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異国編:ジッピン前編:出会い
【273話】頭ごっつんこ
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「モニカ、モニカ」
「ん…」
「起きて、朝だよー」
「……はっ!」
「ぐえっ!」
突然起き上がったモニカと、寝ていたモニカを覗き込んでいたアーサーの頭が勢いよくぶつかる。アーサーは「いてて…」で済んだが、モニカは脳震盪を起こして意識を失ってしまった。アーサーは顔を真っ青にしてモニカを抱きかかえた。
「わぁぁぁっ!モニカぁぁぁっ!!ごめんよぉぉっ」
「アーサー、どうかしたのかい?朝から大声で」
アーサーの大声を聞いて駆け付けたノリスケが部屋のドアを開けた。アーサーは半泣きで妹にエリクサーを飲ませながら事情を話す。
「モニカト ボク アタマ ゴッツンコ シタ! モニカ キ ウシナッタ!」
「えええ?!大丈夫?!」
「エリクサー ノマセタ ダイジョウブ オモウケド…」
「どどどどうしようどうしよう…!」
「なんの騒ぎだい?」
パニックになったノリスケまで騒がしくしていたからか、キヨハルまでもが客室に顔を出した。だが、大騒ぎしているアーサーとノリスケにその声は届かない。キヨハルはため息をついて二人が騒いでいる原因を探した。
(モニカが白目をむいて倒れている。これでか)
「エリクサー飲ませたし大丈夫だよね?!えーっとベニートのときどうやったっけ!!うわああん」
「モニカぁぁっ!目を覚ますんだモニカぁぁっ!!」
「揺らしてはだめだよ」
「喜代春さん!?」
アーサーとノリスケの間に入り、キヨハルがモニカの容態を診る。すぐに彼女から目を離してアーサーの頭を撫でた。
「大丈夫。しばらくそっとしておけば目が覚めるよ。彼女になにか飲ませたのかい?」
「オント…?エリクサー ノマセタ」
「エリクサー?聞いたことがないな」
「ボクタチ ツクッタ クスリ」
「ああ。そう言えば君たちは薬師でもあったね。とても良い薬だ」
「モニカ オントウニ ダイジョウブ?」
「心配いらない。もしどうしても気になるなら手当をするけど」
「アーサー、喜代春さんはとても質の良い医術を使えるんだよ!手当てしてもらったらどうだい?」
「シテクレル…?モニカ ボクノ アタマ ゴッツンコ シタ。アタマ ホネ シンパイ。エリクサー ホネ チャント ナオセナイ」
「分かった。ではモニカをしばらく預かるよ。いいかな」
「ボクモ イッテイイ…?」
「もちろんいいよ。でも30分だけ待ってくれるかな。手当をしているときは集中したいから、人を入れたくないんだ」
「ワカッタ…。アリガトウ キヨハル。 ヨロシクオネガイシマス」
「それにしても、またジッピンのことばが上手になったねアーサー」
「オント?エヘヘ ウレシイ。レンシュウ シタ!」
「君の優秀さには目を見張るものがあるよ。…では徳助。私はモニカを手当するから、アーサーに朝食を食べさせてあげてくれるかな」
「はい!」
「アーサー、ごはんをゆっくり食べてから私の部屋へおいでなさい」
「ワカッタ!」
キヨハルはモニカをひょいと抱きかかえ客室を出た。しょんぼりしているアーサーに、ノリスケが朝食を出してあげる。一人だと寂しいと思い、その日はノリスケも客室で一緒に食べた。
◇◇◇
「ん…」
「目が覚めたかい?」
「はっ」
モニカが目を覚ますと、目の前にはレンゲとムクゲの顔があった。相変わらず無表情だが、モニカは二人が彼女を心配していることが分かった。
「起きた」
「起きた」
「レンゲ、ムクゲ…」
「具合はどうかな」
すこし離れたところから声が聞こえ、モニカは上体を起こして声の主を探した。いつもの場所で煙管を吸っているキヨハルと目が合い、モニカは恥ずかしそうに笑った。
「あ、あれ?わたしどうしてこんなところで寝てるの?」
「アーサーと頭がぶつかって脳震盪を起こしていたんだ。君たちの作った薬と、私の手当てでもう痛みもないだろう?」
「えっ、そんなことがあったのぉ?全然覚えてないや…。痛みはないよ。ありがとうキヨハルさん」
「どういたしまして。モニカ、今日はでかけられそうかな?もし心配であれば一日ゆっくり休むといい」
「ううん!大丈夫!せっかくジッピンに来てるんだもん!1日だって無駄にしたくないわ」
自分が元気なことを見せるため、モニカはぶんぶんと腕を振った
。そんな彼女を見てキヨハルはクスクス笑う。
「ふふ。モニカはジッピンが気に入った?」
「とっても!!」
「よかった。…そろそろアーサーが来るね。モニカ、蓮華と蕣のことはアーサーには言わないでくれないかな」
