクタなんだよ。そんな体力ねえ」
クルドがサキュバスをくっつけたままカミーユに話しかける。
「なんだ。サキュバス生息地か。つまりこのエリアは実質オアシスエリアだな」
「ああ、俺らにとっては、な」
そしてカミーユは、ジルとアーサーに目をやった。
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