264 / 718
異国編:ジッピン後編:別れ
【283話】俺を捨てられた脇差って言うなクソが
しおりを挟む
キヨハルを待っている間、アーサーとモニカは刀屋へ行きウィルクのためのカタナを選んだ。アーサーのものと同じ長さのカタナではウィルクに長すぎると考え、モニカと同じく脇差を贈ることにした。カユボティに倣って鍔の模様で選んでいく。
「モニカ!この鳥の模様のツバ、良くない?!」
「わ!きれい!これにしましょ!」
「決まりだね!スミマセン、コレ クダサイ!」
アーサーが声をかけると、相変わらずむすっとした顔の店主が近寄ってきた。ワキザシを見て「80万ウィンだ」と答え、アーサーの着ものをじっと見た。
「えーっと、いち、にぃ、さん、しー、…はちじゅう!ハチジュウマンウィン、ドウゾ」
「まいどあり。お前、刀使ったろ」
「エッ、ドウシテ ワカッタノ」
「着物と鞘に返り血がついてる」
「ソウダッタ!ウン、ツカッタヨ」
「どうだった?」
「スゴカッタ!スルッテ キレル!」
「そうか。その刀は俺も気に入ってたんだ。大切にしろよ」
「ウン!」
「で?その嬢ちゃんは例の脇差さしてるが…なんともねえのか?」
「ン?…モニカ、ワキザシさしてるけどなんともない?っておじさんが」
「え?ううん。なんともないよ。どうして?」
「ドウシテ?」
「妖刀だから」
「ヨウトウ?ヨウトウッテナニ?」
「その脇差、いわくつきでな。持ち主は全員奇妙な死に方をするって聞いた。なんでも大昔に神に見捨てられた刀だとか…わ!」
店主が言葉を言い終える前に、モニカがワキザシを抜いて店主の首元に当てた。モニカとは思えない素早い動きに、アーサーは驚き妹の名前を呼んだ。
「モニカ?!なにしてるの?!」
「…俺は見捨てられたんじゃねえ。俺があいつを捨てたんだよボケが」
「ももももモニカ?!何言ってるの?!」
「っるせぇガキこら!!!」
「ひぃっ?!」
モニカは暴言を吐きながらアーサーを蹴り倒した。床に倒れこんだアーサーをモニカがゆっくり近寄り見下ろしている。ガラの悪い表情で兄を睨みつける妹に、アーサーは心臓がひゅんと縮こまった。
「モ…モニカ…。どうしたの…」
「あー、やっと出てこれたぜ。薄雪のやつ俺の力封じ込めやがって。こいつと薄雪の縁が薄れたおかげであいつの力が弱まった。ははっ、ざまあねえ」
「…モニカじゃない。おまえ誰だ!!」
「ああん?俺か?俺は朝霧」
「朝霧…?朝霧って、この妖刀の名じゃないか…」
名を聞き店主の顔が青ざめる。
「やはり妖刀…。持ち主の体を乗っ取ったのか…?」
「ご名答~。こいつの体は澄んでて居心地がいいぜ。まるであの場所にいるみたいだ。今までの奴らとちがうなあ」
モニカ(朝霧)は脇差の刀身をぺろりと舐めた。状況に追いつけず唖然としているアーサーを足で押し倒しニヤァと笑う。
「お前良い勘してんのに抜けてるよなあ」
「…モニカどこいったの…?」
「ああ、心配すんな。用が済んだらこの体はあいつに返してやる。なんたって今こいつは俺の持ち主だし、俺はこいつの刀としていいこと見せねえといけねえんだからなあ」
「用って何…?モニカ返してよ…」
「ちょっと待てって言ってんだろ?」
「今すぐ返せって言ってんだよ!!」
「おっと!」
アーサーは胸に乗せられていた足を掴み引っ張った。バランスを崩したモニカ(朝霧)は咄嗟に手をつきもう片方の足でアーサーの顔を蹴る。手の力が緩んだ隙に抜け出し、アーサーに馬乗りになって脇差を頬に当てた。
「っ…」
「どうした?もうやんねえのか?」
「……」
「できねえよなあ?!だってこの体、お前の大事な大事な妹のもんだもんなあ!!傷つけることなんてできねえ!ぎゃはは!!残念でしたクソがぁ!!」
