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合宿編:休息
【417話】一日の終わり
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その日の夜、カトリナが大サービスをして大浴場に泡風呂液を混ぜてくれた。泡の上には良い香りのする薔薇の花びらが乗っている。女子たちはもちろん男子たちも大喜びだ。モコモコの泡を手のひらに乗せ、香りを楽しんだり友人の顔に付けて楽しんだ。
「はぁ…。さすがカトリナさんだ。最上級の泡風呂に薔薇の花びら。オーヴェルニュ家らしいな」
「どうしてえ?」
「オーヴェルニュ家の家紋は薔薇だからな。元ローズ寮生の俺にはとても嬉しい入浴だ」
「そういえばローズ寮では大衆浴場にいつも薔薇の花びらが浮いてるって聞いたけど本当?」
シリルが尋ねると、ダフはこくりと頷いた。
「ああ、浮いてたな。え?寮花の花びらはどこも浮いてるんじゃないのか?」
「ううん。ビオラ寮では浮いてなかったよ」
「リリー寮はどうだったんだアーサー?」
「浮いてなかった!でもお湯が白くてユリの香りがしてたよ」
「へー!リリー寮はユリの香りがする入浴液が入っていたのだな」
「寮のランクが上がるほど高価なものが使われてるのかもね」
「へー!そういえば学院のお風呂入ってるときお肌がツルツルだったなあ~」
ぼんやりと取り留めのない話をしながら、3人はゆっくり湯に浸かった。途中でダフとシリルが居眠りをしはじめたので、アーサーは二人を抱えて脱衣所へ上がった。うつらうつらしながら体を拭き、シリルとダフはアーサーに手を引かれて寝室へ戻る。ベッドへ寝かせてあげると、すぐに彼らは寝息をたてた。
◇◇◇
アーサーが寝室へ戻ると、女子たちの笑い声が彼を出迎えた。モニカのベッドに腰かけているライラとクラリッサ、アーサーのベッドに寝転んでいるモニカが楽し気にお喋りをしている。アーサーに気付いたモニカは、笑顔で兄に手を振った。
「アーサー!おかえりー!」
「ただいまー。今日はここで寝衣パーティーしてるの?」
「うん!」
「お邪魔しているわアーサー」
「ご、ごめんね突然」
「いいよいいよー!一人は寂しいからむしろこっちでお喋りしてくれたほうがうれしいし」
アーサーはそう言ってベッドへ寝転びモニカに足を乗せた。妹にうしろから抱きついて乾かしたての髪に顔を押し付けたので、ライラとクラリッサはこっそり目を見合わせた。
(本当だった…)
(モニカの言ってたこと本当だったんだぁ…)
「あっ、僕のことは気にしないでお喋り楽しんでね!僕はもう寝るからー」
「お、おやすみアーサー」
「おやすみなさい…」
このスタイルがいつものことのようで、モニカはなんの違和感も抱かずお喋りを続けている。彼女のうしろで甘えている男子が気になりモニカのお話なんて耳に入ってこない。しばらくしてアーサーが寝息をたてはじめたので、クラリッサが小声でモニカに尋ねた。
「ねえ、アーサーって寝る前いつもこうなの?」
「うん!」
「そ、そうなんだ。学院でのアーサーとか、特訓中のアーサーはしっかりしててお兄ちゃんって感じがするのに。こうして見てたら弟みたいだね」
「そうなのー!外ではお兄ちゃんぶりたいのよアーサーって!でもスイッチが切れるとずーっとこんな感じ」
「へえ。なんだかかわいいわね」
「アーサーは世界一かわいいです!」
「あはは。仲が良いんだねえ」
女子たちは笑い声をあげながら真夜中を過ぎるまでお喋りを楽しんだ。ジルに注意されたので灯りを消し小声でおしゃべりをしていたが、気付けばみんな夢の中にいた。アーサーとモニカはコアラのようにくっつき合っていたが、やはり寝相の悪さはアーサーのほうが勝っており、朝起きたときにはモニカは兄の下敷きになっていた。
「はぁ…。さすがカトリナさんだ。最上級の泡風呂に薔薇の花びら。オーヴェルニュ家らしいな」
「どうしてえ?」
「オーヴェルニュ家の家紋は薔薇だからな。元ローズ寮生の俺にはとても嬉しい入浴だ」
「そういえばローズ寮では大衆浴場にいつも薔薇の花びらが浮いてるって聞いたけど本当?」
シリルが尋ねると、ダフはこくりと頷いた。
「ああ、浮いてたな。え?寮花の花びらはどこも浮いてるんじゃないのか?」
「ううん。ビオラ寮では浮いてなかったよ」
「リリー寮はどうだったんだアーサー?」
「浮いてなかった!でもお湯が白くてユリの香りがしてたよ」
「へー!リリー寮はユリの香りがする入浴液が入っていたのだな」
「寮のランクが上がるほど高価なものが使われてるのかもね」
「へー!そういえば学院のお風呂入ってるときお肌がツルツルだったなあ~」
ぼんやりと取り留めのない話をしながら、3人はゆっくり湯に浸かった。途中でダフとシリルが居眠りをしはじめたので、アーサーは二人を抱えて脱衣所へ上がった。うつらうつらしながら体を拭き、シリルとダフはアーサーに手を引かれて寝室へ戻る。ベッドへ寝かせてあげると、すぐに彼らは寝息をたてた。
◇◇◇
アーサーが寝室へ戻ると、女子たちの笑い声が彼を出迎えた。モニカのベッドに腰かけているライラとクラリッサ、アーサーのベッドに寝転んでいるモニカが楽し気にお喋りをしている。アーサーに気付いたモニカは、笑顔で兄に手を振った。
「アーサー!おかえりー!」
「ただいまー。今日はここで寝衣パーティーしてるの?」
「うん!」
「お邪魔しているわアーサー」
「ご、ごめんね突然」
「いいよいいよー!一人は寂しいからむしろこっちでお喋りしてくれたほうがうれしいし」
アーサーはそう言ってベッドへ寝転びモニカに足を乗せた。妹にうしろから抱きついて乾かしたての髪に顔を押し付けたので、ライラとクラリッサはこっそり目を見合わせた。
(本当だった…)
(モニカの言ってたこと本当だったんだぁ…)
「あっ、僕のことは気にしないでお喋り楽しんでね!僕はもう寝るからー」
「お、おやすみアーサー」
「おやすみなさい…」
このスタイルがいつものことのようで、モニカはなんの違和感も抱かずお喋りを続けている。彼女のうしろで甘えている男子が気になりモニカのお話なんて耳に入ってこない。しばらくしてアーサーが寝息をたてはじめたので、クラリッサが小声でモニカに尋ねた。
「ねえ、アーサーって寝る前いつもこうなの?」
「うん!」
「そ、そうなんだ。学院でのアーサーとか、特訓中のアーサーはしっかりしててお兄ちゃんって感じがするのに。こうして見てたら弟みたいだね」
「そうなのー!外ではお兄ちゃんぶりたいのよアーサーって!でもスイッチが切れるとずーっとこんな感じ」
「へえ。なんだかかわいいわね」
「アーサーは世界一かわいいです!」
「あはは。仲が良いんだねえ」
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