391 / 718
合宿編:二週目・基礎特訓
【410話】モニカの無茶なお願い
しおりを挟む
「モニカ、バテてきたんじゃない?腕がぷるぷるしてるよ」
「とっくの昔にバテてるわよぉ!!」
2日に一回訪れるこの特訓がモニカはだいきらいだった。しかも、よりにもよって最終日にこの特訓が入り、モニカは朝から憂鬱だった。そう、ジルとの身体強化だ。
この日もいつも通りのメニューを言い渡され、モニカはジルにじーっと見られながら地味な筋肉トレーニングをひたすらする。ジルが見ているので1回たりともサボれない(自主練習の時はアーサーに気付かれないようにこっそり回数をちょろまかしていた)。少しでもフォームが崩れたら鬼のジル先生は「はいはじめからもう一回」と言い放つ。毎日が筋肉痛で、2週間前より腕が逞しくなった気がする。モニカはそれもいやだった。
「うわぁぁん!こんなムキムキになっちゃったらかわいい服着れないじゃないのぉっ!!」
「大丈夫だよ。モニカはムキムキでもきっとかわいいから。まだ元気があるみたいだね。もうワンセットやる?」
「やらない!!絶対にやらない!!」
筋肉トレーニングが終わったらジルと一緒に庭を走る。ジルは軽々走っているが、モニカにとっては全速力一歩手前くらい速く走らないと彼についていけない。今まで速く走らなければならないときは、アーサーがだっこしてくれていたので、自分の力でこんなに速く長時間走るのは初めての事だった。
「ジッ…ジルゥッ…もうちょっとスピード落としたり…」
「しないよ。特訓にならないから」
「うぅっ…」
「甘えないで。甘やかすなってカミーユに言われてるから。本当は甘やかしたいけど」
「カミーユのばかぁっ」
「カミーユはばかだよ」
「おい聞こえてっぞぉ!!」
「あははは!モニカがんばれー!」
「がんばれー!」
「おっと」
おなじ庭で特訓をしていたカミーユが大声で叫んだ。アーサーにも聞こえていたのかケラケラ笑っている。シリルには聞こえなかったようだがモニカに手を振り声援を送った。シリルはすっかり戦意を取り戻しており、ヘロヘロながらもカミーユに立ち向かっていた。モニカは彼らに手を振り返し、カミーユと目で会話していたジルの方を見た。
「ねえジルぅ~…わたし、ただでさえアーサーより背が高くておにくついてるのに、アーサーよりも筋肉ついちゃったらアーサーが泣いちゃうと思わない…?」
「……たしかに」
「アーサーってあんなに力が強いのに、全然筋肉ついてるように見えないんだもん…」
「アーサーの体は特殊だね。基礎能力値が高すぎてかな…。僕も筋肉が目立たない方だけど、アーサーはもっとだね」
「アーサーはダフみたいにムッキムキになりたいらしいの…。わたしは今のアーサーがいいんだけどね、アーサーはムッキムキになりたいみたい」
「ダフか…。まあ、100パーセント無理だろうね」
「ジル!!聞こえてるよ!!ひどい!!」
「…耳が良いのも困りものだな」
また向こうからアーサーの声が飛んできた。ジルはげっそりした顔をして先ほどより声を落としてモニカに話す。
「それで?モニカはお兄ちゃんに悲しい思いをさせたくないから、僕に手を抜けって言ってるの?」
「抜いてほしいのはやまやまなんだけど~…。抜いてくれないでしょう?」
「もちろん」
「じゃあ、筋肉をつけないで筋力をつける方法を考えて!」
「え」
「アーサーは筋肉がないけど筋力がすごいじゃない。カトリナやジルだってそうだわ。わたしもそっちがいい!」
「うーん、それは体質の問題だよモニカ。モニカは脂肪や筋肉がつきやすい体質なんだよ」
「脂肪って言わないで!おにくって言って!!」
「いい年した僕におにくなんて言わせないで」
「ねえジルー!一緒に考えてよー!わたしアーサーよりムキムキになりたくないよー」
なんて無茶なことを言うんだこの子はと思いながらも、大好きなモニカの兄を想ってのお願いを無下にはできなかった。ジルは難しい顔をして「うーん…」と唸る。
「…分かった。少し考えるからちょっと待って」
「やったー!ジルありがとう!!」
「よし。じゃあランニングは早めに切り上げよう。座ってじっくり考えたい。モニカは僕が良い案思いつくまで筋トレしてて」
「えーーー!!!」
「これ以上のわがままは聞けないよ。カミーユに甘やかすなって言われてるから」
「はぁい…。ともかく、ありがとうジル!ジルが先生でよかったー!!!」
モニカも無茶なことをお願いした自覚はあったようだ。それを受け入れてくれてよほど嬉しかったのだろう。彼女はジルに抱きつきぴょんぴょんと飛び跳ねた。ジルはモニカのかわいさにしばらく放心していた。
「とっくの昔にバテてるわよぉ!!」
2日に一回訪れるこの特訓がモニカはだいきらいだった。しかも、よりにもよって最終日にこの特訓が入り、モニカは朝から憂鬱だった。そう、ジルとの身体強化だ。
この日もいつも通りのメニューを言い渡され、モニカはジルにじーっと見られながら地味な筋肉トレーニングをひたすらする。ジルが見ているので1回たりともサボれない(自主練習の時はアーサーに気付かれないようにこっそり回数をちょろまかしていた)。少しでもフォームが崩れたら鬼のジル先生は「はいはじめからもう一回」と言い放つ。毎日が筋肉痛で、2週間前より腕が逞しくなった気がする。モニカはそれもいやだった。
