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北部編:イルネーヌ町
Bランクダンジョンへの入り口
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素材回収を終えた双子が、互いにしがみつきながら、おそるおそるS級冒険者の元へ戻った。マデリアとサンプソンは空瓶をアイテムボックスへ放り込んで先へ進む。ダンジョンの入り口でマデリアが言っていたような魔物はおらず、ほとんどがFランクダンジョンと同じレベルの弱い敵しかいなかった。
そして、二時間歩いただけで最奥まで辿り着いた。
想像以上にあっさりと到着してしまったので、モニカが物足りない様子だ。アーサーも、アイテムボックスを覗いてため息をついている。
「あれ? これでおしまい……?」
「うーん、あんまり素材集められなかったね」
「ちょっと拍子抜けかもぉ」
二人の会話を聞き、マデリアがクスクスと笑う。
「あなたたち、何を言っているの?」
「え?」
「ここまではエントランス。可愛い魔物が君たちを出迎えてくれたにすぎないよ」
サンプソンはそう言って、最奥の壁に手を当てた。徐々に力を込めて壁を押している。すると、壁の一部がカクンと奥へ押し込まれた。それと連動して、氷が張った地面の下で地響きがする。
「わぁ!?」
「な、なに!?」
振動に耐えられず、モニカが転んでしまった。彼女を守るように抱きしめたアーサーが、戸惑いを隠せず大声を出した。
サンプソンは壁を押し付けながら、爽やかな笑顔を双子に向ける。
「さっきマデリアが言ったように、Bランクダンジョンからは出現魔物の強さが格段に上がるんだ。そんなやつらをただ洞窟に放り込むだけじゃ危険だろう? それに力不足の冒険者が飛び込んでも死亡率が上がってしまうだけだしね。だからこうして、ダンジョンへの入り口を閉じて隠してあるんだ」
「Bランクダンジョンの入り口を開けるためには、まず隠し扉の仕掛けを見破る必要があるの。このダンジョンは壁の一部に仕掛けがあったから、そこを相応の腕力を持った冒険者が押して起動させる必要があるわ」
そう言って、マデリアは地響きがした地面を指さした。
「今、この分厚い氷の下にある隠し扉が開いた状態よ。でもそれだけじゃダンジョンには入ることができない。この、軽く三メートルは張ってる氷を溶かすことができる魔法使いがいなければ、ね」
彼女が軽く杖を振っただけで、氷がみるみる溶けていく。同じことをモニカであれば軽々できるだろうが、他に三メートルも張った氷を瞬時に溶かすことができる魔法使いは、リアーナとシャナくらいしか双子には思い浮かばなかった。
「もう分かっているわね。Bランク以上のダンジョンに潜ることができるのは、本当に優秀な冒険者に限られるの。つまり……Bランク以上のダンジョンの中では、魔物が繁殖し放題」
「具体的に言えば、Bランクダンジョンは主にA級冒険者が潜るところだね。ちなみにAランク以上のダンジョンはほとんどS級の仕事。A級冒険者でも、Aランクダンジョンで命を落とす人たちは少なくないよねえ」
「それどころか、Bランクダンジョンでも命を落とすA級冒険者は多いわよ」
S級冒険者の会話に、アーサーは眉をひそめる。
「マデリアさん、サンプソンさん。僕たちE級冒険者なんだけど……。そんな危ないダンジョンに潜るなんて……」
「バカね。それはあなたたちが真面目に冒険者業をしていないからでしょ。何度も言っているけど、あなたたちの実力はA級よ。つまりここが適正」
「そうだよアーサー。君たちが低ランククエストのぬるま湯に浸かっているなんて、宝の持ち腐れだよ。そんなんじゃ伸びるものも伸びない。成長するためには、ギリギリのところで戦わないと」
マデリアとサンプソンは、カミーユたちと違う意味でスパルタだった。
カミーユパーティは、自分たちの手でボコボコにはするものの、魔物と戦わせることには慎重だった。特にダンジョンに関しては、命の危険が伴うから易々と高ランクへは行くなと口を酸っぱくして双子に言い聞かせていたほどだ。
対してマデリアとサンプソンは、実力に見合った高ランクダンジョンへ行くべきだという考えを持っていた。生きるか死ぬかの極限の状態でこそ、冒険者としての質が上がると言うのだ。
アーサーはもちろん、先ほどまで乗り気だったモニカでさえ、Bランクダンジョンの説明を聞いて不安そうな表情を浮かべていた。そんな彼らの肩を、マデリアは軽く叩く。
「大丈夫よ。私たちはカミーユと違って、弟子をたくさんとってきたわ。冒険者の育て方は分かっているし、ダンジョンで弟子を死なせたこともない。なぜなら、弟子の実力に見合ったダンジョンに行かせているから」
「ダンジョンの恐ろしさを分かっていることは良いことだ。でも、だからこそ積極的に高ランクに慣れておいた方がいいと思うよ。……君たちは、特にね」
