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画廊編:再会

不審者

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閉店時間が近づくにつれ来客がだんだんと減っていく。アーサーとモニカは夕日が差し込む店内で、誰もいなくなったタイミングを見計らい水を一杯飲んだ。

「んー!今日もたくさんお客さんが来てくれたねー!」

「うん!今日もいくつか商品が売れたし、すっごく順調だね!」

「こんなにお客さんが来てくれるなんて思わなかった!」

「僕もー!やっぱりルアンの人たちは芸術が好きなんだね。きっとポントワーブで画廊を建ててもこんなにお客さんは来なかったよ」

「私もそう思う!ルアンの人たちは好奇心旺盛なのね」

「だからここまで華やかな町になったんだね。納得!」

そんな会話をしていると、ドアの鈴がチリンチリンと鳴った。双子は慌ててコップを置き、営業スマイルをつくって客に声をかけた。

「いらっしゃいませぇ!」

「ゆっくりご覧になってくださいね!」

「……」

「……」

入ってきたのは、マントを身に付けフードを深く被った二人組だった。彼らはしばらくドアの前で立ちすくみ、おぼつかない足取りでこちらに近づいてくる。商品には一切目もくれず、アーサーとモニカだけしか見ていないようだった。不審な二人にアーサーは警戒する。

(様子がおかしい。背格好は僕たちと同じくらい…。子どもか?)

アーサーはさりげなくモニカの前に立った。ぴりっとした空気に気付き、モニカは怯えて兄の制服をきゅっと握る。

その時、ゆっくりと歩いていたマントの二人が一般人とは思えない速さで双子と距離を詰めた。アーサーはモニカを庇いながら咄嗟に蹴りを入れる。だが彼らはそれを軽々と躱した。

「っ!」

驚いているアーサーにマントの二人がぎゅーっと抱きついた。攻撃されるかと身構えていたアーサーとモニカは「へっ?」と間抜けな声を出す。モニカがおそるおそる一人のフードをめくると、懐かしい灰色の瞳とくすんだ金髪の髪が覗いた。

「えっ?!」

アーサーはもう一人のフードをめくった。アーサーと目が合ったのは、うるんだ緑色の瞳だった。

「うそっ!」

「モニカ様!!」

「お兄さま!!!」

「「おひさしぶりです!!」」

かつて険悪な仲だったその姉弟は声を揃えてそう言った。目の前にいるのは安っぽい庶民の服に身を包んだ王女と王子。双子に会えて興奮気味の彼らは顔を紅潮させて汗ばんでいる。アーサーとモニカは思いがけない再会をすぐには理解できず、相方と妹弟をゆっくりと交互に見た。何度かそれを繰り返し、やっと実感が湧いた二人は店内に響き渡る声で叫んだ。

「「えーーーーーーー?!」」

◇◇◇

マントを着た不審者の正体は、ジュリアとウィルクだった。目の前に妹弟がいるのが未だに信じられず、アーサーとモニカは頭が真っ白なまま二人を2階に上げてコーヒーを出した。ジュリアたちは出されたコーヒーを飲むこともせず、ずっとアーサーにしがみついている。

「アーサー様!アーサー様!アーサー様ぁぁっ!!!」

「お"に"い"さ"ま"ぁぁぁぁッ"!!!」

「えっと…これは夢?」

「うん、きっと夢だわ。でもどこからが夢なのかな。もしかして画廊も夢?」

「ああ、だから"夢見"って名前なんだね。なんだ、夢かあ」

「いい夢見れて良かったじゃない。わたしは嬉しいよ。夢でも二人に会えて」

「えへへ、僕も~」

現実を受け止めきれない双子が、おっとりした口調で会話をしている。彼らの平和であたたかい会話を聞くだけで、ジュリアとウィルクはぶわっと涙を溢れさせた。

「あー、夢でも二人を泣かせちゃったよ」

「だめなお兄さんね。しっかりしなさいよ」

「うーん、困ったなあ」

「ああ、なんですのこの…お話を聞いているだけで多幸感に包まれる感覚は…」

「お姉さま、僕もうここを離れたくありません…」

「それが叶えばどんなに幸せなことか…」

兄弟姉妹が4人そろっているのに、夢だと思っている双子と感無量の王子王女がまともに会話をすることがなかった。ジュリアとウィルクは画廊が閉店するまで店に居座り、宿へ戻る双子についていき、双子が眠るベッドへ潜り込んだ。
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