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合宿編:北部のS級冒険者
サンプソンとミント
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「そんでモニカはこいつに気を付けろよ」
「え?」
カミーユがそう言いながら一人の男性を親指でクイと指さした。
「サンプソン。クルドパーティのアーチャだ」
「容姿端麗のS級冒険者、おまけに彼は異常なほどの女好きなのォ。彼に口説かれて惚れなかった女性はいないと北部では有名なのよ」
カトリナの補足を聞いてアーサーが慌ててモニカを守るように抱きしめた。カミーユが指さした先に座っている男性は双子の視線が集まるとニッコリ笑った。垂れ目の瞳は蒼色で、肩まで伸びる薄ピンク色の髪を後ろで束ねている。体格はジルのように細身で長身だった。白馬が似合いそうな人だなあとモニカは思った。
「どうぞよろしく!ここにいる子みんなかわいいね。誰にしようか迷っちゃうよ」
「誰にもすんな!」
「小さい子たちもかわいいけど、やっぱりアデーレちゃんが一番タイプかなあ」
「え?!私ですか?!」
突然名前を呼ばれてアデーレはのけぞった。サンプソンは品定めするような目つきで彼女の全身をじっと見る。
「うん。君、今話題のC級冒険者パーティの一人だよね?たしか…ベニートパーティだったかな」
「S級冒険者のあなたが私たちの名前を認知してるなんて…」
「S級冒険者だからだよ。クラス問わず冒険者の情報は仕入れてるからね。…君は料理がとても上手だとか」
「い、いえ…それほどまでは」
「謙遜しなくていいよ。君たちと合同依頼受けた人たちがみんなそう言ってるんだ。君のダンジョン飯の味が忘れられないってね。僕、料理が上手な女性が大好きなんだ。ねえ、今晩僕にも君の手料理食べさせてくれる?」
「あの、えっと…」
「頼むよアデーレ。君の料理が食べてみたいんだ。なんなら僕も手伝ー…」
「す、すみません!ア、アデーレ姉さんが困ってるんで!!そこまでにしてもらえませんか!!」
「お…っと」
サンプソンがアデーレの耳元で囁きながら肩を抱こうとしたとき、ダフがガタリと立ち上がり大声をあげた。同時にベニートはサンプソンの手首を折れそうなほど強く掴み、イェルドはアデーレを抱き寄せサンプソンから引き離した。ダフは顔を真っ赤にさせてオロオロした様子だったが、ベニートとイェルドは冷たくS級冒険者を睨みつけている。
「すみません。俺たちの大事な仲間なんで、おちょくるのはやめてくれませんか」
「アデーレに気安く触らないでください。そんな軽い女性じゃないです」
「ベニート…イェルド…」
「わお。君たちがベニート君とイェルド君か。なるほどこれは見込みがある。良い目をしているね」
「……」
「それに、僕は女性を大切にする子たちに好感を持つ。あはは。そんなに怒らないで。冗談だよ」
サンプソンは両手をフラフラ振って見せ、3歩うしろへ下がった。まだ睨んでいる二人から目を逸らし、次にダフに目を向ける。
「君もいいね。アデーレのことが好きなのかな?」
「へ?!俺は女にも男にも興味はありません!!」
「あはは!男くさいやつも好きさ」
のらりくらりとかわしながら、サンプソンは元いたソファへ座り直した。C級冒険者が睨んでいても微笑みを返して手を振っている。その態度が余計癇に障り、ベニートとイェルドが歯ぎしりをしていたがアデーレがため息をつき二人をなだめた。
「落ち着いて二人とも。きっとあの人なりの冗談よ」
「冗談でも…」
「もういいから。水でも飲んで落ち着きなさい。ダフもありがとうね。もう座って」
「あ、はい!」
三人を落ち着かせたアデーレはカミーユに目で合図を送った。カミーユは頷き、次の冒険者を紹介する。
「こいつがミントだ。ヒーラーだな」
「よろしくおねがいします!」
ミントと呼ばれた女性は、淡い栗色の髪と茶色の瞳をしていた。背が低く小柄で、化粧っけのないショートカットだからか他のS級冒険者よりずっと幼く見えた。ミントはニパっと笑い生徒たちに手を振った。
