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合宿編:三週目・ダンジョン掃討特訓
泣いてくれる人
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アーサーはぐったりしているモニカを抱きかかえながらぽろぽろと涙を流している。震えながらおそるおそるカトリナを見る。
「カトリナ…モニカ、死なないよね…?」
「……」
「死なないって言って…おねがい…」
「…アーサー、あなたも同じ毒を浴びているのよ。はやく解毒薬を飲んで」
「おねがい…モニカを助けて…僕なんでもするから…」
「……」
無言のまま深刻な表情を浮かべているカトリナたち。アーサーは首を横に振りモニカをぎゅっと抱きしめた。
「やだ…やだぁ…っ」
「…ごめんなさいアーサー…。私が不甲斐ないばかりに…モニカを助けられ…」
「やだぁ!!やめて!!そんなこと言わないで!!モニカ!モニカ起きてよ!!モニカぁぁっ!!!」
アーサーの泣き叫ぶ声が洞窟内に響き渡る。モニカの顔に、アーサーの涙と血がボトボトと零れ落ちた。カトリナたちも拳を握りしめながら震えている。解毒薬、エリクサー、彼女たちにできることは全てした。これ以上できることは…なにもない。
「ん…」
「!!」
アーサーの腕の中で、か細い声がかすかに聞こえた。アーサーは泣きながら妹に目をやった。モニカはうっすらと目を開き、顔をしかめながら頭をさすった。
「…いったぁ…」
「モ…モニカ…?」
「アーサー石頭すぎるのよ…」
「モニカ!!!意識が戻った…!!吐き気は?!寒気とか…内臓に損傷は…!」
「?なに言ってるのアーサー」
「モニカさっき猛毒の液体をくらったんだよ…!よかった生きてて…よかったぁっ…!!」
意識を取り戻したモニカはポカンとしたあと、ジトッとした目で兄を睨んだ。
「アーサー、忘れてない?わたし、マーニャ様の指輪をしてるんだよ」
「…はっ」
「私はあらゆる状態異常が無効なの」
「…でも、さっきまで気を失って…」
「それはあんたが私に飛び掛かってきて頭がごっつんこしたからよ。脳震盪を起こしたの。たんこぶできちゃったじゃない」
「ご…ごめんなさい…。じゃ、じゃあ毒は…」
「なにもないわ。それよりアーサー、鼻血と吐血してるわよ。回復魔法かけてあげる」
「あ、はい…。ありがとうございます…」
意識が戻った途端アーサーに回復魔法をかけはじめたモニカに、先輩冒険者たちは呆然としていた。アーサーもショックと驚きと嬉しさで脳みそがぐちゃぐちゃになっているらしく、呆けたようにボーっとしている。彼らの様子に気が付いたモニカは、申し訳なさそうに苦笑いをした。
「えーっと…。なんだかとっても心配をかけちゃったみたい…。ごめんなさいみんな。わたし、状態異常はなにも効かないアイテムを持ってるの。だから無傷っていうか…アーサーのせいでたんこぶはできたけど…」
「……」
カトリナ、リアーナ、イェルドはしばらくフリーズしていた。全ての状態異常を無効化するアイテムなんて聞いたことがない。ていうかそんなもの持ってるならはじめっから言っとけよ。たんこぶて。などツッコみたいことが山ほどあった。だがそれ以上にモニカが無事だったことに彼らは安堵の涙をこぼした。
「モ…モニカぁぁぁ…!生きててよがっだぁぁ…!ごめんなあごめんなああたしのミスでお前にこんな目遭わせちまったぁぁっぁ…」
「モニカごめんね…アーサーもごめんなさい…私たちがついていながら…本当に…」
「うおおおおおお!!!!モニカが無事でよかったあああああ!!!うわぁぁぁぁぁ」
「リアーナもカトリナも!私がささっと逃げればよかったんだから気にしないで!!そもそも私が一発で尻尾を切断できなかったのが悪いんだし!!イェルドとアーサーはもうちょっと静かに泣いてくれないかなあ!!」
