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魂魄編:ペンダント

トマトスープ

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ユーリの薬屋をあとにしたアーサーとモニカは、その足で商人ギルドと食料店、コスメ店へ寄った。
食料店では、パンやミルク、果物、肉、野菜、お菓子などをたっぷり買い込んだ。その日アーサーはそういう気分なのか、バナナではなくトマトを齧りながら町を歩いていた。
アーサーのトマトの齧り方は独特で、トマトの皮を一カ所噛み切り、その隙間から汁をちゅーちゅー吸う。だんだんとしぼんでいくトマトを、モニカはりんごを齧りながら眺めていた。

コスメ店では、ヘアケアセットを購入した。モニカの髪はおしりが隠れるほど長いので、ヘアケア用品をすぐに使い切ってしまう。彼女のふわふわつやつやヘアーには、かなりの労力とお金がかかっているのだ。ちなみに、彼女のヘアケア用品の余りを使っているアーサーの髪も、彼女と同じくふわふわつやつやだった。

たくさん買い物をしても、今日買い取ってもらったエリクサーの収入は有り余っていた。
家へ帰った双子は、調合室へ行き、棚にならんだ薬素材の瓶を一本手に取った。そしてその瓶の中に、硬貨をザーッと流し込む。

その瓶にはモニカの空間魔法が施されていて、今まで貯めてきたお金もそこで保管されていた。
少し前に、アイテムボックスに大金を入れて出歩いている双子に気付いたシャナが、アドバイスしたのだ。
アーサーとモニカがお金持ちなのは、今ではポントワーブ町人どころか、近隣の町人のほとんどが知っている。ひったくったり、家に泥棒しに行く人がいてもおかしくないだろう。だから、目立たないところに隠し持ちなさい、と。
双子はそれに従い、調合室の瓶に紛れさせて、お金を保管することにした。

今日の収入が瓶に流し込まれる様子を眺めながら、モニカはワクワクした声を出す。

「今日でどのくらい溜まったかなあ」

「うーん。だいたい白金貨10万枚くらいかな? やっとここまで貯められたね」

「10万枚! それだけあれば、トロワにまた施設建てられるね!」

「うん! 次はどうしようかなあ。美術館まわりの舗装もしたいし、学校も建てたいし……」

「やりたいこといいっぱい! そう考えると10万枚も少なく感じるわ……」

「ねー。お金はいくらあっても足りないね」

ちなみに、白金貨10万枚あれば、ポントワーブに立派な家を500軒建てることができる。言うまでもなく、とてつもない大金だ。
双子のこの会話を町人に聞かれようものなら、ものすごい形相で睨まれながら、舌打ちをされたに違いない。

「よし! やらなきゃいけないことも済んだし、おなかもペコペコ! モニカ、ごはん食べたい!」

「任せて! じゃあその間にアーサーは、荷物の片づけお願いね!」

「はーい!」

モニカは早速キッチンへ立ち、料理を作り始めた。
トマトスープは彼女の得意料理だ。じゃがいも、にんじん、たまねぎ、キャベツを細かく切り、鍋でグツグツと煮る。
料理歴が長くなってきた彼女は、今では包丁使いも上達して、ほとんど均等に切ることができるようになっていた。
潰したトマトを鍋の中へ放り込み、その日の気分で適当に調味料を加える。そのあとは鼻歌を歌いながらグルグルかき混ぜたら完成だ。

一方アーサーは、ルアンに持って行っていた荷物を整理し、服を洗った。
彼も鼻歌を歌いながら、大きな樽にお湯を張り、服を揉み洗いする。上機嫌のアーサーは、特別に高級泡風呂の液を使って、服を泡まみれにして遊んだ。
良い香りになった服を外に干しに行き、ついでにスライムに餌をやって家に戻ると、おいしそうな料理がテーブルに並んでいた。

「わああ!! おいしそうー!!」

「今日は味付けもバッチリよ! 座って! アーサーのご要望に応えて、トマトスープと、肉の腸詰と、パン! おまけにフルーツの盛り合わせ付き! これはわたしが食べたかったからです!」

「最高モニカ! いただきます!!」

二人は言葉を交わしながら、掃除機のごとく料理を吸い込んでいった。モニカが大きな鍋で作ったスープをまるまる平らげ、買い込んだ肉の腸詰も、パンも、たった一食で半分まで減ってしまう。果物なんて、バスケットにたっぷり買い込んだのに、今ではバナナとりんごがコロンと寂しそうに転がっているだけだった。

満腹になったモニカは、リビングのソファでくつろいだ。
その間にアーサーが皿洗いをして、キッチンとダイニングテーブルを掃除する。ピカピカに磨いたあとは、モニカの隣に座ってうたた寝をした。

そして、お昼寝から目覚めたらエリクサー作りをする。トロワに施設を建てたいという目標があるので、二人ともはりきってエリクサー作りに勤しんだ。

あっという間に夜になり、双子は長風呂をしてからベッドに潜り込む。やはり自分の家が一番落ち着くのか、その日は二人とも夢も見ずにぐっすり眠った。
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