「こう見えて三十路だからな。騙されんなよ」
「あ!ちょっとカミーユ!!ばらさないで!あとまだ28歳だし!!」
「立派な三十路じゃねーか」
「ヤメテッ!!」
年齢をバラされたミントは両手で顔を覆い悲痛な叫びをあげた。さすがヒーラーだけあって、リアーナやマデリアと違い感情的に攻撃魔法を放つほど気性が激しくないようだ。ただ足をバタバタさせたり頬を膨らませているだけだったので、そのかわいらしさに生徒たち(主に男子)の頬が緩んだ。
(あ、なんか癒される~…)
(今までけんかっ早いS級冒険者しか見てこなかったからなんだか新鮮…)
(ヒーラーっていいなあ~…)
「…ちょっとアーサー」
「……」
「アーサー?」
「ふぁ?!な、なにモニカ?!」
「だらしないかおしてんじゃないわよ!」
「そ、そんな顔してた?!」
「してたー!!!ミントさん見ながらデレデレ!!」
「し、してないよ!!」
「してたー!!ちょっといいなーって思ったんじゃない?!」
「お、思ってないよ?!」
「ほんとは?」
「思ってないもん!」
「ほんとかなあ?」
アーサーとモニカのやりとりを聞いていたクルドパーティはクスクス笑いながらカミーユたちに尋ねた。
「あの子たち、恋人同士なのかい?」
「微笑ましいなあ~。少年少女の淡い青春って感じがする~」
「ん?いやあいつらは兄妹だが」
「え?そ、そうなのか?」
「ああ。ちと妹のモニカが兄ちゃんのこと好きすぎてこじらせててな」
「いやアーサーもたいがいだと思うぞー?」
カミーユとリアーナがそう答えたのでクルドパーティは双子を二度見した。
「…確かに髪や瞳の色が同じだし…顔立ちも似てるな…」
「でも距離感とか雰囲気はとても兄妹には…」
「あいつら、幼い頃に両親亡くして二人でずっと生きてきたからな。まああいつらのことは気にしないでくれ」
カミーユは内心冷や汗を流しながらごまかした。幼い頃に両親を亡くしたと聞いたクルドパーティはしんみりした表情を浮かべ、それ以上は何も聞いてこなかった。
「え?」
カミーユがそう言いながら一人の男性を親指でクイと指さした。
「サンプソン。クルドパーティのアーチャだ」
「容姿端麗のS級冒険者、おまけに彼は異常なほどの女好きなのォ。彼に口説かれて惚れなかった女性はいないと北部では有名なのよ」
カトリナの補足を聞いてアーサーが慌ててモニカを守るように抱きしめた。カミーユが指さした先に座っている男性は双子の視線が集まるとニッコリ笑った。垂れ目の瞳は蒼色で、肩まで伸びる薄ピンク色の髪を後ろで束ねている。体格はジルのように細身で長身だった。白馬が似合いそうな人だなあとモニカは思った。
「どうぞよろしく!ここにいる子みんなかわいいね。誰にしようか迷っちゃうよ」
「誰にもすんな!」
「小さい子たちもかわいいけど、やっぱりアデーレちゃんが一番タイプかなあ」
「え?!私ですか?!」
突然名前を呼ばれてアデーレはのけぞった。サンプソンは品定めするような目つきで彼女の全身をじっと見る。
「うん。君、今話題のC級冒険者パーティの一人だよね?たしか…ベニートパーティだったかな」
「S級冒険者のあなたが私たちの名前を認知してるなんて…」
「S級冒険者だからだよ。クラス問わず冒険者の情報は仕入れてるからね。…君は料理がとても上手だとか」
「い、いえ…それほどまでは」
「謙遜しなくていいよ。君たちと合同依頼受けた人たちがみんなそう言ってるんだ。君のダンジョン飯の味が忘れられないってね。僕、料理が上手な女性が大好きなんだ。ねえ、今晩僕にも君の手料理食べさせてくれる?」
「あの、えっと…」
「頼むよアデーレ。君の料理が食べてみたいんだ。なんなら僕も手伝ー…」
「す、すみません!ア、アデーレ姉さんが困ってるんで!!そこまでにしてもらえませんか!!」
「お…っと」
