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合宿編:四週目・王様ゲーム
午後の王様ゲーム
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午後の"王様ゲーム”が始まった。今回の"王様"はカトリナとモニカだ。"兵士"となったアーサーは、剣を構え合図を待った。
「いきます」
ベニートが矢を落とす。試合開始とともに生徒たちは全員でモニカのまわりを固めた。S級組は、ジルとリアーナがカトリナの傍で立っており、今回もカミーユのみが攻めに来る。
「ほー。攻めを捨てて守りに徹したか。良い判断だ」
昼までの作戦会議でシリルが提案した作戦だ。中途半端に攻めと守りに分かれるくらいなら、"王様"を全員で守り10分間耐えきる。勝つことはできないが、負けない可能性はこちらの方が高い。
カミーユがモニカの前に立っていたシリルを薙ぎ倒す。左右で身構えていたダフとアーサーが反応し、モニカを守ろうとカミーユに飛び掛かった。が…。
「うお!」
「わっ!!」
カミーユから王冠を守ろうとする気持ちが先走ってしまい、二人は互いの動きを見ていなかった。ダフとアーサーが勢いよくぶつかり、体重の軽いアーサーが吹き飛ばされて尻もちをついた。
「いたた…」
「す、すまんアーサー!!」
トラブルがありながらもなんとかカミーユの大剣を受け止めながらダフが叫んだ。開始早々、頭の中で描いていた連携が取れずダフは動揺している。目線もカミーユではなくアーサーに流れていた。
「俺を前によそ見すんのか?ダフ」
「し、してません!!」
「いやしてるだろうが!!」
ダフに足止めをされているカミーユの背後にライラが移動した。弓を引いていると矢が燃え上がる。リアーナに攻撃されているようだ。クラリッサがなんとか矢の炎を消すが、矢羽根が灰になり使い物にならなくなった。舌打ちをしながら次の矢を構えるが、また矢が燃え上がる。
「地味にいやなことを…!」
「へっへっへー!!アーチャーは矢を燃やすのが一番いいんだ!!イライラして集中力も削がれるしなー!!」
「ふふ。魔法使いと戦うときは反魔法付与の矢じゃないと厳しいわよォ?」
「んな高価なもん持たなくったっていくらでも防げるぜ!おーいクラリッサ!!タイミングよく反属性打たないとライラが使いもんになんねーぞー!!」
「分かってる…!でもリアーナさん遠くて分かりづらいわ…!ごめんなさいライラ…!」
「ううん!打てるようになるまでわたしはやめない!矢はたっぷりあるから!」
なぎ倒されたシリルと、尻もちをついたアーサーは慌てて持ち場に戻った。なぎ倒されたときにアバラが傷ついたのかシリルが苦しそうだ。シリルがカミーユの背後から切りかかろうとすると、待ってましたといわんばかりにカミーユの蹴りが飛び出した。
「う"っ」
シリルの口から少量の血が飛び出る。倒れたシリルはそのままぐったりと意識を失った。
シリルと同時に横から切りかかったアーサーを、カミーユはもう一本の剣を抜いて受けとめる。
「アーサー。なんでお前はちっけーのにそんな力あるんだ?」
「ち、ちっちゃくないもん!」
「ちっけーよ。ダフの半分くらいしかねえんじゃねえか?体重」
「あ、いえカミーユさん…。アーサーは俺の半分以下の…」
「ダフそれ以上は言わないで?!?!」
「…まじか」
カミーユはアーサーを哀れみをこもった目で見た。アーサーは顔を真っ赤にしてぷるぷる震えている。心をかき乱されたのか集中力が不安定になったのをカミーユは見逃さなかった。
「隙あり」
「ぐっ…は…」
一瞬の出来事だった。アーサーの剣をはじき、バランスを崩した彼の腹にカミーユが一閃をくらわせた。アーサーの腹から血が吹きだし地面を濡らす。カミーユはすぐにダフに目を戻しニッと笑った。
「それがお前の全力か?ダフ」
「ふぬぅっ…!」
「忘れんじゃねえぞ。俺は今2本剣を持ってるんだぜ」
「…っ!」
気付いたときにはもう遅かった。カミーユは右手に持っている剣をダフに向かって振り上げている。そちらを防ごうとしたら大剣が襲い掛かるだろう。どうすべきか考えがまとまらず固まっていると、ダフとカミーユの間にアーサーが割り込んだ。剣はアーサーによって受け止められ、ダフに傷はついていない。
「アーサー!」
「お前は本当にタフだな、アーサー」
カミーユの腕力にアーサーの手がじぃんと痺れる。アーサーはちらりとカミーユを見てニッと笑った。
「?」
「ライラ!!シリルに回復魔法を!!」
「っ!分かった!」
「クラリッサは土魔法で壁を作って!リアーナにこっちの様子が見えないように!」
「わ、分かったわ!」
「お?何する気だアーサー」
「ダフ。カミーユの大剣そのまま受け止めといてね!」
「おう!任せろ!!さっきはありがとな!!」
「ううん!遅くなってごめんね」
アーサーの指示通り、ライラは弓を置いて回復魔法を施した。まだ拙いが確かに質が良く、シリルの怪我は完治する。まだ意識を失っているがすぐに目を覚ますだろう。クラリッサは土魔法で2メートルほどの壁を作った。リアーナ、ジル、カトリナはこれから何が起こるのか気になりワクワクしているようだった。
「お、お?なんかおもしれえこと始まりそうだなあ?!」
「うーん、近くで見たいわァ」
