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画廊編:王女と王子のわるだくみ

ビアンナ先生のお知らせ

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「みなさん集まりましたね。おはようございます」

ビアンナ先生が挨拶をすると、リリー寮の生徒が口々に挨拶を返した。

「今日はみなさんにお知らせがあります。さきほど、アーサーとモニカから伝書インコを受け取りました」

「モニカ?!」

「きゃーー!!アーサー?!」

双子の名前を聞き、2年生以上の生徒がざわめいた。一番大きな声をあげたのはグレンダで、口元を手でおさえてぴょんぴょん飛び跳ねてからマーサに抱きついた。そんな親友の背中を軽く叩きながら、マーサ―が呆れた声を出す。

「グレンダったら!全然アーサーのこと忘れられてないじゃない!」

「だ、だってぇ!アーサーよりかっこよくて優しい人なかなかいないんだもん!!」

「それは分かるけどー」

グレンダの他にもアーサーの名前を聞いて黄色い歓声をあげている女子がたくさんいた。男子生徒はモニカのことを思い浮かべてだらしない顔をしている。双子のことを知らない新入生徒は、噂のアーサーとモニカの名前に興味津々だった。そして王女と王子はというと、生徒たちのように騒いだりはしなかったが、鼻息を荒くしてビアンナ先生が話を続けるのを待っていた。

「お静かに。伝書インコに添えられた手紙にこう書いてありました。アーサーとモニカが画廊を始めたそうです。そこではジッピン…はるか遠い異国の芸術作品などを並べてあるそうです。ぜひみなさんに来てほしいと」

「えーーーー!!行くーーーー!!!」

「行きたい行きたい!!」

「先生!そこに行けばアーサーとモニカに会えるんですか?!」

「いえ。アーサーとモニカが売り子をするのはどうやら来月いっぱいまでのようです」

「ええええ!!!」

「そんなあ!!」

「彼らには会えないと思いますが、ジッピンの芸術品を目にできるのはバンスティンでもそこだけでしょう。とても勉強になると思いますよ。私も休暇中に行きたいくらいです」

「先生も行きたいんだったら、みんなで行きましょうよー!!」

「行きません。あなたたちのような貴族の…しかもリリークラスの貴族のですよ?そんな子どもたちを大勢引き連れて出歩くなんてとてもできません。何か起これば処刑ものです」

「大丈夫ですよぉぉぉっ!わたしたちこう見えて強いんですよぉぉぉっ?!」

「強いのは知っています。ですがもっと強い人たちはたくさんいますし、卑怯な手を使う人たちもいるんです。諦めてください」

「えええー!!!」

「長期休暇に入るまであと2か月を切っています。その時にご家族と足を運んでみてはいかがでしょう。画廊の住所はあとで掲示板に貼っておきますので各自確認を。…お伝えしたいことは以上です」

「それじゃあアーサーとモニカに会えないんだってぇぇぇっ!!」

「彼らはポントワーブに住んでいます。画廊に行ったときに立ち寄ればいいではありませんか。まあ、冒険者なのでいない可能性もありますが」

「むぅぅっ…」

「事前に伝書インコを飛ばしておけば予定をあけてくれるでしょう。そうしてください。では、朝食をとってくださいね。またあとで」

ビアンナ先生は用件を伝えて談話室から出て行った。生徒たちもざわざわと双子の話で盛り上がりながら談話室からはけていく。談話室に残ったのはウィルク王子とジュリア王女だけとなった。ウィルクはしょぼんと肩を落とし、小さな声で呟いた。

「…僕たちは城へ戻ったら外出なんてできません。だからお兄さまとお姉さまに会えない…」

「……」

「会いたい…。お兄さま…お姉さま…」

「仮にも王子なんだから、そんな情けない声を出すのはおやめなさい、ウィルク」

「……」

「……」

「お姉さまは会いたくないんですか…?」

「会いたいに決まっているでしょう。だから今考えているのよ」

「考える…?なにを…」

「……」

「お姉さま?」

「静かにしてちょうだい。集中できないわ」

ジュリアの冷たい声にウィルクはムスっと頬を膨らませた。姉から顔を背け、不機嫌そうに背もたれに沈み込み足を組む。

(お姉さまはお二人が本当の姉と兄だと知らないからそんなことが言えるんだ。知っていたらそんな冷静でいられないはずだ。ああ、いてもたってもいられない。いっそ僕だけでもこっそり抜け出して…)

「よし、考えがまとまったわ」

「…なんでしょう」

「抜け出しましょう」

「…え?」

とんでもない発言にウィルクは姉の顔を二度見した。弟と目が合ったジュリアは、ニッと笑いウィルクの耳元に口を寄せる。

「ウィルク。あの事件以降も、先生が夜の見回りをしているのは知っている?」

「あ、はい」

「ジョアンナ先生の日を狙えばいいわ。あの人は考え事ばかりしているから視野が狭い。抜け出すのにはちょうどいいわ。見つかりにくいルートも今考えた」

「お、お姉さま…。一体何を…?まさか本気で抜け出すつもりで…」

「あら、あなたは本気じゃなかったの?だったら私ひとりで行くわ」

そう言って立ち上がったジュリアの腕をウィルクは慌てて掴んだ。

「なに?」

「ぼ、僕もついていくに決まってる!!」

「あら、そう?ちょっと怖いんでしょう?」

「そんなわけありません!僕は王位継承権を持つこの国の王子ですよ!!」

「ばからしい。それがどうしたっていうの。ま、分かったわ。じゃああなたも来るのね。いつでも出発できるように今日中に準備をしておきなさい」

「わ、わかりました」

「…町で私たちの正体がバレないために庶民服を用意しなきゃ。できるだけみすぼらしい恰好がいいわね…。それは私が用意しておくわ。文句は言わないでね」

「はい!僕にできることは?」

「先生や生徒に勘付かれないよう、いつも通りに振舞うこと。できる?」

「そのくらい、言われなくてもできます!」

「さあ、どうかしら」
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