「モニカの口でそんな言葉吐くのやめろ!!!」
「うるせぇ!!そもそもお前がもっとしっかりしてたらこんなことにならなかったんだ!!目に映せなくても心の奥底で勘付いてたぞお前は!!なのにやすやすと喜代春にこいつ引き渡しやがってよぉ!!」
「ど…どういうこと…?なにを言ってるのかさっぱり分からない…」
「だろうな!高尚な俺様のありがたぁいお言葉がこんなガキに分かるはずがねえ!だったらせめて崇めろ跪け俺様は大木古桜の…」
パチン、と音が鳴る。その瞬間刀屋が震えあがりそうなほど冷たい空気で満たされた。大声で騒いでいた朝霧も口を紡ぎ振り返る。アーサーもつられて刀屋の入り口に目をやると、そこには扇子で半分顔を隠した喜代春が立っていた。
「なにをしているんだい、朝霧」
「来たな喜代春ぅ…!」
「キヨハル!!モニカガ!!モニカガ!!」
「大丈夫だよアーサー。モニカは私が助けてあげる。だから落ち着いて」
「モニカ キズツケナイデ!オネガイ!!」
「もちろんモニカの体に傷はつけないよ」
「喜代春ぅぅぅぅ!!!」
怒りに満ちたモニカ(朝霧)は叫びながら喜代春に斬りかかった。モニカでは到底できない見事な刀さばきは、思わず見とれてしまうほどだった。
「モニカ!この鳥の模様のツバ、良くない?!」
「わ!きれい!これにしましょ!」
「決まりだね!スミマセン、コレ クダサイ!」
アーサーが声をかけると、相変わらずむすっとした顔の店主が近寄ってきた。ワキザシを見て「80万ウィンだ」と答え、アーサーの着ものをじっと見た。
「えーっと、いち、にぃ、さん、しー、…はちじゅう!ハチジュウマンウィン、ドウゾ」
「まいどあり。お前、刀使ったろ」
「エッ、ドウシテ ワカッタノ」
「着物と鞘に返り血がついてる」
「ソウダッタ!ウン、ツカッタヨ」
「どうだった?」
「スゴカッタ!スルッテ キレル!」
「そうか。その刀は俺も気に入ってたんだ。大切にしろよ」
「ウン!」
「で?その嬢ちゃんは例の脇差さしてるが…なんともねえのか?」
「ン?…モニカ、ワキザシさしてるけどなんともない?っておじさんが」
「え?ううん。なんともないよ。どうして?」
「ドウシテ?」
「妖刀だから」
「ヨウトウ?ヨウトウッテナニ?」
「その脇差、いわくつきでな。持ち主は全員奇妙な死に方をするって聞いた。なんでも大昔に神に見捨てられた刀だとか…わ!」
店主が言葉を言い終える前に、モニカがワキザシを抜いて店主の首元に当てた。モニカとは思えない素早い動きに、アーサーは驚き妹の名前を呼んだ。
「モニカ?!なにしてるの?!」
「…俺は見捨てられたんじゃねえ。俺があいつを捨てたんだよボケが」
「ももももモニカ?!何言ってるの?!」
「っるせぇガキこら!!!」
「ひぃっ?!」
モニカは暴言を吐きながらアーサーを蹴り倒した。床に倒れこんだアーサーをモニカがゆっくり近寄り見下ろしている。ガラの悪い表情で兄を睨みつける妹に、アーサーは心臓がひゅんと縮こまった。
「モ…モニカ…。どうしたの…」
「あー、やっと出てこれたぜ。薄雪のやつ俺の力封じ込めやがって。こいつと薄雪の縁が薄れたおかげであいつの力が弱まった。ははっ、ざまあねえ」
「…モニカじゃない。おまえ誰だ!!」
「ああん?俺か?俺は朝霧」
「朝霧…?朝霧って、この妖刀の名じゃないか…」
名を聞き店主の顔が青ざめる。
「やはり妖刀…。持ち主の体を乗っ取ったのか…?」
「ご名答~。こいつの体は澄んでて居心地がいいぜ。まるであの場所にいるみたいだ。今までの奴らとちがうなあ」
モニカ(朝霧)は脇差の刀身をぺろりと舐めた。状況に追いつけず唖然としているアーサーを足で押し倒しニヤァと笑う。
