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初夏編:初夏のポントワーブ
【329話】回復
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モニカがベッドから出たのはそれから3日後だった。アーサー、シャナ、魔女の甲斐甲斐しい看病と薬、回復魔法のおかげで、モニカは元気いっぱいになって復活した。
「もう治ったぁ!!もう治ったから温泉入らせてぇ!!」
「だめだよモニカぁ。もう少し寝た方が良いよぉ」
「そうよ。あなた何日寝ずに魔法を使ってたと思っているの?体力や魔力は回復しているけど、もう少し安静にしておいた方がいいわ」
「なぁにを言ってるんだいあんたたちは。本人が元気だって言ってるんだから温泉くらい入らせてやったらいいだろう、ねえ?」
駄々をこねているモニカをアーサーとシャナが取り押さえていると、魔女が呆れたようにため息をついた。その騒ぎを聞きつけたS級冒険者たちも会話に加わってくる。
「お!!モニカ温泉入るのか?!あたしも行くーーー!!」
「あらァ。私も行こうかしら」
「お、モニカ回復したのか。じゃあそろそろ帰り支度をしなきゃな」
「よかったモニカ…モニカがこのまま寝たきりだったらどうしようって僕…眠れなくて…」
「ジルは相変わらず心配性だなあ!ぎゃははは!」
「ふふ、本当に」
「ったくお前は気が弱いのか強いのかわっかんねーな…」
カミーユたちは、モニカのおかげですっかりいつもどおりに戻っていた。
だが、ジルとカトリナの首にはうっすらと呪いの痕が浮き上がっている。特に長時間放置されていたカトリナは、首筋から耳にかけて一筋の濃い痣が残ってしまった。モニカは申し訳なさそうにしていたが、ジルもカトリナも全く気にしておらず、むしろカトリナは「おしゃれな刺青みたいでいいじゃなァい」と鏡を見て嬉しそうに呟いていた。
リアーナはアサギリに憑依され大量の妖力を注ぎ込まれたせいで、髪の大半がサクラ色に変色してしまった。色が気に入らなかった彼女は長かった髪をバッサリと切り、今ではさっぱりとしたショートヘアになっている(リアーナが切った不揃いの髪を、アデーレが綺麗に整えてあげた)。毛先にサクラ色が残っているが、他はもともとの色だった黒髪だ。
また、魔物の血が濃くなったためかリアーナの瞳孔が少しばかり細くなっていた。一見気付かない程度だが、ヒト型魔物と戦い慣れている冒険者であれば魔物と勘違いされてしまうかもしれない。それはリアーナにとってどうでもよいことのようで、それよりも髪の毛先の色が気に食わないとアサギリに文句を垂れていた。
カミーユに関しては、さすがリアーナと言うべきか。長時間魂魄に憑依されて体を蝕まれていたカミーユだが、リアーナの聖魔法であっと言う間に魂魄が消滅した。それから呪いを消し去るために治癒を受けた彼は、質の良い聖魔法と加護による回復力のおかげで痕ひとつ残らなかった。
呪いが消え去っても、S級冒険者に後遺症状が残っているはずなのだが、彼らは普段通りに振る舞っていた。泣き言など何一つ言わず、雑談をしては大笑いし、酒を飲んでは大笑いをした。それどころかリアーナとカミーユが病み上がりの体でまた喧嘩を始め、さすがに今回は元気いっぱいのリアーナにカミーユがボコボコにされていた。
モニカが寝込んでいる間、S級冒険者はたびたびモニカのベッドの前で座り、優しい口調で話しかけていた。選ぶことばや言い方が違えど、彼ら4人は揃って「モニカは命の恩人だ」と感謝を述べていた。この日からカミーユ、カトリナ、ジル、リアーナが、アーサーとモニカのためであれば惜しみなく命を差し出そうとさらに強く思うことになる。
「……」
「……」
「……」
病み上がりのモニカに対しての4人の会話に、ベニート、イェルド、アデーレはまたまた不可解な表情を浮かべていた。
「あの、さ…。俺はアーサーとシャナさんの安静にしとけっていう意見に賛成なんだけど、お前らはどう思う…?」
「それ俺とアデーレに聞くか?」
「安静に決まってるでしょ」
「だよなぁ…?なんでカトリナさんとリアーナさん、一緒に温泉行こうとしてんだ…?」
「カミーユさんなんて帰り支度始めたぞ」
「わたし、カミーユさんたちってやせ我慢してると思っていたんだけど、そうじゃないみたいね。本当に回復してるんだわ」
「というよりあれくらいのダメージを受けたままで動くことに慣れてるんだろうな」
「そうかも。そしてモニカの顔色や魔力量を見て、もう回復したと判断したんだわ。…さすが師弟の関係ね。カミーユさんたちは、モニカならこのくらい休めば充分だと思ってる」
