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初夏編:初夏のポントワーブ
【328話】お兄ちゃんと妹
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それから5日後、呪いが消え去り休養をとっていたカミーユ、ジル、カトリナが「もう我慢できない」とベッドを飛び出し温泉へ浸かりに行った。数日前まで死にかけていたとは思えないほどしっかりと歩き、ケロっとした様子で雑談をしながら小屋を出る。驚異的な回復力にベニートたちがポカンと口を開いて間抜けな顔で彼らを見送っていた。
「…え?カミーユさんたちなんであんな平気そうなんだ?」
「分からない。呪いが消えたと言っても体に大きな負担はかかっていたはず。痛みはもちろん、ひどい倦怠感が残ってるでしょうし…」
「なのに体洗いたいって温泉入りに行ったぜ…?!」
「しかも楽し気に談笑しながら…」
「やっぱりS級冒険者は人じゃないな。よし、考えるのはやめよう」
「そうね。ちがうイキモノよあの人たちは」
「そうだな!いくら考えたって理解できねえ!」
三人は無理矢理笑い、中断していた作業を再開した。ベニート、イェルドは山から集めて来た薪を魔女に渡し、アデーレはシャナと一緒にベッドのシーツを取り換えている(リアーナはアサギリを握ったまま昼寝していた)。
モニカはというと、カトリナの呪いを取り除いたあとすぐに熱を出して寝込んでいた。薬で騙し騙し無理をしていた体が、安心と共に限界を迎えたようだ。アーサーがつきっきりで看病をしており、ユーリが調合した薬と魔女が調合した薬を飲みながら、ときどきシャナに回復魔法をかけてもらっている。
「アーサー…ブドウ食べたい…」
「分かった!ちょっと待ってね。皮をむいてあげるから」
アーサーはブドウを一粒自分の口に放り込んでから、甘えた声を出すモニカに差し出した。布団から顔だけ出して小さく開けた妹の口にブドウを放り込むと、モニカは嬉しそうに咀嚼した。
「おいしい」
「果物屋さんで買ったブドウ。あそこの果物はどれもおいしいね!」
「うん…。あまぁい」
「バナナも食べる?」
「バナナはいい…」
「モニカあんまりバナナ好きじゃないよね?どうしてぇ?」
「隣でバクバク食べてる人を毎日のように見てるからよ。見てるだけで飽きちゃったわ」
「ありゃりゃ、僕のせいじゃないか」
「そうよ、アーサーのせい」
「あはは…」
「アーサー、お水も飲みたいな」
「うん。分かったよ。取ってくるね」
「え、やだぁ…」
モニカは立ち上がろうとした兄の手を掴み引き留めた。いつも以上に甘えん坊になっているモニカに、アーサーは嬉しそうにクスクス笑った。
「え…なによぉ」
「あ、ごめん。だって最近僕の方が弟みたいだったからさ。今日のモニカはすごく妹って感じがしてかわいいなーって思っちゃった」
「たしかに今日のアーサーはすごくお兄ちゃんって感じする」
「ほんと?えへへ、うれしいなあ。甘えん坊のモニカかわいいなあ」
デレデレしながらアーサーがモニカの頭を撫でた。モニカは気持ちよさそうに目を閉じ、兄の手を握りながらまた布団に潜りこんだ。
「あれ、寝るの?お水は?」
「私が寝ちゃったあとに取りに行って」
「僕はいいけど…。喉カラカラじゃない?」
「大丈夫よ。ブドウ食べたから」
「そっか。じゃあモニカが寝るまで手を握っとくね」
「うん。おやすみ、お兄ちゃん」
モニカにそう言われ、アーサーは顔を真っ赤にした。実はモニカに"お兄ちゃん"と呼びかけられたことは今まで一度もなかった。いつまでもモニカの兄でいたいと思っているアーサーにとって、そう呼びかけられたことがとても嬉しかったのだろう。アーサーは目をキュッと閉じて"お兄ちゃん"と呼ばれたことを噛み締めた。
