498 / 718
魂魄編:ペンダント
トマトスープ
しおりを挟む
ユーリの薬屋をあとにしたアーサーとモニカは、その足で商人ギルドと食料店、コスメ店へ寄った。
食料店では、パンやミルク、果物、肉、野菜、お菓子などをたっぷり買い込んだ。その日アーサーはそういう気分なのか、バナナではなくトマトを齧りながら町を歩いていた。
アーサーのトマトの齧り方は独特で、トマトの皮を一カ所噛み切り、その隙間から汁をちゅーちゅー吸う。だんだんとしぼんでいくトマトを、モニカはりんごを齧りながら眺めていた。
コスメ店では、ヘアケアセットを購入した。モニカの髪はおしりが隠れるほど長いので、ヘアケア用品をすぐに使い切ってしまう。彼女のふわふわつやつやヘアーには、かなりの労力とお金がかかっているのだ。ちなみに、彼女のヘアケア用品の余りを使っているアーサーの髪も、彼女と同じくふわふわつやつやだった。
たくさん買い物をしても、今日買い取ってもらったエリクサーの収入は有り余っていた。
家へ帰った双子は、調合室へ行き、棚にならんだ薬素材の瓶を一本手に取った。そしてその瓶の中に、硬貨をザーッと流し込む。
その瓶にはモニカの空間魔法が施されていて、今まで貯めてきたお金もそこで保管されていた。
少し前に、アイテムボックスに大金を入れて出歩いている双子に気付いたシャナが、アドバイスしたのだ。
アーサーとモニカがお金持ちなのは、今ではポントワーブ町人どころか、近隣の町人のほとんどが知っている。ひったくったり、家に泥棒しに行く人がいてもおかしくないだろう。だから、目立たないところに隠し持ちなさい、と。
双子はそれに従い、調合室の瓶に紛れさせて、お金を保管することにした。
今日の収入が瓶に流し込まれる様子を眺めながら、モニカはワクワクした声を出す。
「今日でどのくらい溜まったかなあ」
「うーん。だいたい白金貨10万枚くらいかな? やっとここまで貯められたね」
「10万枚! それだけあれば、トロワにまた施設建てられるね!」
「うん! 次はどうしようかなあ。美術館まわりの舗装もしたいし、学校も建てたいし……」
「やりたいこといいっぱい! そう考えると10万枚も少なく感じるわ……」
「ねー。お金はいくらあっても足りないね」
ちなみに、白金貨10万枚あれば、ポントワーブに立派な家を500軒建てることができる。言うまでもなく、とてつもない大金だ。
双子のこの会話を町人に聞かれようものなら、ものすごい形相で睨まれながら、舌打ちをされたに違いない。
「よし! やらなきゃいけないことも済んだし、おなかもペコペコ! モニカ、ごはん食べたい!」
「任せて! じゃあその間にアーサーは、荷物の片づけお願いね!」
「はーい!」
モニカは早速キッチンへ立ち、料理を作り始めた。
トマトスープは彼女の得意料理だ。じゃがいも、にんじん、たまねぎ、キャベツを細かく切り、鍋でグツグツと煮る。
料理歴が長くなってきた彼女は、今では包丁使いも上達して、ほとんど均等に切ることができるようになっていた。
潰したトマトを鍋の中へ放り込み、その日の気分で適当に調味料を加える。そのあとは鼻歌を歌いながらグルグルかき混ぜたら完成だ。
一方アーサーは、ルアンに持って行っていた荷物を整理し、服を洗った。
彼も鼻歌を歌いながら、大きな樽にお湯を張り、服を揉み洗いする。上機嫌のアーサーは、特別に高級泡風呂の液を使って、服を泡まみれにして遊んだ。
良い香りになった服を外に干しに行き、ついでにスライムに餌をやって家に戻ると、おいしそうな料理がテーブルに並んでいた。
「わああ!! おいしそうー!!」
「今日は味付けもバッチリよ! 座って! アーサーのご要望に応えて、トマトスープと、肉の腸詰と、パン! おまけにフルーツの盛り合わせ付き! これはわたしが食べたかったからです!」
「最高モニカ! いただきます!!」
二人は言葉を交わしながら、掃除機のごとく料理を吸い込んでいった。モニカが大きな鍋で作ったスープをまるまる平らげ、買い込んだ肉の腸詰も、パンも、たった一食で半分まで減ってしまう。果物なんて、バスケットにたっぷり買い込んだのに、今ではバナナとりんごがコロンと寂しそうに転がっているだけだった。
満腹になったモニカは、リビングのソファでくつろいだ。
その間にアーサーが皿洗いをして、キッチンとダイニングテーブルを掃除する。ピカピカに磨いたあとは、モニカの隣に座ってうたた寝をした。
そして、お昼寝から目覚めたらエリクサー作りをする。トロワに施設を建てたいという目標があるので、二人ともはりきってエリクサー作りに勤しんだ。
あっという間に夜になり、双子は長風呂をしてからベッドに潜り込む。やはり自分の家が一番落ち着くのか、その日は二人とも夢も見ずにぐっすり眠った。
食料店では、パンやミルク、果物、肉、野菜、お菓子などをたっぷり買い込んだ。その日アーサーはそういう気分なのか、バナナではなくトマトを齧りながら町を歩いていた。
アーサーのトマトの齧り方は独特で、トマトの皮を一カ所噛み切り、その隙間から汁をちゅーちゅー吸う。だんだんとしぼんでいくトマトを、モニカはりんごを齧りながら眺めていた。
コスメ店では、ヘアケアセットを購入した。モニカの髪はおしりが隠れるほど長いので、ヘアケア用品をすぐに使い切ってしまう。彼女のふわふわつやつやヘアーには、かなりの労力とお金がかかっているのだ。ちなみに、彼女のヘアケア用品の余りを使っているアーサーの髪も、彼女と同じくふわふわつやつやだった。
たくさん買い物をしても、今日買い取ってもらったエリクサーの収入は有り余っていた。
家へ帰った双子は、調合室へ行き、棚にならんだ薬素材の瓶を一本手に取った。そしてその瓶の中に、硬貨をザーッと流し込む。