モニカはそう言いながら顔をほころばせていた。自分が死ぬかもしれないと思い泣いてくれる人がこんなにいることがこんなに嬉しいことなんだとはじめて知った。
「カトリナ…モニカ、死なないよね…?」
「……」
「死なないって言って…おねがい…」
「…アーサー、あなたも同じ毒を浴びているのよ。はやく解毒薬を飲んで」
「おねがい…モニカを助けて…僕なんでもするから…」
「……」
無言のまま深刻な表情を浮かべているカトリナたち。アーサーは首を横に振りモニカをぎゅっと抱きしめた。
「やだ…やだぁ…っ」
「…ごめんなさいアーサー…。私が不甲斐ないばかりに…モニカを助けられ…」
「やだぁ!!やめて!!そんなこと言わないで!!モニカ!モニカ起きてよ!!モニカぁぁっ!!!」
アーサーの泣き叫ぶ声が洞窟内に響き渡る。モニカの顔に、アーサーの涙と血がボトボトと零れ落ちた。カトリナたちも拳を握りしめながら震えている。解毒薬、エリクサー、彼女たちにできることは全てした。これ以上できることは…なにもない。
「ん…」
「!!」
アーサーの腕の中で、か細い声がかすかに聞こえた。アーサーは泣きながら妹に目をやった。モニカはうっすらと目を開き、顔をしかめながら頭をさすった。
「…いったぁ…」
「モ…モニカ…?」
「アーサー石頭すぎるのよ…」
「モニカ!!!意識が戻った…!!吐き気は?!寒気とか…内臓に損傷は…!」
「?なに言ってるのアーサー」
「モニカさっき猛毒の液体をくらったんだよ…!よかった生きてて…よかったぁっ…!!」
意識を取り戻したモニカはポカンとしたあと、ジトッとした目で兄を睨んだ。
「アーサー、忘れてない?わたし、マーニャ様の指輪をしてるんだよ」
「…はっ」
「私はあらゆる状態異常が無効なの」
「…でも、さっきまで気を失って…」
「それはあんたが私に飛び掛かってきて頭がごっつんこしたからよ。脳震盪を起こしたの。たんこぶできちゃったじゃない」
「ご…ごめんなさい…。じゃ、じゃあ毒は…」
「なにもないわ。それよりアーサー、鼻血と吐血してるわよ。回復魔法かけてあげる」
「あ、はい…。ありがとうございます…」
意識が戻った途端アーサーに回復魔法をかけはじめたモニカに、先輩冒険者たちは呆然としていた。アーサーもショックと驚きと嬉しさで脳みそがぐちゃぐちゃになっているらしく、呆けたようにボーっとしている。彼らの様子に気が付いたモニカは、申し訳なさそうに苦笑いをした。
「えーっと…。なんだかとっても心配をかけちゃったみたい…。ごめんなさいみんな。わたし、状態異常はなにも効かないアイテムを持ってるの。だから無傷っていうか…アーサーのせいでたんこぶはできたけど…」
「……」
カトリナ、リアーナ、イェルドはしばらくフリーズしていた。全ての状態異常を無効化するアイテムなんて聞いたことがない。ていうかそんなもの持ってるならはじめっから言っとけよ。たんこぶて。などツッコみたいことが山ほどあった。だがそれ以上にモニカが無事だったことに彼らは安堵の涙をこぼした。
「モ…モニカぁぁぁ…!生きててよがっだぁぁ…!ごめんなあごめんなああたしのミスでお前にこんな目遭わせちまったぁぁっぁ…」
「モニカごめんね…アーサーもごめんなさい…私たちがついていながら…本当に…」
「うおおおおおお!!!!モニカが無事でよかったあああああ!!!うわぁぁぁぁぁ」
「リアーナもカトリナも!私がささっと逃げればよかったんだから気にしないで!!そもそも私が一発で尻尾を切断できなかったのが悪いんだし!!イェルドとアーサーはもうちょっと静かに泣いてくれないかなあ!!」
モニカはそう言いながら顔をほころばせていた。自分が死ぬかもしれないと思い泣いてくれる人がこんなにいることがこんなに嬉しいことなんだとはじめて知った。
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