モニカが寝息を立て始めた頃、やっとカミーユたちが温泉から戻って来た。こっそり持ち出した酒をたらふく飲んだのか、上機嫌で笑い声をあげている。モニカの寝顔を眺めていたアーサーとユーリが慌てて「シー!!」と注意すると、カミーユたちは「すまん」と手で合図をして再びベッドに潜り込んだ。(酒の匂いがする3人の頭を、シャナと魔女がぷんぷんしながら叩いていた)
「…え?カミーユさんたちなんであんな平気そうなんだ?」
「分からない。呪いが消えたと言っても体に大きな負担はかかっていたはず。痛みはもちろん、ひどい倦怠感が残ってるでしょうし…」
「なのに体洗いたいって温泉入りに行ったぜ…?!」
「しかも楽し気に談笑しながら…」
「やっぱりS級冒険者は人じゃないな。よし、考えるのはやめよう」
「そうね。ちがうイキモノよあの人たちは」
「そうだな!いくら考えたって理解できねえ!」
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モニカはというと、カトリナの呪いを取り除いたあとすぐに熱を出して寝込んでいた。薬で騙し騙し無理をしていた体が、安心と共に限界を迎えたようだ。アーサーがつきっきりで看病をしており、ユーリが調合した薬と魔女が調合した薬を飲みながら、ときどきシャナに回復魔法をかけてもらっている。
「アーサー…ブドウ食べたい…」
「分かった!ちょっと待ってね。皮をむいてあげるから」
アーサーはブドウを一粒自分の口に放り込んでから、甘えた声を出すモニカに差し出した。布団から顔だけ出して小さく開けた妹の口にブドウを放り込むと、モニカは嬉しそうに咀嚼した。
「おいしい」
「果物屋さんで買ったブドウ。あそこの果物はどれもおいしいね!」
「うん…。あまぁい」
「バナナも食べる?」
「バナナはいい…」
「モニカあんまりバナナ好きじゃないよね?どうしてぇ?」
「隣でバクバク食べてる人を毎日のように見てるからよ。見てるだけで飽きちゃったわ」
「ありゃりゃ、僕のせいじゃないか」
「そうよ、アーサーのせい」
「あはは…」
「アーサー、お水も飲みたいな」
「うん。分かったよ。取ってくるね」
「え、やだぁ…」
モニカは立ち上がろうとした兄の手を掴み引き留めた。いつも以上に甘えん坊になっているモニカに、アーサーは嬉しそうにクスクス笑った。
「え…なによぉ」
「あ、ごめん。だって最近僕の方が弟みたいだったからさ。今日のモニカはすごく妹って感じがしてかわいいなーって思っちゃった」
「たしかに今日のアーサーはすごくお兄ちゃんって感じする」
「ほんと?えへへ、うれしいなあ。甘えん坊のモニカかわいいなあ」
デレデレしながらアーサーがモニカの頭を撫でた。モニカは気持ちよさそうに目を閉じ、兄の手を握りながらまた布団に潜りこんだ。
「あれ、寝るの?お水は?」
「私が寝ちゃったあとに取りに行って」
「僕はいいけど…。喉カラカラじゃない?」
「大丈夫よ。ブドウ食べたから」
「そっか。じゃあモニカが寝るまで手を握っとくね」
「うん。おやすみ、お兄ちゃん」
モニカにそう言われ、アーサーは顔を真っ赤にした。実はモニカに"お兄ちゃん"と呼びかけられたことは今まで一度もなかった。いつまでもモニカの兄でいたいと思っているアーサーにとって、そう呼びかけられたことがとても嬉しかったのだろう。アーサーは目をキュッと閉じて"お兄ちゃん"と呼ばれたことを噛み締めた。
モニカが寝息を立て始めた頃、やっとカミーユたちが温泉から戻って来た。こっそり持ち出した酒をたらふく飲んだのか、上機嫌で笑い声をあげている。モニカの寝顔を眺めていたアーサーとユーリが慌てて「シー!!」と注意すると、カミーユたちは「すまん」と手で合図をして再びベッドに潜り込んだ。(酒の匂いがする3人の頭を、シャナと魔女がぷんぷんしながら叩いていた)
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