「えっ、どうして?」
「二人はアーサーたちには見えないんだ。見えるのは、私とモニカの二人だけ」
「そうなのぉ?!」
「彼女たちはあやかしと呼ばれているもの。本来ヒトの目には映らない」
「あやかしぃ?!」
「だがこの子たちは悪い子じゃないから心配しないで」
「わ、わかったぁ…。よく分からないけど…」
蓮華と蕣の正体をはじめて聞いたかのように反応したモニカに、レンゲとムクゲは視線を落とした。下唇を噛むレンゲの手をそっとムクゲが握る。
しばらくしてアーサーがキヨハルの部屋に入ってきた。すっかり治ったモニカに抱きつき、わんわん泣きながら謝った。泣きじゃくっている兄の背中をさすり、モニカは伸びをしてから立ち上がる。
「キヨハル、ありがとう!じゃあ私お部屋に戻るね」
「…アーサー。モニカは何と言っているのかな?」
「アリガトウ エヤニモドル ッテ イッテル!! キヨハル アリガトウ!モニカ ゲンキニ ナッタ!!キヨハル ノ オカゲ! アリガトウ!!」
「どういたしまして」
「モニカ、キヨハルがどういたしましてだって!じゃあ、もどろっか」
「…?」
「モニカ?」
「う、うん!」
キヨハルにもう一度お礼を言い、双子は客室に戻った。部屋へ戻っているあいだもずっとモニカはうんうん唸っていた。
「モニカどうしたの?」
「ん?うーん、なんだろう。急にキヨハルさんのことばが聞き取れなくなったの。アーサーが来るまで普通に会話できてたのに…」
「それはキヨハルさんが僕が来るまでバンスティンのことばを話してくれてたからじゃない?」
「あっ、そういうことかあ!」
「それよりモニカ、今日はウスユキに会いに行くの?行くなら僕もついていきたいなぁ!」
もじもじしながらアーサーがお願いした。はじめはウスユキに対してヤキモチをやいていたアーサーだったが、モニカの話を聞くうちにアーサーもウスユキに良い印象を抱いていた。
モニカはウスユキのことを、とてもきれいで儚げな雰囲気なのに、ちょっぴり無神経な人だと言っていた。でもどこか憎めなくて、一緒にいたら心地がいいとも言っていた。アーサーの中のウスユキは、外見がセルジュ先生で性格はリアーナのイメージだった。そんなちぐはぐな人、一度会ってお話してみたい!と興味津々だったのだ。
アーサーのお願いを聞いたモニカは不思議そうに首を傾げていた。しばらく考えるそぶりを見せたあと、困ったように兄に問いかけた。
「アーサー、ウスユキってだあれ?」
「ん…」
「起きて、朝だよー」
「……はっ!」
「ぐえっ!」
突然起き上がったモニカと、寝ていたモニカを覗き込んでいたアーサーの頭が勢いよくぶつかる。アーサーは「いてて…」で済んだが、モニカは脳震盪を起こして意識を失ってしまった。アーサーは顔を真っ青にしてモニカを抱きかかえた。
「わぁぁぁっ!モニカぁぁぁっ!!ごめんよぉぉっ」
「アーサー、どうかしたのかい?朝から大声で」
アーサーの大声を聞いて駆け付けたノリスケが部屋のドアを開けた。アーサーは半泣きで妹にエリクサーを飲ませながら事情を話す。
「モニカト ボク アタマ ゴッツンコ シタ! モニカ キ ウシナッタ!」
「えええ?!大丈夫?!」
「エリクサー ノマセタ ダイジョウブ オモウケド…」
「どどどどうしようどうしよう…!」
「なんの騒ぎだい?」
パニックになったノリスケまで騒がしくしていたからか、キヨハルまでもが客室に顔を出した。だが、大騒ぎしているアーサーとノリスケにその声は届かない。キヨハルはため息をついて二人が騒いでいる原因を探した。
(モニカが白目をむいて倒れている。これでか)
「エリクサー飲ませたし大丈夫だよね?!えーっとベニートのときどうやったっけ!!うわああん」
「モニカぁぁっ!目を覚ますんだモニカぁぁっ!!」
「揺らしてはだめだよ」
「喜代春さん!?」
アーサーとノリスケの間に入り、キヨハルがモニカの容態を診る。すぐに彼女から目を離してアーサーの頭を撫でた。
「大丈夫。しばらくそっとしておけば目が覚めるよ。彼女になにか飲ませたのかい?」
「オント…?エリクサー ノマセタ」
「エリクサー?聞いたことがないな」
「ボクタチ ツクッタ クスリ」
「ああ。そう言えば君たちは薬師でもあったね。とても良い薬だ」
「モニカ オントウニ ダイジョウブ?」
「心配いらない。もしどうしても気になるなら手当をするけど」
「アーサー、喜代春さんはとても質の良い医術を使えるんだよ!手当てしてもらったらどうだい?」
「シテクレル…?モニカ ボクノ アタマ ゴッツンコ シタ。アタマ ホネ シンパイ。エリクサー ホネ チャント ナオセナイ」
「分かった。ではモニカをしばらく預かるよ。いいかな」
