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異国編:ジッピン後編:別れ

【288話】抱き枕

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「聞いたよアーサー、モニカ。君たち大手柄をあげたんだって?」

夜、晩食を一緒に食べていたヴァジーとカユボティがニコニコしながら双子の功績を称えた。アーサーとモニカはまんざらでもなさそうに胸をはる。

「え?えへへー。まあね!」

「ちょっと活躍しちゃったかなー!」

「すごいじゃないか。なんでもモノノケを100体も倒したとか」

「さすがアーサーとモニカだね。私たちとしても鼻が高いよ」

「も~そんな褒めないでよぉ」

「照れるなあ」

「それに、キヨハルから指定依頼まで受けたとか」

「うん!どんな敵か分からなくて不安だけど…」

「やってみるよ!」

「頑張るのはいいことだけど、無事に戻ってくるんだよ」

「うん!」

元気よく返事をする双子の頭を、カユボティとヴァジーはわしゃわしゃと撫でた。

「その依頼が終われば、一緒に絵を描きに行こう」

「絵ー?!描きたい描きたい!!ジッピンの風景とアーサー描きたい!!」

「えー?!僕またモデル?!僕も描きたい!!」

「じゃあジッピンの風景を描いてるアーサーを描く!!」

「結局僕を描くんだねモニカは!」

◇◇◇

「ふー」

「今日もお風呂気持ち良かったねー!」

お風呂上がり、ほかほかのアーサーとモニカは布団に飛び込んだ。屋敷の布団はふかふかしていて気持ちがいい。モニカは布団の上を転がったあと、兄にぎゅーっと抱きついた。

「はー!なんだか今日はちょっと疲れたね!」

「うん!色々あったもんねえ」

「お菓子食べてたのがとおい昔のようだよぉ…」

「ねー!モノノケ気持ち悪かったしぃ…」

「気持ち悪かった!そう考えるとバンスティンの魔物ってかわいかったんだね!」

「かわいくはないと思う…」

「でも久しぶりに魔法使えてちょっとスッキリしたー。もっと思いっきりバーン!って魔法使いたいなあ」

「えっ、あれでも思いっきりじゃなかったの?!火魔法の威力半端なかったよ」

「もちろん手加減してたわよ。じゃないと火事になっちゃうでしょ?」

「僕、今日ちょっとだけモノノケに同情したよ?火だるまにされちゃってさぁ」

「それを言ったらスパスパ首斬られちゃったモノノケもかわいそうだったわよ。あんな野菜みたいに軽々切られて」

「だってすごく柔らかかったんだもん」

「でもカタナ振ってるアーサーかっこよかったな~。ねえ、バンスティンでもカタナ使ってよ!」

「使うつもり!だってすごく切れ味がいいんだ。シリルもカタナ気に入りそうだな~」

アーサーは頭の中で、シリルがカタナを振っているところを想像した。彼の舞っているように剣を振るう姿にカタナがよく似合う。モニカもこくこく頷いている。

「うんうん!シリル、カタナ似合いそう!じゃあじゃあ~ダフは?」

「ダフは剣の方が好きだと思うな!カタナは細いから折っちゃいそう」

「あはは!ちょっと分かるかも!」

じゃあウィルクは?じゃあリーノは?とモニカは学友の名前を次々あげた。アーサーはそれに答え、二人でわいわい盛り上がった。

学友の話が落ち着いたとき、アーサーがアサギリをちらりと見て身震いした。

「それにしても…アサギリモニカ怖かったなあ~…。でもワキザシを振るモニカすごくかっこよかったよ」

「えっほんとに?どんなだったの?!」

「カミーユみたいに力強くてきれいな太刀筋だった!」

「えー!!私すごーい!!」

「でもね、すごく口が悪かったよ~。普段モニカが言わないような暴言たくさん吐いてたぁ…」

「えーやだぁ!どんなだったのぉ?」

「リアーナより口が悪かったよぉ…。あんな言葉遣いする人見たことないくらい…」

「えええ…恥ずかしいよぉ…」

「今もアサギリは何か言ってるのかなあ?」

「どうなんだろう…」

モニカは手を伸ばしてアサギリを掴んだ。二人で仰向けになりながら、鞘から抜いてアサギリを眺める。

「アサギリー」

「……」

「やっぱり何も聞こえないなあ」

「私も」

「杖みたいに聞こえたらいいのにね」

「ねー」

「毎晩抱いて寝ろってどういう意味なんだろう」

「分からない…。ぎゅってしながら寝たらいいのかな?」

「だと思うけど…」

「でもアサギリをぎゅってしてたらアーサーにぎゅってできないなあ…」

「だったら僕がモニカをぎゅってするよ」

「えへへ。じゃあちゃんとアサギリをぎゅってする」

モニカはアサギリを鞘へ戻し、布団へ潜り込んでそれを抱きしめた。柄に頬ずりをしながら「あれぇ?アサギリいい匂いする~」と呟き頬をゆるめている。

「そろそろ寝る?」

「うん!」

「明かり消すね」

「うん!」

アーサーは明かりを消して、アサギリを抱いている妹の背中に腕をまわした。ついでに足も乗せてリラックスしている。

「…ちょっとアーサー」

「んー?」

「重いぃ」

「ふにふにしてて気持ちいい抱き枕だなあ」

「もぉー」

「おやすみモニカ」

「おやすみアーサー。…ってちょっと、このまま寝るつもり?」

「すぴー」

「もぉ~。今晩だけだよぉ…?」
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