その瓶にはモニカの空間魔法が施されていて、今まで貯めてきたお金もそこで保管されていた。
少し前に、アイテムボックスに大金を入れて出歩いている双子に気付いたシャナが、アドバイスしたのだ。
アーサーとモニカがお金持ちなのは、今ではポントワーブ町人どころか、近隣の町人のほとんどが知っている。ひったくったり、家に泥棒しに行く人がいてもおかしくないだろう。だから、目立たないところに隠し持ちなさい、と。
双子はそれに従い、調合室の瓶に紛れさせて、お金を保管することにした。
今日の収入が瓶に流し込まれる様子を眺めながら、モニカはワクワクした声を出す。
「今日でどのくらい溜まったかなあ」
「うーん。だいたい白金貨10万枚くらいかな? やっとここまで貯められたね」
「10万枚! それだけあれば、トロワにまた施設建てられるね!」
「うん! 次はどうしようかなあ。美術館まわりの舗装もしたいし、学校も建てたいし……」
「やりたいこといいっぱい! そう考えると10万枚も少なく感じるわ……」
「ねー。お金はいくらあっても足りないね」
ちなみに、白金貨10万枚あれば、ポントワーブに立派な家を500軒建てることができる。言うまでもなく、とてつもない大金だ。
双子のこの会話を町人に聞かれようものなら、ものすごい形相で睨まれながら、舌打ちをされたに違いない。
「よし! やらなきゃいけないことも済んだし、おなかもペコペコ! モニカ、ごはん食べたい!」
「任せて! じゃあその間にアーサーは、荷物の片づけお願いね!」
「はーい!」
モニカは早速キッチンへ立ち、料理を作り始めた。
トマトスープは彼女の得意料理だ。じゃがいも、にんじん、たまねぎ、キャベツを細かく切り、鍋でグツグツと煮る。
料理歴が長くなってきた彼女は、今では包丁使いも上達して、ほとんど均等に切ることができるようになっていた。
潰したトマトを鍋の中へ放り込み、その日の気分で適当に調味料を加える。そのあとは鼻歌を歌いながらグルグルかき混ぜたら完成だ。
一方アーサーは、ルアンに持って行っていた荷物を整理し、服を洗った。
彼も鼻歌を歌いながら、大きな樽にお湯を張り、服を揉み洗いする。上機嫌のアーサーは、特別に高級泡風呂の液を使って、服を泡まみれにして遊んだ。
良い香りになった服を外に干しに行き、ついでにスライムに餌をやって家に戻ると、おいしそうな料理がテーブルに並んでいた。
「わああ!! おいしそうー!!」
「今日は味付けもバッチリよ! 座って! アーサーのご要望に応えて、トマトスープと、肉の腸詰と、パン! おまけにフルーツの盛り合わせ付き! これはわたしが食べたかったからです!」
「最高モニカ! いただきます!!」
二人は言葉を交わしながら、掃除機のごとく料理を吸い込んでいった。モニカが大きな鍋で作ったスープをまるまる平らげ、買い込んだ肉の腸詰も、パンも、たった一食で半分まで減ってしまう。果物なんて、バスケットにたっぷり買い込んだのに、今ではバナナとりんごがコロンと寂しそうに転がっているだけだった。
満腹になったモニカは、リビングのソファでくつろいだ。
その間にアーサーが皿洗いをして、キッチンとダイニングテーブルを掃除する。ピカピカに磨いたあとは、モニカの隣に座ってうたた寝をした。
そして、お昼寝から目覚めたらエリクサー作りをする。トロワに施設を建てたいという目標があるので、二人ともはりきってエリクサー作りに勤しんだ。
あっという間に夜になり、双子は長風呂をしてからベッドに潜り込む。やはり自分の家が一番落ち着くのか、その日は二人とも夢も見ずにぐっすり眠った。
11
お気に入りに追加
4,342
あなたにおすすめの小説
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
ぬいぐるみばかり作っていたら実家を追い出された件〜だけど作ったぬいぐるみが意志を持ったので何も不自由してません〜
望月かれん
ファンタジー
中流貴族シーラ・カロンは、ある日勘当された。理由はぬいぐるみ作りしかしないから。
戸惑いながらも少量の荷物と作りかけのぬいぐるみ1つを持って家を出たシーラは1番近い町を目指すが、その日のうちに辿り着けず野宿をすることに。
暇だったので、ぬいぐるみを完成させようと意気込み、ついに夜更けに完成させる。
疲れから眠りこけていると聞き慣れない低い声。
なんと、ぬいぐるみが喋っていた。
しかもぬいぐるみには帰りたい場所があるようで……。
天真爛漫娘✕ワケアリぬいぐるみのドタバタ冒険ファンタジー。
※この作品は小説家になろう・ノベルアップ+にも掲載しています。
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜
夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。
不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。
その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。
彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。
異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!?
*小説家になろうでも公開しております。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。