「お前良い勘してんのに抜けてるよなあ」
「…モニカどこいったの…?」
「ああ、心配すんな。用が済んだらこの体はあいつに返してやる。なんたって今こいつは俺の持ち主だし、俺はこいつの刀としていいこと見せねえといけねえんだからなあ」
「用って何…?モニカ返してよ…」
「ちょっと待てって言ってんだろ?」
「今すぐ返せって言ってんだよ!!」
「おっと!」
アーサーは胸に乗せられていた足を掴み引っ張った。バランスを崩したモニカ(朝霧)は咄嗟に手をつきもう片方の足でアーサーの顔を蹴る。手の力が緩んだ隙に抜け出し、アーサーに馬乗りになって脇差を頬に当てた。
「っ…」
「どうした?もうやんねえのか?」
「……」
「できねえよなあ?!だってこの体、お前の大事な大事な妹のもんだもんなあ!!傷つけることなんてできねえ!ぎゃはは!!残念でしたクソがぁ!!」
「モニカの口でそんな言葉吐くのやめろ!!!」
「うるせぇ!!そもそもお前がもっとしっかりしてたらこんなことにならなかったんだ!!目に映せなくても心の奥底で勘付いてたぞお前は!!なのにやすやすと喜代春にこいつ引き渡しやがってよぉ!!」
「ど…どういうこと…?なにを言ってるのかさっぱり分からない…」
「だろうな!高尚な俺様のありがたぁいお言葉がこんなガキに分かるはずがねえ!だったらせめて崇めろ跪け俺様は大木古桜の…」
パチン、と音が鳴る。その瞬間刀屋が震えあがりそうなほど冷たい空気で満たされた。大声で騒いでいた朝霧も口を紡ぎ振り返る。アーサーもつられて刀屋の入り口に目をやると、そこには扇子で半分顔を隠した喜代春が立っていた。
「なにをしているんだい、朝霧」
「来たな喜代春ぅ…!」
「キヨハル!!モニカガ!!モニカガ!!」
「大丈夫だよアーサー。モニカは私が助けてあげる。だから落ち着いて」
「モニカ キズツケナイデ!オネガイ!!」
「もちろんモニカの体に傷はつけないよ」
「喜代春ぅぅぅぅ!!!」
怒りに満ちたモニカ(朝霧)は叫びながら喜代春に斬りかかった。モニカでは到底できない見事な刀さばきは、思わず見とれてしまうほどだった。
12
お気に入りに追加
4,342
あなたにおすすめの小説
スキルを極めろ!
アルテミス
ファンタジー
第12回ファンタジー大賞 奨励賞受賞作
何処にでもいる大学生が異世界に召喚されて、スキルを極める!
神様からはスキルレベルの限界を調査して欲しいと言われ、思わず乗ってしまった。
不老で時間制限のないlv上げ。果たしてどこまでやれるのか。
異世界でジンとして生きていく。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。
ぬいぐるみばかり作っていたら実家を追い出された件〜だけど作ったぬいぐるみが意志を持ったので何も不自由してません〜
望月かれん
ファンタジー
中流貴族シーラ・カロンは、ある日勘当された。理由はぬいぐるみ作りしかしないから。
戸惑いながらも少量の荷物と作りかけのぬいぐるみ1つを持って家を出たシーラは1番近い町を目指すが、その日のうちに辿り着けず野宿をすることに。
暇だったので、ぬいぐるみを完成させようと意気込み、ついに夜更けに完成させる。
疲れから眠りこけていると聞き慣れない低い声。
なんと、ぬいぐるみが喋っていた。
しかもぬいぐるみには帰りたい場所があるようで……。
天真爛漫娘✕ワケアリぬいぐるみのドタバタ冒険ファンタジー。
※この作品は小説家になろう・ノベルアップ+にも掲載しています。
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。