「信頼しているというか…スパルタというか…」
「スパルタ。全くその通りね。でも…それについていけるモニカとアーサー。ああいう子たちが、きっとS級冒険者になるんでしょうね」
「もう治ったぁ!!もう治ったから温泉入らせてぇ!!」
「だめだよモニカぁ。もう少し寝た方が良いよぉ」
「そうよ。あなた何日寝ずに魔法を使ってたと思っているの?体力や魔力は回復しているけど、もう少し安静にしておいた方がいいわ」
「なぁにを言ってるんだいあんたたちは。本人が元気だって言ってるんだから温泉くらい入らせてやったらいいだろう、ねえ?」
駄々をこねているモニカをアーサーとシャナが取り押さえていると、魔女が呆れたようにため息をついた。その騒ぎを聞きつけたS級冒険者たちも会話に加わってくる。
「お!!モニカ温泉入るのか?!あたしも行くーーー!!」
「あらァ。私も行こうかしら」
「お、モニカ回復したのか。じゃあそろそろ帰り支度をしなきゃな」
「よかったモニカ…モニカがこのまま寝たきりだったらどうしようって僕…眠れなくて…」
「ジルは相変わらず心配性だなあ!ぎゃははは!」
「ふふ、本当に」
「ったくお前は気が弱いのか強いのかわっかんねーな…」
カミーユたちは、モニカのおかげですっかりいつもどおりに戻っていた。
だが、ジルとカトリナの首にはうっすらと呪いの痕が浮き上がっている。特に長時間放置されていたカトリナは、首筋から耳にかけて一筋の濃い痣が残ってしまった。モニカは申し訳なさそうにしていたが、ジルもカトリナも全く気にしておらず、むしろカトリナは「おしゃれな刺青みたいでいいじゃなァい」と鏡を見て嬉しそうに呟いていた。
リアーナはアサギリに憑依され大量の妖力を注ぎ込まれたせいで、髪の大半がサクラ色に変色してしまった。色が気に入らなかった彼女は長かった髪をバッサリと切り、今ではさっぱりとしたショートヘアになっている(リアーナが切った不揃いの髪を、アデーレが綺麗に整えてあげた)。毛先にサクラ色が残っているが、他はもともとの色だった黒髪だ。
また、魔物の血が濃くなったためかリアーナの瞳孔が少しばかり細くなっていた。一見気付かない程度だが、ヒト型魔物と戦い慣れている冒険者であれば魔物と勘違いされてしまうかもしれない。それはリアーナにとってどうでもよいことのようで、それよりも髪の毛先の色が気に食わないとアサギリに文句を垂れていた。
カミーユに関しては、さすがリアーナと言うべきか。長時間魂魄に憑依されて体を蝕まれていたカミーユだが、リアーナの聖魔法であっと言う間に魂魄が消滅した。それから呪いを消し去るために治癒を受けた彼は、質の良い聖魔法と加護による回復力のおかげで痕ひとつ残らなかった。
呪いが消え去っても、S級冒険者に後遺症状が残っているはずなのだが、彼らは普段通りに振る舞っていた。泣き言など何一つ言わず、雑談をしては大笑いし、酒を飲んでは大笑いをした。それどころかリアーナとカミーユが病み上がりの体でまた喧嘩を始め、さすがに今回は元気いっぱいのリアーナにカミーユがボコボコにされていた。
モニカが寝込んでいる間、S級冒険者はたびたびモニカのベッドの前で座り、優しい口調で話しかけていた。選ぶことばや言い方が違えど、彼ら4人は揃って「モニカは命の恩人だ」と感謝を述べていた。この日からカミーユ、カトリナ、ジル、リアーナが、アーサーとモニカのためであれば惜しみなく命を差し出そうとさらに強く思うことになる。
「……」
「……」
「……」
病み上がりのモニカに対しての4人の会話に、ベニート、イェルド、アデーレはまたまた不可解な表情を浮かべていた。
「あの、さ…。俺はアーサーとシャナさんの安静にしとけっていう意見に賛成なんだけど、お前らはどう思う…?」
「それ俺とアデーレに聞くか?」
「安静に決まってるでしょ」
「だよなぁ…?なんでカトリナさんとリアーナさん、一緒に温泉行こうとしてんだ…?」
「カミーユさんなんて帰り支度始めたぞ」
「わたし、カミーユさんたちってやせ我慢してると思っていたんだけど、そうじゃないみたいね。本当に回復してるんだわ」
「というよりあれくらいのダメージを受けたままで動くことに慣れてるんだろうな」
「そうかも。そしてモニカの顔色や魔力量を見て、もう回復したと判断したんだわ。…さすが師弟の関係ね。カミーユさんたちは、モニカならこのくらい休めば充分だと思ってる」
「信頼しているというか…スパルタというか…」
「スパルタ。全くその通りね。でも…それについていけるモニカとアーサー。ああいう子たちが、きっとS級冒険者になるんでしょうね」
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