サンプソンの含みある言葉にアーサーが首を傾げたが、彼は肩をすくめるだけでそれ以上のことを話そうとしなかった。彼は氷が溶けて現れた地下への階段を、矢を弄びながら降りていく。マデリアも彼に続き、階段の手前で立ち止まっている双子に「早く来なさい」と手招きをした。
そして、二時間歩いただけで最奥まで辿り着いた。
想像以上にあっさりと到着してしまったので、モニカが物足りない様子だ。アーサーも、アイテムボックスを覗いてため息をついている。
「あれ? これでおしまい……?」
「うーん、あんまり素材集められなかったね」
「ちょっと拍子抜けかもぉ」
二人の会話を聞き、マデリアがクスクスと笑う。
「あなたたち、何を言っているの?」
「え?」
「ここまではエントランス。可愛い魔物が君たちを出迎えてくれたにすぎないよ」
サンプソンはそう言って、最奥の壁に手を当てた。徐々に力を込めて壁を押している。すると、壁の一部がカクンと奥へ押し込まれた。それと連動して、氷が張った地面の下で地響きがする。
「わぁ!?」
「な、なに!?」
振動に耐えられず、モニカが転んでしまった。彼女を守るように抱きしめたアーサーが、戸惑いを隠せず大声を出した。
サンプソンは壁を押し付けながら、爽やかな笑顔を双子に向ける。
「さっきマデリアが言ったように、Bランクダンジョンからは出現魔物の強さが格段に上がるんだ。そんなやつらをただ洞窟に放り込むだけじゃ危険だろう? それに力不足の冒険者が飛び込んでも死亡率が上がってしまうだけだしね。だからこうして、ダンジョンへの入り口を閉じて隠してあるんだ」
「Bランクダンジョンの入り口を開けるためには、まず隠し扉の仕掛けを見破る必要があるの。このダンジョンは壁の一部に仕掛けがあったから、そこを相応の腕力を持った冒険者が押して起動させる必要があるわ」
そう言って、マデリアは地響きがした地面を指さした。
「今、この分厚い氷の下にある隠し扉が開いた状態よ。でもそれだけじゃダンジョンには入ることができない。この、軽く三メートルは張ってる氷を溶かすことができる魔法使いがいなければ、ね」
彼女が軽く杖を振っただけで、氷がみるみる溶けていく。同じことをモニカであれば軽々できるだろうが、他に三メートルも張った氷を瞬時に溶かすことができる魔法使いは、リアーナとシャナくらいしか双子には思い浮かばなかった。
「もう分かっているわね。Bランク以上のダンジョンに潜ることができるのは、本当に優秀な冒険者に限られるの。つまり……Bランク以上のダンジョンの中では、魔物が繁殖し放題」
「具体的に言えば、Bランクダンジョンは主にA級冒険者が潜るところだね。ちなみにAランク以上のダンジョンはほとんどS級の仕事。A級冒険者でも、Aランクダンジョンで命を落とす人たちは少なくないよねえ」
「それどころか、Bランクダンジョンでも命を落とすA級冒険者は多いわよ」
S級冒険者の会話に、アーサーは眉をひそめる。
「マデリアさん、サンプソンさん。僕たちE級冒険者なんだけど……。そんな危ないダンジョンに潜るなんて……」
「バカね。それはあなたたちが真面目に冒険者業をしていないからでしょ。何度も言っているけど、あなたたちの実力はA級よ。つまりここが適正」
「そうだよアーサー。君たちが低ランククエストのぬるま湯に浸かっているなんて、宝の持ち腐れだよ。そんなんじゃ伸びるものも伸びない。成長するためには、ギリギリのところで戦わないと」
マデリアとサンプソンは、カミーユたちと違う意味でスパルタだった。
カミーユパーティは、自分たちの手でボコボコにはするものの、魔物と戦わせることには慎重だった。特にダンジョンに関しては、命の危険が伴うから易々と高ランクへは行くなと口を酸っぱくして双子に言い聞かせていたほどだ。
対してマデリアとサンプソンは、実力に見合った高ランクダンジョンへ行くべきだという考えを持っていた。生きるか死ぬかの極限の状態でこそ、冒険者としての質が上がると言うのだ。
アーサーはもちろん、先ほどまで乗り気だったモニカでさえ、Bランクダンジョンの説明を聞いて不安そうな表情を浮かべていた。そんな彼らの肩を、マデリアは軽く叩く。
「大丈夫よ。私たちはカミーユと違って、弟子をたくさんとってきたわ。冒険者の育て方は分かっているし、ダンジョンで弟子を死なせたこともない。なぜなら、弟子の実力に見合ったダンジョンに行かせているから」
「ダンジョンの恐ろしさを分かっていることは良いことだ。でも、だからこそ積極的に高ランクに慣れておいた方がいいと思うよ。……君たちは、特にね」
サンプソンの含みある言葉にアーサーが首を傾げたが、彼は肩をすくめるだけでそれ以上のことを話そうとしなかった。彼は氷が溶けて現れた地下への階段を、矢を弄びながら降りていく。マデリアも彼に続き、階段の手前で立ち止まっている双子に「早く来なさい」と手招きをした。
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