サンプソンがアデーレの耳元で囁きながら肩を抱こうとしたとき、ダフがガタリと立ち上がり大声をあげた。同時にベニートはサンプソンの手首を折れそうなほど強く掴み、イェルドはアデーレを抱き寄せサンプソンから引き離した。ダフは顔を真っ赤にさせてオロオロした様子だったが、ベニートとイェルドは冷たくS級冒険者を睨みつけている。
「すみません。俺たちの大事な仲間なんで、おちょくるのはやめてくれませんか」
「アデーレに気安く触らないでください。そんな軽い女性じゃないです」
「ベニート…イェルド…」
「わお。君たちがベニート君とイェルド君か。なるほどこれは見込みがある。良い目をしているね」
「……」
「それに、僕は女性を大切にする子たちに好感を持つ。あはは。そんなに怒らないで。冗談だよ」
サンプソンは両手をフラフラ振って見せ、3歩うしろへ下がった。まだ睨んでいる二人から目を逸らし、次にダフに目を向ける。
「君もいいね。アデーレのことが好きなのかな?」
「へ?!俺は女にも男にも興味はありません!!」
「あはは!男くさいやつも好きさ」
のらりくらりとかわしながら、サンプソンは元いたソファへ座り直した。C級冒険者が睨んでいても微笑みを返して手を振っている。その態度が余計癇に障り、ベニートとイェルドが歯ぎしりをしていたがアデーレがため息をつき二人をなだめた。
「落ち着いて二人とも。きっとあの人なりの冗談よ」
「冗談でも…」
「もういいから。水でも飲んで落ち着きなさい。ダフもありがとうね。もう座って」
「あ、はい!」
三人を落ち着かせたアデーレはカミーユに目で合図を送った。カミーユは頷き、次の冒険者を紹介する。
「こいつがミントだ。ヒーラーだな」
「よろしくおねがいします!」
ミントと呼ばれた女性は、淡い栗色の髪と茶色の瞳をしていた。背が低く小柄で、化粧っけのないショートカットだからか他のS級冒険者よりずっと幼く見えた。ミントはニパっと笑い生徒たちに手を振った。
「こう見えて三十路だからな。騙されんなよ」
「あ!ちょっとカミーユ!!ばらさないで!あとまだ28歳だし!!」
「立派な三十路じゃねーか」
「ヤメテッ!!」
年齢をバラされたミントは両手で顔を覆い悲痛な叫びをあげた。さすがヒーラーだけあって、リアーナやマデリアと違い感情的に攻撃魔法を放つほど気性が激しくないようだ。ただ足をバタバタさせたり頬を膨らませているだけだったので、そのかわいらしさに生徒たち(主に男子)の頬が緩んだ。
(あ、なんか癒される~…)
(今までけんかっ早いS級冒険者しか見てこなかったからなんだか新鮮…)
(ヒーラーっていいなあ~…)
「…ちょっとアーサー」
「……」
「アーサー?」
「ふぁ?!な、なにモニカ?!」
「だらしないかおしてんじゃないわよ!」
「そ、そんな顔してた?!」
「してたー!!!ミントさん見ながらデレデレ!!」
「し、してないよ!!」
「してたー!!ちょっといいなーって思ったんじゃない?!」
「お、思ってないよ?!」
「ほんとは?」
「思ってないもん!」
「ほんとかなあ?」
アーサーとモニカのやりとりを聞いていたクルドパーティはクスクス笑いながらカミーユたちに尋ねた。
「あの子たち、恋人同士なのかい?」
「微笑ましいなあ~。少年少女の淡い青春って感じがする~」
「ん?いやあいつらは兄妹だが」
「え?そ、そうなのか?」
「ああ。ちと妹のモニカが兄ちゃんのこと好きすぎてこじらせててな」
「いやアーサーもたいがいだと思うぞー?」
カミーユとリアーナがそう答えたのでクルドパーティは双子を二度見した。
「…確かに髪や瞳の色が同じだし…顔立ちも似てるな…」
「でも距離感とか雰囲気はとても兄妹には…」
「あいつら、幼い頃に両親亡くして二人でずっと生きてきたからな。まああいつらのことは気にしないでくれ」
カミーユは内心冷や汗を流しながらごまかした。幼い頃に両親を亡くしたと聞いたクルドパーティはしんみりした表情を浮かべ、それ以上は何も聞いてこなかった。
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