「ボクモ イッテイイ…?」
「もちろんいいよ。でも30分だけ待ってくれるかな。手当をしているときは集中したいから、人を入れたくないんだ」
「ワカッタ…。アリガトウ キヨハル。 ヨロシクオネガイシマス」
「それにしても、またジッピンのことばが上手になったねアーサー」
「オント?エヘヘ ウレシイ。レンシュウ シタ!」
「君の優秀さには目を見張るものがあるよ。…では徳助。私はモニカを手当するから、アーサーに朝食を食べさせてあげてくれるかな」
「はい!」
「アーサー、ごはんをゆっくり食べてから私の部屋へおいでなさい」
「ワカッタ!」
キヨハルはモニカをひょいと抱きかかえ客室を出た。しょんぼりしているアーサーに、ノリスケが朝食を出してあげる。一人だと寂しいと思い、その日はノリスケも客室で一緒に食べた。
◇◇◇
「ん…」
「目が覚めたかい?」
「はっ」
モニカが目を覚ますと、目の前にはレンゲとムクゲの顔があった。相変わらず無表情だが、モニカは二人が彼女を心配していることが分かった。
「起きた」
「起きた」
「レンゲ、ムクゲ…」
「具合はどうかな」
すこし離れたところから声が聞こえ、モニカは上体を起こして声の主を探した。いつもの場所で煙管を吸っているキヨハルと目が合い、モニカは恥ずかしそうに笑った。
「あ、あれ?わたしどうしてこんなところで寝てるの?」
「アーサーと頭がぶつかって脳震盪を起こしていたんだ。君たちの作った薬と、私の手当てでもう痛みもないだろう?」
「えっ、そんなことがあったのぉ?全然覚えてないや…。痛みはないよ。ありがとうキヨハルさん」
「どういたしまして。モニカ、今日はでかけられそうかな?もし心配であれば一日ゆっくり休むといい」
「ううん!大丈夫!せっかくジッピンに来てるんだもん!1日だって無駄にしたくないわ」
自分が元気なことを見せるため、モニカはぶんぶんと腕を振った
。そんな彼女を見てキヨハルはクスクス笑う。
「ふふ。モニカはジッピンが気に入った?」
「とっても!!」
「よかった。…そろそろアーサーが来るね。モニカ、蓮華と蕣のことはアーサーには言わないでくれないかな」
「えっ、どうして?」
「二人はアーサーたちには見えないんだ。見えるのは、私とモニカの二人だけ」
「そうなのぉ?!」
「彼女たちはあやかしと呼ばれているもの。本来ヒトの目には映らない」
「あやかしぃ?!」
「だがこの子たちは悪い子じゃないから心配しないで」
「わ、わかったぁ…。よく分からないけど…」
蓮華と蕣の正体をはじめて聞いたかのように反応したモニカに、レンゲとムクゲは視線を落とした。下唇を噛むレンゲの手をそっとムクゲが握る。
しばらくしてアーサーがキヨハルの部屋に入ってきた。すっかり治ったモニカに抱きつき、わんわん泣きながら謝った。泣きじゃくっている兄の背中をさすり、モニカは伸びをしてから立ち上がる。
「キヨハル、ありがとう!じゃあ私お部屋に戻るね」
「…アーサー。モニカは何と言っているのかな?」
「アリガトウ エヤニモドル ッテ イッテル!! キヨハル アリガトウ!モニカ ゲンキニ ナッタ!!キヨハル ノ オカゲ! アリガトウ!!」
「どういたしまして」
「モニカ、キヨハルがどういたしましてだって!じゃあ、もどろっか」
「…?」
「モニカ?」
「う、うん!」
キヨハルにもう一度お礼を言い、双子は客室に戻った。部屋へ戻っているあいだもずっとモニカはうんうん唸っていた。
「モニカどうしたの?」
「ん?うーん、なんだろう。急にキヨハルさんのことばが聞き取れなくなったの。アーサーが来るまで普通に会話できてたのに…」
「それはキヨハルさんが僕が来るまでバンスティンのことばを話してくれてたからじゃない?」
「あっ、そういうことかあ!」
「それよりモニカ、今日はウスユキに会いに行くの?行くなら僕もついていきたいなぁ!」
もじもじしながらアーサーがお願いした。はじめはウスユキに対してヤキモチをやいていたアーサーだったが、モニカの話を聞くうちにアーサーもウスユキに良い印象を抱いていた。
モニカはウスユキのことを、とてもきれいで儚げな雰囲気なのに、ちょっぴり無神経な人だと言っていた。でもどこか憎めなくて、一緒にいたら心地がいいとも言っていた。アーサーの中のウスユキは、外見がセルジュ先生で性格はリアーナのイメージだった。そんなちぐはぐな人、一度会ってお話してみたい!と興味津々だったのだ。
アーサーのお願いを聞いたモニカは不思議そうに首を傾げていた。しばらく考えるそぶりを見せたあと、困ったように兄に問いかけた。
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