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北部編:懐かしい顔ぶれ

おっぱいふにふに

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◇◇◇

圧迫感とわずかな重みでカミーユは目を覚ました。布団をめくらなくても分かる。彼の体に足を載せて右腕にしがみついているのはアーサー、左腕にしがみついているふにふにした感触はモニカだ。

「……今日もかよ」

シングルベッドに巨躯のカミーユ一人寝るのでさえも狭苦しいのに、十六歳の子ども二人がぎゅうぎゅう詰めになって入っている。狭い。狭すぎる。

「はぁ……」

カミーユがクルドのアジトに来てからというもの、四日に一回は双子が彼のベッドに潜り込んで寝ている。では残り三日、アーサーとモニカがどこで寝ているかというと、毎晩日替わりでジル、カトリナ、リアーナのベッドで寝ているそうだ。

ジルは双子がベッドに潜り込んできてくれた日は感極まって一睡もできないらしい。朝方カミーユがジルの顔を覗き込むと、涙と鼻血で顔がべとべとになっていたそうだ。

寝相が悪いリアーナのベッドに入った日は、いつの間にかベッドから蹴り落とされていて、双子は床の上で目が覚めた。ちなみにリアーナもベッドから落ちて、大の字になって気持ちよさそうに眠っていた。

カトリナと双子が一緒に寝た時は、モニカがカトリナの背中にへばりつき、アーサーはカトリナのふにふにおっぱいに顔をうずめて最高に幸せそうな寝顔をしていた。目が覚めた彼は「うわぁぁぁぁっ!!」と叫び、何度も彼女に謝っていたようだが、その日は一日おっぱいの感触を思い出しては頬を緩めていた。

「シャナが言ってた通りだわァ。アーサーはおっぱいが大好きだって」

ダイニングルームで紅茶を飲んでいたカトリナは、夕方になってもニヤけ顔がおさまらないアーサーを見てクスクスと笑った。その声で我に返ったアーサーは、慌てて首を横に振る。

「そ、そんなことないもん! 別に好きじゃないもん!」

「あら。好きなんだったらいつでもふにふにしていいのよォ?」

「えっ! ほんと!?」

「アーサー!! カトリナだからってふにふにしちゃだめだからね! アーサーにはスライムがいるでしょぉ!?」

思わずモニカが会話に割り込むと、アーサーは顔を真っ赤にして反論する。

「だ、だってスライムはちょっと触っただけで死んじゃうんだもん!! それに……」

「それに何よ!」

「……スライムよりカトリナのおっぱいの方がきもちいいんだもん!!」

「なーーーー! アーサーのばか! 変態!」

「変態じゃないよ! ほんとにきもちいんだよ! モニカも触ってみるといいよ!」

アーサーはモニカの腕を掴み、カトリナの胸に押し付けた。そのまま彼女はふにふにと触り、へにゃんと笑う。

「……あ、ほんとだ~。きもちいい~」

「でしょ! でしょぉ!?」

だらしない顔でおっぱいをふにふにする双子に好きにさせたまま、カトリナは紅茶を啜った。

「ふふ。赤ちゃんみたいでかわいいわねェ」

それを見ていたクルドパーティは、これでもかというほどドン引きしていた。

「……いいのか、これは。おい、カミーユ。いいのかこれは!?」

「なんだよクルド。うるせえな」

「いや、お前この光景見てなんとも思わねえのか!? おい!」

「何がだよ」

「モニカはまだいい、女同士だとこういうことはするだろう。だがよ、アーサー……あいつは男だぞ!? 十六歳の! 貴族だったら結婚してる歳だぞ!?」

「大丈夫だ。あいつはそんなつもりでカトリナの胸を揉みしだいてるわけじゃねえ」

「それが問題だっつってんだよ!!」

「安心しろ。普段はこんなことしねえ。こいつら、時々こうなるんだよ。俺らと長い間会ってなかったりとか、精神的に追い詰められたあととかに、幼児返りしたみたいに極端に甘えてくるんだ」

「……お前ら、それが可愛いとか思って好きなだけ甘えさせてるんだな?」

カミーユパーティは応えなかったが、彼らの表情は明らかに肯定していた。
クルドは呆れたようにため息を吐き、一人ぼやいた。

「甘えてるのはどっちだか……」
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