「アーサー、あれ使う気かな」
「あれってなんだあ?」
リアーナがそう尋ねたとき、壁の向こうからカミーユのうめき声が聞こえた。
「ぐあぁぁっ…!」
「いきます」
ベニートが矢を落とす。試合開始とともに生徒たちは全員でモニカのまわりを固めた。S級組は、ジルとリアーナがカトリナの傍で立っており、今回もカミーユのみが攻めに来る。
「ほー。攻めを捨てて守りに徹したか。良い判断だ」
昼までの作戦会議でシリルが提案した作戦だ。中途半端に攻めと守りに分かれるくらいなら、"王様"を全員で守り10分間耐えきる。勝つことはできないが、負けない可能性はこちらの方が高い。
カミーユがモニカの前に立っていたシリルを薙ぎ倒す。左右で身構えていたダフとアーサーが反応し、モニカを守ろうとカミーユに飛び掛かった。が…。
「うお!」
「わっ!!」
カミーユから王冠を守ろうとする気持ちが先走ってしまい、二人は互いの動きを見ていなかった。ダフとアーサーが勢いよくぶつかり、体重の軽いアーサーが吹き飛ばされて尻もちをついた。
「いたた…」
「す、すまんアーサー!!」
トラブルがありながらもなんとかカミーユの大剣を受け止めながらダフが叫んだ。開始早々、頭の中で描いていた連携が取れずダフは動揺している。目線もカミーユではなくアーサーに流れていた。
「俺を前によそ見すんのか?ダフ」
「し、してません!!」
「いやしてるだろうが!!」
ダフに足止めをされているカミーユの背後にライラが移動した。弓を引いていると矢が燃え上がる。リアーナに攻撃されているようだ。クラリッサがなんとか矢の炎を消すが、矢羽根が灰になり使い物にならなくなった。舌打ちをしながら次の矢を構えるが、また矢が燃え上がる。
「地味にいやなことを…!」
「へっへっへー!!アーチャーは矢を燃やすのが一番いいんだ!!イライラして集中力も削がれるしなー!!」
「ふふ。魔法使いと戦うときは反魔法付与の矢じゃないと厳しいわよォ?」
「んな高価なもん持たなくったっていくらでも防げるぜ!おーいクラリッサ!!タイミングよく反属性打たないとライラが使いもんになんねーぞー!!」
「分かってる…!でもリアーナさん遠くて分かりづらいわ…!ごめんなさいライラ…!」
「ううん!打てるようになるまでわたしはやめない!矢はたっぷりあるから!」
なぎ倒されたシリルと、尻もちをついたアーサーは慌てて持ち場に戻った。なぎ倒されたときにアバラが傷ついたのかシリルが苦しそうだ。シリルがカミーユの背後から切りかかろうとすると、待ってましたといわんばかりにカミーユの蹴りが飛び出した。
「う"っ」
シリルの口から少量の血が飛び出る。倒れたシリルはそのままぐったりと意識を失った。
シリルと同時に横から切りかかったアーサーを、カミーユはもう一本の剣を抜いて受けとめる。
「アーサー。なんでお前はちっけーのにそんな力あるんだ?」
「ち、ちっちゃくないもん!」
「ちっけーよ。ダフの半分くらいしかねえんじゃねえか?体重」
「あ、いえカミーユさん…。アーサーは俺の半分以下の…」
「ダフそれ以上は言わないで?!?!」
「…まじか」
カミーユはアーサーを哀れみをこもった目で見た。アーサーは顔を真っ赤にしてぷるぷる震えている。心をかき乱されたのか集中力が不安定になったのをカミーユは見逃さなかった。
「隙あり」
「ぐっ…は…」
一瞬の出来事だった。アーサーの剣をはじき、バランスを崩した彼の腹にカミーユが一閃をくらわせた。アーサーの腹から血が吹きだし地面を濡らす。カミーユはすぐにダフに目を戻しニッと笑った。
「それがお前の全力か?ダフ」
「ふぬぅっ…!」
「忘れんじゃねえぞ。俺は今2本剣を持ってるんだぜ」
「…っ!」
気付いたときにはもう遅かった。カミーユは右手に持っている剣をダフに向かって振り上げている。そちらを防ごうとしたら大剣が襲い掛かるだろう。どうすべきか考えがまとまらず固まっていると、ダフとカミーユの間にアーサーが割り込んだ。剣はアーサーによって受け止められ、ダフに傷はついていない。
「アーサー!」
「お前は本当にタフだな、アーサー」
カミーユの腕力にアーサーの手がじぃんと痺れる。アーサーはちらりとカミーユを見てニッと笑った。
「?」
「ライラ!!シリルに回復魔法を!!」
「っ!分かった!」
「クラリッサは土魔法で壁を作って!リアーナにこっちの様子が見えないように!」
「わ、分かったわ!」
「お?何する気だアーサー」
「ダフ。カミーユの大剣そのまま受け止めといてね!」
「おう!任せろ!!さっきはありがとな!!」
「ううん!遅くなってごめんね」
アーサーの指示通り、ライラは弓を置いて回復魔法を施した。まだ拙いが確かに質が良く、シリルの怪我は完治する。まだ意識を失っているがすぐに目を覚ますだろう。クラリッサは土魔法で2メートルほどの壁を作った。リアーナ、ジル、カトリナはこれから何が起こるのか気になりワクワクしているようだった。
「お、お?なんかおもしれえこと始まりそうだなあ?!」
「うーん、近くで見たいわァ」
「アーサー、あれ使う気かな」
「あれってなんだあ?」
リアーナがそう尋ねたとき、壁の向こうからカミーユのうめき声が聞こえた。
「ぐあぁぁっ…!」
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