「うわぁぁん!こんなムキムキになっちゃったらかわいい服着れないじゃないのぉっ!!」
「大丈夫だよ。モニカはムキムキでもきっとかわいいから。まだ元気があるみたいだね。もうワンセットやる?」
「やらない!!絶対にやらない!!」
筋肉トレーニングが終わったらジルと一緒に庭を走る。ジルは軽々走っているが、モニカにとっては全速力一歩手前くらい速く走らないと彼についていけない。今まで速く走らなければならないときは、アーサーがだっこしてくれていたので、自分の力でこんなに速く長時間走るのは初めての事だった。
「ジッ…ジルゥッ…もうちょっとスピード落としたり…」
「しないよ。特訓にならないから」
「うぅっ…」
「甘えないで。甘やかすなってカミーユに言われてるから。本当は甘やかしたいけど」
「カミーユのばかぁっ」
「カミーユはばかだよ」
「おい聞こえてっぞぉ!!」
「あははは!モニカがんばれー!」
「がんばれー!」
「おっと」
おなじ庭で特訓をしていたカミーユが大声で叫んだ。アーサーにも聞こえていたのかケラケラ笑っている。シリルには聞こえなかったようだがモニカに手を振り声援を送った。シリルはすっかり戦意を取り戻しており、ヘロヘロながらもカミーユに立ち向かっていた。モニカは彼らに手を振り返し、カミーユと目で会話していたジルの方を見た。
「ねえジルぅ~…わたし、ただでさえアーサーより背が高くておにくついてるのに、アーサーよりも筋肉ついちゃったらアーサーが泣いちゃうと思わない…?」
「……たしかに」
「アーサーってあんなに力が強いのに、全然筋肉ついてるように見えないんだもん…」
「アーサーの体は特殊だね。基礎能力値が高すぎてかな…。僕も筋肉が目立たない方だけど、アーサーはもっとだね」
「アーサーはダフみたいにムッキムキになりたいらしいの…。わたしは今のアーサーがいいんだけどね、アーサーはムッキムキになりたいみたい」
「ダフか…。まあ、100パーセント無理だろうね」
「ジル!!聞こえてるよ!!ひどい!!」
「…耳が良いのも困りものだな」
また向こうからアーサーの声が飛んできた。ジルはげっそりした顔をして先ほどより声を落としてモニカに話す。
「それで?モニカはお兄ちゃんに悲しい思いをさせたくないから、僕に手を抜けって言ってるの?」
「抜いてほしいのはやまやまなんだけど~…。抜いてくれないでしょう?」
「もちろん」
「じゃあ、筋肉をつけないで筋力をつける方法を考えて!」
「え」
「アーサーは筋肉がないけど筋力がすごいじゃない。カトリナやジルだってそうだわ。わたしもそっちがいい!」
「うーん、それは体質の問題だよモニカ。モニカは脂肪や筋肉がつきやすい体質なんだよ」
「脂肪って言わないで!おにくって言って!!」
「いい年した僕におにくなんて言わせないで」
「ねえジルー!一緒に考えてよー!わたしアーサーよりムキムキになりたくないよー」
なんて無茶なことを言うんだこの子はと思いながらも、大好きなモニカの兄を想ってのお願いを無下にはできなかった。ジルは難しい顔をして「うーん…」と唸る。
「…分かった。少し考えるからちょっと待って」
「やったー!ジルありがとう!!」
「よし。じゃあランニングは早めに切り上げよう。座ってじっくり考えたい。モニカは僕が良い案思いつくまで筋トレしてて」
「えーーー!!!」
「これ以上のわがままは聞けないよ。カミーユに甘やかすなって言われてるから」
「はぁい…。ともかく、ありがとうジル!ジルが先生でよかったー!!!」
モニカも無茶なことをお願いした自覚はあったようだ。それを受け入れてくれてよほど嬉しかったのだろう。彼女はジルに抱きつきぴょんぴょんと飛び跳ねた。ジルはモニカのかわいさにしばらく放心していた。
12
お気に入りに追加
4,342
あなたにおすすめの小説
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
ぬいぐるみばかり作っていたら実家を追い出された件〜だけど作ったぬいぐるみが意志を持ったので何も不自由してません〜
望月かれん
ファンタジー
中流貴族シーラ・カロンは、ある日勘当された。理由はぬいぐるみ作りしかしないから。
戸惑いながらも少量の荷物と作りかけのぬいぐるみ1つを持って家を出たシーラは1番近い町を目指すが、その日のうちに辿り着けず野宿をすることに。
暇だったので、ぬいぐるみを完成させようと意気込み、ついに夜更けに完成させる。
疲れから眠りこけていると聞き慣れない低い声。
なんと、ぬいぐるみが喋っていた。
しかもぬいぐるみには帰りたい場所があるようで……。
天真爛漫娘✕ワケアリぬいぐるみのドタバタ冒険ファンタジー。
※この作品は小説家になろう・ノベルアップ+にも掲載しています。
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。