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異国編:ジッピン後編:別れ
【279話】桜並木
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甘味処でゆっくりと時間を過ごしたアーサーとモニカは、そのあと町を歩き弟と妹のためのおみやげを買った。オツユの店でキモノの仕立てを頼んだ頃には夕方になっていた。
双子が選んだ反物を受け取ったオツユが、反物に目を落としたままさりげなく話しかけた。
「桜並木はもう見た?」
「サクラナミキ?」
「ここから東にしばらく歩くと小さな川が流れているの。その河川に沿って桜がずらっと並んでいるのよ。とても綺麗だから、時間があるなら見に行くといいわ」
「ワァ!アリガトウ オツユ!ミテクルネ!」
「ええ。いってらっしゃい。でも、桜の木には触れないように気を付けて」
「ワカッタ!モニカ、あっちの方にサクラがたくさんあるんだて!行ってみない?」
「きゃー!行ってみたい!!サクラ見てみたかったのぉ!!」
「やった!行こう行こう!!」
双子はおおはしゃぎでオツユの店を飛び出した。20分ほど早歩きをしたあたりで、ピンク色の花びらが風に乗ってひらひらと空を舞っていた。風上に目をやると、すこし遠くでピンク色の花を満開に咲かせた木々がずらりと並んでいるのが見える。アーサーは目を輝かせて桜並木を指さした。
「モニカ!あれだ!!」
「きゃーーーー!!すごぉい!!あれがサクラ!!」
アーサーとモニカはパタパタ走りサクラのトンネルの入り口に立った。ふわふわのサクラの花がそよ風に揺れ、花びらが降っている。桜並木を歩いているジッピンの人たちも、しあわせそうにサクラを見上げ、降ってくる花びらを掴んで喜んでいる。アーサーも初めて見たサクラに大はしゃぎで、桜並木の下に立ち降ってくるサクラの花びらを夢中になって掴んでいた。
「モニカ見て!サクラの花びらを掴めたよ!」
「……」
「モニカ?」
「…あっ、うん!きれいね!」
入り口で立ち止まったままぼーっとサクラを眺めていたモニカが、アーサーに名前を呼ばれて我に返った。慌てて兄の傍へ駆け寄りサクラの花を見上げる。アーサーは首を傾げて妹を見た。
「…モニカどうしたの?あんまり嬉しそうじゃないみたい」
「ううんそんなことないよ!」
「ほんとう?」
「ほんとにほんと!…でも…」
「でも?」
「これ、ほんとうにサクラ?」
「えっ?サクラじゃないの?」
「分からない…。とっても綺麗だし素敵なんだけど。でもなんだかしっくりこないのよねえ…。私の中でサクラの花ってもっとこう…薄いピンクだった気がして」
「ええ…もしかして違うのかなあ。聞いてみようか」
アーサーが近くを通りがかった女の人に声をかけた。女性は突然異国のかわいらしい男の子に話しかけられ甲高い歓声をあげてしばらく騒いでいたが、落ち着きを取り戻したあとに「これは桜よ」と教えてくれた。
「モニカ、やっぱりこれがサクラだって」
「そうなんだあ」
「でも確かに、ハクサイの鷽と垂桜で描かれてたサクラって、もっと白い花だったよねえ」
「そうなの。このピンクの花びらに、薄く雪が乗ったくらいの色だったような…」
「薄く雪…?」
顎に手を当てて不思議そうにしているモニカの隣で、アーサーは手のひらに乗せた花びらを見た。
(なんだか今日のモニカの様子は変だなあ。サクラは初めて見たはずなのに、どうしてこんな反応するんだろう。ハクサイの絵だけでこのくらい不思議がるかな。それに…モニカってあんな詩的な表現する子だっけ?モニカは文字が苦手だから読書もしないし…。あんまり語彙力もないはずなのに。クロネたち画家と一緒にいた時間で感性が磨かれたのかな。うーん…引っかかるなあ)
双子が選んだ反物を受け取ったオツユが、反物に目を落としたままさりげなく話しかけた。
「桜並木はもう見た?」
「サクラナミキ?」
「ここから東にしばらく歩くと小さな川が流れているの。その河川に沿って桜がずらっと並んでいるのよ。とても綺麗だから、時間があるなら見に行くといいわ」
「ワァ!アリガトウ オツユ!ミテクルネ!」
「ええ。いってらっしゃい。でも、桜の木には触れないように気を付けて」
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「モニカ!あれだ!!」
「きゃーーーー!!すごぉい!!あれがサクラ!!」
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「モニカ見て!サクラの花びらを掴めたよ!」
「……」
「モニカ?」
「…あっ、うん!きれいね!」
入り口で立ち止まったままぼーっとサクラを眺めていたモニカが、アーサーに名前を呼ばれて我に返った。慌てて兄の傍へ駆け寄りサクラの花を見上げる。アーサーは首を傾げて妹を見た。
「…モニカどうしたの?あんまり嬉しそうじゃないみたい」
「ううんそんなことないよ!」
「ほんとう?」
「ほんとにほんと!…でも…」
「でも?」
「これ、ほんとうにサクラ?」
「えっ?サクラじゃないの?」
「分からない…。とっても綺麗だし素敵なんだけど。でもなんだかしっくりこないのよねえ…。私の中でサクラの花ってもっとこう…薄いピンクだった気がして」
「ええ…もしかして違うのかなあ。聞いてみようか」
アーサーが近くを通りがかった女の人に声をかけた。女性は突然異国のかわいらしい男の子に話しかけられ甲高い歓声をあげてしばらく騒いでいたが、落ち着きを取り戻したあとに「これは桜よ」と教えてくれた。
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「そうなんだあ」
「でも確かに、ハクサイの鷽と垂桜で描かれてたサクラって、もっと白い花だったよねえ」
「そうなの。このピンクの花びらに、薄く雪が乗ったくらいの色だったような…」
「薄く雪…?」
顎に手を当てて不思議そうにしているモニカの隣で、アーサーは手のひらに乗せた花びらを見た。
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